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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第162話:宝

「ここが……ウラジオバーガー……」


「すげー……」


ユウトは、目の前の建物を見上げていた。


神聖ささえ感じるほどの、巨大な木。


その周囲を囲むように作られた建物。


自然と人工物が、違和感なく溶け合っている。


二階部分には、頭上を通る道路が繋がっていた。


おそらく、あれがドライブスルーなのだろう。


「さっ、中に入るぞ!」


ロイドが笑いながら言う。


「お前も来るのか?」


「当たり前だろ!」


「俺も参加者だからな!」


「そうなのか?」


車を駐車場に停め、三人は店の中へ入った。


中は、まるで高級ホテルのようだった。


足元には柔らかな敷物。


靴の上からでも分かるほど、ふわふわしている。


(土足でいいんだよな……?)


ユウトは、少しだけ足元を気にした。


内側は一面ガラス張りになっていて、店の中から巨木を眺めながら食事ができるようになっている。


「いらっしゃいませ」


横を見ると、注文用のカウンターがあった。


その奥では、従業員たちが慌ただしく調理の準備をしている。


「本日はご来店ありがとうございます」


「招待状を拝見いたします」


マヤとロイドが、それぞれ招待状を手渡す。


(あぁ、あれか……)


ユウトも、事前にマヤから受け取った招待状を取り出した。


「お願いします」


「頂戴いたします」


受付の女性は、丁寧に確認する。


「マヤ様、ロイド様、ユウト様ですね」


「ご注文方法について説明させていただきます」


「まず、頭上のメニューをご覧ください」


言われるがまま、三人はメニューを見上げた。


【バーガー】


ウラジオバーガー。


ウラジオチーズバーガー。


ウラジオテリヤキバーガー。


ウラジオビッグバーガー。


ウラジオスペシャルバーガー。


ウラジオスペシャルチーズバーガー。


【サイドメニュー】


フライドポテト。


ナゲット。


バーベキューソース。


マスタードソース。


オニオンフライ。


【ドリンク】


ラムネ。


コーヒー。


紅茶。


オレンジジュース。


ブドウジュース。


「こちらから商品をお選びいただきます」


「ご希望の商品が決まりましたら、お申し付けください」


「通常ですと、ここでお会計をいただきますが、本日はレセプションのため無料となっております」


(タダ!?)


ユウトの目が、わずかに鋭くなる。


「試験運用も兼ねておりますので、お気づきの点がございましたら、何なりとお申し付けください」


「……」


ロイドが、真っ先に口を開いた。


「じゃあ、俺は……」


「バーガー全種類とナゲットのバーベキュー」


「それと、ブドウジュース」


「私は、ウラジオテリヤキバーガーとナゲットのバーベキュー」


マヤが続く。


「あと、ラムネでお願いします」


「俺は……」


ユウトは、メニューを見上げたまま少し考える。


「ウラジオテリヤキバーガーと、スペシャルチーズバーガー」


「それと……ラムネで!」


「かしこまりました」


受付の女性が、番号札を三人へ渡す。


「こちらの番号札をお持ちください」


「商品が完成しましたら、あちらのモニターに番号が表示されます」


「番号札と商品の引き換えとなりますので、無くさないようお持ちください」


(すごい……)


(分かりやすい)


