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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第155 話:スフレオムレツ

帰宅後。


ユウトの部屋。


「いよいよ最後の訓練よ」


セレスが、どこか楽しそうに言った。


「最後の料理は……」


(オムハヤシか?)


(オムカレーか?)


ユウトは身構える。


「スフレオムレツ!」


「えっ……」


「いまさらオムレツ?」


「なによ?」


「だって……」


ユウトは首を傾げた。


「難易度、下がってないか?」


「スフレオムレツよ!スフレ!」


「なんだそれ……」


「知らないの?」


セレスは、少し得意げに胸を張った。


「卵白だけを先にフワフワに泡立てて」


「後から卵黄と混ぜ合わせて、蒸し焼きにするオムレツよ」


「へぇー」


ユウトは、分かったような顔で頷いた。


「何となく分かった」


「じゃあ、まずはイメージだけで創造してみて」


「これか?」


ユウトはテーブルに手を向け、目を閉じる。


ふわふわしたもの。


黄色いもの。


焼いたもの。


何となく、それらしいものを思い浮かべた。


次の瞬間。


虹色の光。


光が消え去り、テーブルの上にそれが現れる。


セレスは、目を見開いた。


「ユウト……」


「分かったって言ったわよね……?」


「ん?」


ユウトは、テーブルの上を見る。


「これじゃなかったか?」


「違うわよ!!」


セレスが、テーブルの上を指差す。


「だってこれ……」


「どう見ても、ホットケーキじゃない!!」


「呼び方が違うだけだと思って……」


「ちゃんと説明聞いて!」


セレスは文句を言いながら、スプーンを手に取った。


そして。


モグモグと口を動かし始める。


(食うのかよ!)


「ちょっと待ってて」


そう言って、セレスはホットケーキを完食してから部屋を出た。


────────


数分後。


「これが、スフレオムレツよ!」


セレスが皿を持って戻ってきた。


皿の上には、ふわふわと揺れる黄色いオムレツ。


今にも崩れそうなほど柔らかく。


それでいて、表面には綺麗な焼き色がついていた。


「これ……」


ユウトは目を丸くする。


「お前が作ったのか?」


「……そうよ?」


「料理できたんだな!!」


「できるわよ!?」


セレスが即座に言い返す。


「いや……」


ユウトは、少し気まずそうに目を逸らした。


「部屋も汚くしてて」


「そこら辺に弁当のゴミが落ちてるイメージだった」


「私をなんだと思ってるの!!」


「いいから、早く食べて!」


セレスは皿をテーブルに置いた。


「半分だけね」


「あ……はい」


ユウトは、目の前のスフレオムレツへ視線を向けた。


見ただけで、ふわふわなのが分かる。


食欲をそそる焼き色。


ほんのりと漂う、バターの香り。


スプーンで掬い、ゆっくりと口へ運ぶ。


口に入れた瞬間。


シュワッと、とろけた。


泡の塊のような食感。


「う、うまっ!!」


ユウトは思わず声を上げた。


「凄いな!」


「こんなの作れるのか!」


ただただ感心するユウト。


「は、半分だけよ!」


セレスは、少しだけ照れたように言った。


「もう半分は?」


「見てて」


「え?」


「見るだけか?」


「そうよ」


「……」


ユウトは言われた通り、じっと目の前のスフレオムレツに注目した。


数分後。


「何の意味があるんだ?」


少し飽きてきた。


「分からない?」


「何が……」


「じゃあ、もう少し見てなさい」


さらに数分後。


「……」


「まだ気づかないの?」


「え?何が?」


「よく見て」


「……あれ?」


ユウトは、オムレツをじっと見つめた。


「なんか、小さくなってる気がする」


「その通りよ」


セレスは頷いた。


「スフレオムレツは、時間が経つと萎んでしまうの」


「へぇ……」


「今回の課題は……」


セレスは、にこっと笑った。


「30分経っても萎まないスフレオムレツよ!」


「そんなの、どうやって……」


「特殊な空間を創造して、時間を操るのよ」


「空間を……」


ユウトの表情が、少しだけ変わる。


「集中してね」


セレスの声も、少しだけ真剣になった。


「ひとつ間違えば……」


「分かってる……」


時間。


全てのものに、平等に与えられているもの。


その平等と均衡に逆らう。


ただ事ではないことは、ユウトにも分かった。


「そんなこと……できるのか?」


「ユウトも、これができれば3000年以上生きられるわよ」


「それって……」


「そう」


セレスは静かに頷いた。


「ルイスがやったことよ」


「ドラゴンだからって、3000年も生きられるわけないじゃない」


「自分の周囲にだけ、時間の流れを遅くする空間を作ったのよ」


「そう……なのか……」


ユウトは、少しだけ黙る。


「それでも、初めて会った時より歳は取ってるわね」


「へぇー」


ユウトは妙なところで感心した。


「人間で言うと、あいつ何歳なんだ?」


「フフッ」


セレスは小さく笑う。


「犬みたい」


「20代後半かしら」


「その割に少し老けてるな……」


「きっとストレスね」


セレスは腕を組んだ。


────────


デウス商会。


ゾワッ。


「どないしました?社長」


シュウイチが首を傾げる。


「いや……」


ルイスは、わずかに眉をひそめた。


「なにか、不愉快な感じがした……」


────────


「さっ、訓練を始めるわよ」


セレスが手を叩く。


「まずは、さっき食べたスフレオムレツと同じものを創造して」


「大きさに注意してね」


ユウトは目を閉じる。


(テーブルに皿)


