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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第159:新たな魔王の儀式

翌朝。


パン、パン、パン。


花火のような音で、ユウトは目を覚ました。


(なんだ……?)


(魔物か?)


警報は鳴っていない。


ユウトは目を擦りながら、窓の外を眺めた。


すると。


大きな車が、低い位置を飛んでいた。


車体の後ろには、大きなモニター。


画面には、ハンバーガーの映像が流れている。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ウラジオバーガー一号店。


明日オープン。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


そんな告知が表示されていた。


(明日か……)


不労所得に、また一歩近づいた。


自然と、顔がにやける。


ユウトはしばらく、窓の外を眺めていた。


まだ眠い。


だが。


(このシチュエーションには……)


(やっぱりコーヒーだな!)


ユウトはテーブルに手を伸ばした。


その瞬間。


「痛っ」


「いててててててっ!」


「いってぇ!」


右腕のブレスレットが、ぎゅっと締め付けられる。


同時に、指につけたドクロの目が赤く光った。


(大きさ!)


(手のひらサイズのマグカップ!)


慌ててイメージを修正する。


すると、締め付けが収まった。


虹色の光とともに、テーブルの上にマグカップが現れる。


中には、湯気を立てるコーヒー。


「ふぅ……」


大きさをイメージするのを忘れていた。


そして、ドクロの指輪が光った。


つまり。


生死に関わる。


熱々のコーヒーで溺れるところだった。


(危ねぇ……)


痛みで、完全に目が覚めてしまった。


だが、ユウトはシチュエーションを大事にする男である。


何事もなかったように、コーヒーを口に含む。


窓から差し込む朝日を浴びながら、静かに息を吐いた。


「腹減ったな……」


手元のコーヒーに視線を向ける。


そして。


テーブルに手を向けた。


今度は、大きさに注意しながらイメージする。


テーブル全体が虹色に光り――


食欲をそそる香りが立ち上った。


こんがり焼けたトースト。


カリカリのベーコン。


湯気の立つトマトスープ。


そして、ふわふわのスフレオムレツ。


「よし!」


コーヒーに合わせた、完璧なラインナップ。


何気に、スキルの練習で初めて食べたスフレオムレツを気に入っていたらしい。


トーストで乾いた口の中を、コーヒーで潤す。


ふわふわのスフレオムレツと、カリカリのベーコンで食感の違いを楽しむ。


そして、ベーコンの油分を温かいトマトスープで洗い流す。


「完璧だ……」


ユウトは、満足げにモグモグと口を動かした。


朝食を食べ終えると、身支度を整える。


そして、鏡の前に立った。


黒い服。


黒い指輪。


黒いチェーン。


黒い十字架。


「……」


(やっぱり……)


(かっこいいな、俺)


「ふぅー」


ユウトは大きく息を吐いた。


覚悟を決める。


美容室へ行く覚悟を。


決心したように、部屋を出る。


階段を降りる姿も、自信に満ち溢れていた。


アパートを出ると、二人の女性が空を見上げながら話していた。


(あれ?)