ユウトは素直に感心した。


だが。


「あ、あの……」


少し申し訳なさそうに、ユウトが口を開く。


「はい?」


「メニューが上にしかないと……」


ユウトは、もう一度頭上を見上げた。


「首が……」


「首?」


「ここにも、小さなメニューがあると」


ユウトはカウンターを指差す。


「指を差して注文できるし……」


「商品名を全部言わなくても済むので……」


「いいんじゃないかな……と」


「……」


淡々と説明していた女性が、驚いたようにマヤへ視線を送る。


マヤも、目を丸くした。


その時。


「やぁ、ユウトくん」


背後から、明るい声がした。


「よく来てくれましたな」


振り返ると、ウラジオが笑顔で歩いてくるところだった。


「どうですかな?」


「ウラジオバーガー一号店は」


「ど、どうも……」


ユウトは軽く頭を下げる。


「社長……それが……」


マヤが、ウラジオに小声で耳打ちした。


「メニューを……」


「確かに!!」


ウラジオの目が大きく開かれる。


「これは盲点でしたな」


すぐに受付の女性へ視線を向ける。


「さっそく改善できるか?」


「か、かしこまりました!」


受付の女性が、すぐに動き出す。


「いやぁー、助かりました」


ウラジオは感心したようにユウトを見る。


「ありがとう」


「注文する時、見上げるの疲れるし……」


「商品名を全部言うのも大変なので……」


「ハッハッハ!」


ウラジオは楽しそうに笑った。


「君ならではの意見だが、素晴らしい改善点だ!」


その時。


モニターに、マヤとユウトの番号が表示された。


「あっ、できたみたいですね」


マヤがユウトに声をかける。


二人は、受け渡し口へ向かった。


「俺のはまだか……」


ロイドが、少し不満そうに呟く。


「全種類なんて時間かかるに決まってるだろ」


ユウトが即座に突っ込んだ。


「お前、さっき昼食に行ってなかったか?」


ウラジオが呆れたようにロイドを見る。


「あれは昼飯」


ロイドは、堂々と胸を張った。


「これはタダ飯!」


(何言ってんだ、こいつ……)


「……さっ、さぁ、行きましょう」


マヤは苦笑しながら、ユウトを促した。


ロイドを放っておいて、ウラジオの案内で二階へ上がる。


二階は、ほとんどが飲食スペースとなっていた。


両面ガラス張り。


一方には巨木。


もう一方には、店の外を通る道路と街並み。


開放感がある。


「ん?」


ユウトは、壁に囲まれた個室のような場所へ視線を向けた。


「あぁ、あそこはドライブスルーの受け渡し口です」


マヤが説明する。


「調理スペースが一階なのに……?」


「一階で調理した商品を、リフトで二階に上げて」


「あそこで受け渡しできるようになっています」


「へぇー」


ユウトは素直に感心した。


「マヤさん、詳しいですね?」


「当然ですよ」


マヤが、少しだけ胸を張る。


「店舗の設計やシステムも、すべてマヤの発案ですから」


ウラジオが誇らしげに言った。


「えっ……」


ユウトは驚いてマヤを見る。


「商品開発室なのに……?」


「商会の利益に……」


「あぁ」


ユウトは、先に言葉を続けた。


「部署も役職も関係ないですね」


「そうです!」


マヤは、嬉しそうに笑った。


「……フフッ」


「この子は、とても優秀でね」


ウラジオが、そっとユウトに耳打ちする。


「部署を超えて働きすぎないかヒヤヒヤしていたが……」


「残業もなく、定時に帰っているようで安心しました」


(すごいな……)


その時だった。


二階の入口付近が、にわかに騒がしくなった。


従業員が数人、困ったような表情で誰かを案内している。


周囲の招待客たちも、ちらちらと視線を向けていた。


やがて。


気位の高そうな婦人が、当然のように二階へ上がってきた。


身につけている装飾品は派手で、歩き方にも遠慮がない。


「あら、ウラジオ社長」


婦人は、扇子を片手に笑った。


「ごきげんよう」


「これはこれは、アーサー夫人」


ウラジオの表情が、わずかに引き締まる。


(アーサー?)


ユウトは、その名前に反応した。


「なんです? この子たちは」


アーサー夫人の視線が、ユウトたちに向く。


「彼等はうちの……」


ウラジオが紹介しようとした瞬間。


「そんなことより」


アーサー夫人が、強引に言葉を遮った。


「私の元に、招待状が届いていなかったようですが」


「何かの手違いで?」


周囲の空気が、わずかに固まる。


招待状がない。


それは、つまり。


呼ばれていないということだった。


だが、アーサー夫人は気にした様子もなく微笑んでいる。


「いやはや、困ったものです」


「まぁ、いいでしょう」


「それにしても、素晴らしいデザインの建物ですわ」


「領主様の奥様です」


マヤが、小声でユウトに伝える。


(やっぱり……)


ユウトは、少しだけ眉をひそめた。


「設計の担当者に会わせてくださいます?」


アーサー夫人は、当然のように言った。


「うちの別荘をお任せしようと思うのですが」


(なんだ、こいつ……)