(皿の上にスフレオムレツ)


(きめの細かい泡)


(バターの香り)


(均一についた焼き色)


「よし……」


テーブルに向けて手を伸ばす。


「こうか?」


虹色の光が輝き――


テーブルの上に、ふわふわのスフレオムレツが現れた。


「うん、成功ね」


セレスは真剣に頷く。


「次は、このオムレツの周囲に、時間の流れが遅い空間を創造するのよ」


「空間の大きさに気をつけて!」


「難しいな……」


「見えない箱に、スフレオムレツが入っているイメージよ」


セレスは、手で箱の形を作る。


「箱の中は、時間の流れがゆっくり」


「例えば、箱の外で2時間経っても、箱の中では1分しか経たないの」


「……んんっ?」


「時計の針が、ゆっくり動く」


「そんな感じよ」


(ゆっくり……)


ユウトは、スフレオムレツに向けて手をかざした。


白い光が、わずかに輝く。


次の瞬間。


スフレオムレツが急激に膨張した。


ふわふわだった泡が、ブクブクと沸騰するように暴れ出す。


「えっ……なんでだ!」


「あっ……」


セレスが、少し気まずそうに言う。


「箱の中に空気がなかったのね」


「次は、空気があることも忘れないで!」


「分かった……」


ユウトは、膨れ上がったスフレオムレツを見つめる。


その表面は、不気味に揺れていた。


「ここで、問題です!」


セレスが、急に明るい声を出した。


(なにか始まった……)


「この状態から、見えない箱だけを消去したらどうなるでしょう?」


「そりゃ……」


ユウトは口を開きかけて、止まった。


「えっ……」


「どうなるんだ?」


「ば、爆発する!」


「残念!不正解」


セレスは人差し指を立てる。


「正解は……」


そして、指をパチンと鳴らした。


(やれってか!)


(本当に爆発しないんだな?)


ユウトは恐る恐る、イメージした見えない箱を消す。


スフレオムレツの周囲に作った、特殊な空間。


それだけを消去する。


その瞬間。


膨れ上がっていたスフレオムレツが、急激に押し潰された。


何かに圧縮されたように、しゅんと萎んでしまう。


「正解は、急激に萎む、でした!」


「へぇー……」


ユウトは、潰れたスフレオムレツを見る。


「食べ物で実験するのは気が引けるけどね」


「……」


(もし、人に向けてたら……)


萎んだスフレオムレツを見て、ユウトの顔が青ざめた。


失敗したスフレオムレツを消去し、最初からやり直す。


「……」


(見えない箱に、スフレオムレツが入ってる)


(箱の中の時間の進み方は、ゆっくり……)


(外と同じように、空気が存在する)


「よし……」


ユウトはテーブルに向けて手を伸ばした。


虹色の光。


光が消えると同時に、白い輝きをまとったスフレオムレツが現れた。


「え?」


セレスが驚いたように目を開く。


白い光も、すぐに消え去る。


「なんで、勝手に応用するのよ!」


「スフレオムレツを出してから、空間を創造しなさいよ!」


「あっ、わりぃ……」


ユウトは少し気まずそうに頬をかいた。


「けど……」


「できたかも!」


「まだ分からないわ」


セレスは、オムレツをじっと見る。


「30分待ちましょう」


「長いな……」


「ところで……」


ユウトは、ふと口を開いた。


「これって、いろいろ応用できそうだな?」


「例えば?」


「自分の姿を見えなくする空間を作るとか」


「……最低ね」


セレスは、軽蔑するような目でユウトを見た。


「ばか、違うって!!」


「……」


必死に否定したが。


とくに理由が思いつかない。


「あ、あとは……」


「えっと……」


ユウトは、苦し紛れに言う。


「ケガや病気が治る空間……とかかな?」


「………え」


セレスの表情が変わった。


驚きなのか。


恐怖なのか。


それとも、別の何かなのか。


なんとも言えない表情だった。


ただ1つ言えることは。


その表情が、ユウトの記憶に深く刻まれたということ。


「ユウトは……」


セレスが、ゆっくりと口を開く。


「ユウトは、どうしたい?」


「俺?」


「そりゃ……」


ユウトは少し迷いながら答える。


「病気やケガが治るなら、いいだろ」


「そう……だよね」


「……」


部屋の中が、再び沈黙する。


「どうしたんだ?」


「ユウトの言う、ケガや病気が治る空間」


セレスは小さく息を吐いた。


「作れるわよ……」


「しかも、どんなものでも治せるわ」


「……」


「けど……」


「けど?」


「……」


セレスは、ほんの少しだけ目を伏せた。


「少し……嫌なことを言うわよ?」


「あ、あぁ……」


「人口が増えすぎて、世界が滅びる……かも」


「お、おい……」


ユウトは思わず身を乗り出す。


「どういうことだ?」


「あっ、30分経ったわね!」


(まだ20分だろ……)


セレスは、明らかに話題を変えようとしていた。


これ以上、この話を続けたくない。


そんな反応だった。


「うん」


セレスはスフレオムレツを見る。


「萎んでない!」


「成功よ!」


「……そうか!」


ユウトも、それ以上は触れないことにした。


訓練は、無事に合格したようだ。


だが。


素直に喜ぶことはできなかった。

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