アメリとセレスだった。


「どうしたんだ?」


黙って通り過ぎるわけにもいかず、とりあえず声をかける。


「ユウト様、それが……うっ!!」


アメリが、ユウトに視線を向けた瞬間、言葉を詰まらせた。


「ウラジオ商会の広告を見てたのよ」


セレスが空を指差す。


「あれってユウトので……げっ!!!!」


セレスも、ユウトを見て固まった。


「ユウト……その腕……」


「指も……」


「あぁ」


ユウトは、得意げに腕を見せる。


「イメチェンだ!」


「これから美容室にも行ってくる!」


聞いてもいないのに、行き先まで告げた。


「その格好……」


アメリが何かを言いかけた瞬間。


セレスが、そっと手でその口を塞いだ。


「そう!」


セレスは、少しだけ引きつった笑顔を浮かべる。


「気をつけてね!」


「似合ってるわよ」


「そ、そうか!?」


ユウトの顔が、ぱっと明るくなる。


「じゃ!行ってくる!」


そう言って、ユウトは二人の横を通り過ぎていった。


アメリとセレスは、黙ってその後ろ姿を見送る。


黒い服。


黒いアクセサリー。


妙に自信に満ちた歩き方。


二人は、しばらく無言だった。


やがて、車に乗り込む。


「シオリ……」


アメリが、静かに口を開いた。


「なんで何も言わなかったの?」


「ねぇ、アメリ」


セレスは、窓の外を見たまま言う。


「前にユウトの服をいじって、何か変化はあったかしら」


「何も……」


「自信をなくして、変わることが怖くなったのよ」


「けど……」


アメリは、先ほどのユウトの後ろ姿を思い出す。


「今の自信に満ちた顔……」


「自信は、成長に必要な感情よ」


「……」


「確かに……」


アメリは小さく頷いた。


「自分から美容室に行くなんて……」


「ユウトも、無意識に変わろうとしてるのよ」


セレスは、少しだけ目を細めた。


「見守りましょう……」


「たとえ……」


「どんな魔王が生まれようとも……」


「……」


二人を乗せた車は、静寂に包まれた。


その時。


「二百メートル先、左へ曲がります」


ステイルが、耳を赤くしながら呟くように報告した。


「やらなくていい!」


アメリの声が、車内に響いた。


______________


その頃、ユウトは。


ビルの広告を眺めていた。


いや。


眺める必要などなかった。


どこを見ても、広告ばかりだった。


家族らしき人たちが、自転車に乗る映像。


スーツを着た女性が、パソコンを操作する映像。


ハンバーガーを食べている、ウラジオの映像。


全ての広告が、明日の日付を示している。


(ウラジオ……)


(自分で宣伝するのか)


知っている顔だからか。


ウラジオバーガーの広告が、特に目を引いた。


ユウトは、キョロキョロしながら街を歩く。


(確か、この辺だったはず……)


そして。


ついに、美容室の前に立つ。


外から見える、オシャレな店内。


綺麗な女性スタッフ。


整えられた椅子。


大きな鏡。


「こ、ここに……入るのか……」


感情が、そのまま言葉となって漏れた。


急に、不安になる。


だが。


ガラスにうっすらと映る自分の姿が、ユウトに勇気を与えた。


(大丈夫だ……)


(今の俺は、かっこいい)


(むしろ……)


(誰が髪を切るのか、取り合いになるかもしれない)


(それが心配だ)


「よし!」


ユウトは顔を上げた。


歩き出す。


扉を開く。


「いらっしゃいませー!」


女性たちの声が、店内に響いた。


ユウトは、ゆっくりと歩いて中に入る。


スタッフたちが、一瞬だけ手を止めた。


驚いたように、ユウトを見る。


その中の一人が、すぐに駆け寄ってきた。


ユウトの前で立ち止まる。


「いらっしゃいませ」


「あ、あの……」


ユウトは、少し目を逸らしながら口を開いた。


「予約してない……ですが」


「その……」


「もっと、かっこよく……してほしくて」


「少しお待ちいただきますが、よろしいですか?」


「は、は……い」


ユウトは、待合室のような場所に案内された。


「こちらの用紙に記入してお待ちください」


そう言って、スタッフが紙を渡す。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


お名前:ユウト


性別:(男性)女性


年齢:21歳


職業:フリーター


希望の髪型: (スタッフに相談)


カラー:無し


パーマ:無し


スタッフの指名:無し


ご要望:今日のファッションに合う感じ


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「あ、あの……お願い、します」


「ありがとうございます」


一通り記入して、近くにいた女性スタッフへ渡す。


その時。


指先が、少しだけ触れた


「……」


(ちょっと手が触れた)


(これは……)


(気があるサインなのか?)


そんなことを考えながら、ユウトは待合室に戻った。


目の前には、見たこともない雑誌が並んでいる。


全く興味が湧かない。


シャンプーのポスター。


ドライヤーのポスター。


一通り見渡すが、違いが分からない。


(ドライヤーなんて、何が違うんだ?)


その時。


「お待たせしました」


女性スタッフが、ユウトの前に立った。


「本日、カットを担当させていただきます」


「モエカです」


「あ、はい」


ユウトは慌てて立ち上がる。


「よろしく……お願いします」


席に案内され、椅子に座る。


さっき記入した紙が、鏡の前に置かれていた。


モエカは、それを手に取り確認する。


「……」


チラッ。


モエカが、ユウトを見る。


「………」


チラッ。


もう一度、見る。


さらに。


黒いチェーン。


黒い指輪。


黒ドクロの指輪。


黒い十字架のネックレス。


そこまで確認して、笑顔が少しだけ引きつった。


「一応、確認ですけど」


モエカは、慎重に言葉を選びながら口を開く。


「“今日のファッション”って言うと……」


「アクセサリー込み……」


「はい」


「ですよね、はい。そうですよね……!」


さらに、笑顔が引きつる。


この無茶振りを、どう処理するべきか。


かつてないほどの緊張が、モエカに襲いかかる。


そうとは知らず。


ユウトは、ワクワクした表情で鏡の中の自分を見つめていた。

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