ユウトは思わずそう思った。


「ほう」


ウラジオは、表情を崩さず答える。


「前向きに検討しておきます」


「あら?」


アーサー夫人は、不満そうに目を細めた。


「言い方が悪かったかしら?」


「会わせてほしいと、お伝えしたのですけれど」


「ですから」


ウラジオの声は穏やかだった。


「前向きに検討しておきます」


「……」


一瞬、空気が重くなる。


その時。


「いやぁ、悪りぃ悪りぃ!」


場違いなほど明るい声が響いた。


「待たせたな!」


大量のハンバーガーをトレイに乗せたロイドが、笑いながら現れる。


「ん?」


「どうした?」


ロイドは、きょとんとした顔で周囲を見た。


「興が冷めましたわ……」


アーサー夫人は、わざとらしくため息をつく。


「それにしても、建物のデザインは素敵でも」


「居合わせる人間は、品がありませんわね」


そして、視線をユウトへ向ける。


「特に……」


「なんですの? この下品な装飾品は」


「……」


ユウトの胸が、少しだけざわついた。


言い返したい。


だが、ウラジオが大人として我慢しているのが分かる。


ここで自分がムキになって、場を壊すわけにはいかない。


「それに、この子も」


今度は、マヤへ視線が向く。


「社交的な場に、そのような庶民の普段着で来るのは、いかがなものでしょう」


「……」


マヤは、視線を下に向けた。


せっかくの祝いの場に、沈黙が流れる。


その沈黙を破ったのは。


ウラジオだった。


「おっしゃる通りですね」


静かな声だった。


「品のない者には、お帰りいただきましょう」


「そうでしょう、そうでしょう!」


アーサー夫人は、口元に扇子を当てて笑った。


「あなたのことです」


ウラジオの声が、低くなる。


「夫人」


その目が、鋭く光った。


「彼等は、私の大切な招待客です」


「……なっ」


アーサー夫人の表情が歪む。


「どこで嗅ぎつけたのか、タダ飯の甘い匂いに集って招待状もなく勝手に来おって!」


ウラジオは、一歩前へ出た。


「そのうえ、私の大切な宝を侮辱するとは」


「宝?」


アーサー夫人が、鼻で笑う。


「何が宝ですの?」


「それ以上は許さん」


ウラジオの声が、さらに低くなった。


「ここにいるマヤ、ユウト!」


「あなたの後ろにいる、ケイン、ショウ、レミナ!」


「そして、下のカウンターで受付をしていたサミラ!」


「……」


その場にいた従業員たちが、静かに息を呑む。


名前を呼ばれた者たちは、思わず背筋を伸ばした。


「ここにいる者だけではない」


「私の代わりに商会で仕事をしているレイヴンも」


「厨房で働いている者も」


「店の外で車を案内している者も」


「ウラジオ商会のために動いている者たち全てが」


ウラジオは、はっきりと言った。


「私の宝だ!」


ユウトは、ウラジオを見た。


『社員はみんな、私の宝だ』


以前、ウラジオが言っていた言葉が、頭をよぎる。


あれは、ただの綺麗事ではなかった。


「社長……」


マヤの目に、涙が浮かんでいた。


「何を綺麗事を……」


「わ、私にそんな態度を取って、ただで済むと……」


「構わん!」


ウラジオの声が、店内に響いた。


「別に、商会はゴルディア以外でも開ける!」


周囲の招待客たちが、息を呑んだ。


従業員たちも、静かにウラジオを見つめている。


「お……覚えてなさい」


アーサー夫人は、悔しそうに唇を噛んだ。


そして、勢いよくその場を立ち去っていく。


しばらく、誰も動かなかった。


店内に残ったのは、静かな緊張。


そして。


ウラジオへの、確かな敬意だった。


「社長……」


マヤが、泣きそうな表情でウラジオの元へ駆け寄る。


「気にするな」


ウラジオは、いつものように穏やかに笑った。


「今日は、君たちの店を祝う日だ」


「くだらない言葉で、台無しにする必要はない」


「……はい」


マヤは、小さく頷いた。


ユウトも、涙目になりながらウラジオの前に立った。


「ウラジオさん……」


そして、ぐっと拳を握る。


「いや……社長!」


「ん?」


「かっこよかったです!」


その声は、少し震えていた。


ウラジオは一瞬だけ驚いた後、照れくさそうに笑った。


「ハッハッハ」


「そう言われると、少しむず痒いですな」


それから、ウラジオは周囲を見渡した。


「さっ」


「レセプションを開始しましょう」


その声に、止まっていた空気が少しずつ動き出す。


どこからともなく、拍手が起きる。


ウラジオへの拍手なのか、開店祝いの拍手なのか……。


それは知る必要のない事だった。

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