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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第151話:天使の戯れ

レグナス商会前。


「ちょっとー」


「早くしてよ!」


自転車から降りたセレスが、後ろを振り返る。


「ゼェ……ゼェ……」


「ま、待てよ……」


「少しは……」


「休ませてくれよ……」


ユウトは肩で息をしながら、膝に手をついた。


それと。


「口調が戻ってるわよ!」


「バルド様!」


セレスが小声で注意する。


今のユウトは、認識阻害リングでバルドに変装していた。


「お前……普通……ハァ、ハァ……」


「押して一緒に……ハァ、ハァ……歩くだろ……」


「初心者に普通とか求めないでよ」


「ハァ、ハァ……初心者が……」


「立ちこぎして……ハァ、ハァ……」


「さらにスピード……上げてんじゃねえよ!!」


「さっ、休んだし入るわよ!」


「息を整えて!」


「無茶言うなよ……」


「口調!」


「ホッホッ……ホッ……」


ユウトは慌てて低い声を作る。


「休憩が……」


「短すぎやせんかね……」


「のんびりしてたら夜になっちゃうわ」


セレスは、さっさと自転車のタイヤを拭き始める。


「私の貴重な休みなんだから!」


「わかったよ……」


「それに……」


セレスは、ビルの入口を見た。


「中で休めるわ……」


「……?」


ユウトは首を傾げる。


二人は、ビルの中へ入った。


受付には、長い列ができていた。


「相変わらず、ここは凄いな……」


「並ぶわよ」


(休めるって、そういうことか……)


ユウトは納得した。


ウラジオやレイヴンほど、バルドの顔を知っている者は多くない。


だが。


「おい……」


「今入ってきたのって……」


「誰?」


「知らねえのか?」


「間違いねぇ……」


「あれ、バルド商会のトップだ」


「隣の姉ちゃんが持ってるのは何だ?」


全く知られていないわけではなかった。


ざわつくビル内を横目に、平然と列に並ぶセレスとユウト。


いや……


シオリとバルド。


すると、奥から黒服の男が現れ、二人の前まで歩み寄ってきた。


「恐れ入ります」


男は丁寧に頭を下げる。


「バルド商会のバルド様とお見受けします」


「特別室にご案内いたします」


「あぁ、お気遣いありがとうございます」


バルドは穏やかに微笑んだ。


「ですが、みんな並んでおるんじゃ」


「私たちも、順番を守らせてもらいますよ」


「か、かしこまりました」


黒服の男は、少し驚きながらも頭を下げた。


本当はもう少し休んでいたいだけである。


だが…


周囲の目は違った。


「バルド商会のトップが、黙って並んでるぞ……」


「なんて懐の広い方なんだ……」


「普通なら、特別室に行くよな……」


「いや、あえて一般客と同じ列に並んでいるんだ」


「格が違う……」


ざわめきが広がっていく。


そして。


「俺、バルド商会に行ってみる!」


「どうする?俺たちもバルド商会に行くか?」


「そうだな!バルド商会ならきっと……」


なぜか、列の中から数人が立ち去った。


それだけではない。


これから何が起こるのか。


それが見たくて、自然と列から離れる者もいた。


気づくと、行列は半分にも満たなくなっていた。


「なんか騒がしいな」


ユウトが、セレスにだけ聞こえるようにぼそっと呟く。


「ユウトのせいよ!」


セレスも小声で返す。


「こうなるから、特別室を用意してくれたのに……」


「そうなのか……?」


「それに……」


セレスは、ちらりと横に視線を向ける。


その先には。


隠れるように、レグナスが立っていた。


どうやら、騒ぎを聞きつけて降りてきたらしい。


だが。


順番を守っているバルドとシオリに恥をかかせまいと。


レグナスも、呼ばれるまで待機していた。


しばらくして。


ようやく、二人の番となった。


その場にいる全員の注目と緊張が集まる中。


ユウト。


いや。


バルドが口を開いた。


「こんにちは」


「バルドですけど、レグナスさん居ますか?」


(友達の家か!!)


セレスが、心の中で突っ込んだ。


あまりにもフランクなバルドに、受付の女性も驚きを隠せなかった。


だが。


周囲の目は違った。


「なんだ……今のは?」


「冗談に決まってるだろ!」


「見ろ!周りを……」


「空気が変わったぞ!」


「わざと、とぼけたふりをしてるんだよ」


「なるほど……」


「さすが大商会のトップだ……」


なぜか、勝手に過大評価してくれる。


「バ、バルド商会のバルド様ですね……」


受付の女性は、横目でちらちらとレグナスの姿を見る。


「確認いたします」


そして、どこかへ電話する。


(なんなの、この茶番……)


セレスは心の中で思った。


「お待たせいたしました」


受付の女性が、緊張した声で口を開く。


「ただいま、代表がまいりま――」


「お待たせしました!」


その言葉を遮るように、レグナスが笑顔で歩いてきた。


「ようこそ、バルド殿」


「シオリ様、お久しぶりです」


そう言って、レグナスはシオリに頭を下げる。


「おい、あの姉ちゃん何者なんだ?」


「レグナス商会の代表が頭を下げたぞ……」


「分からねえ……」


「だが、俺たちは歴史が動く瞬間に立ち会っている」


「そんな気がする……」


あまりの光景に、周囲の者たちはさらにざわつき始める。


「場所を変えましょうか」


その様子を見て、レグナスが口を開いた。


「ありがとうございます」


セレスはそう言うと、列の方へ体を向ける。


「皆さん、お騒がせしました」


そして、丁寧に頭を下げた。


「……」


ロビーにいた全員が言葉を失う。


レグナスが頭を下げるほどの少女。


その少女が、自分たちに頭を下げた。


「て……」


誰かが、震える声で呟いた。


「天使様だ……」


膝をつき、祈る者。


涙を流す者。


驚きのあまり、口を開けたまま動かない者。


周囲の者たちの反応を横目に、セレスはレグナスの方へ振り返った。


「……お遊びが過ぎますよ」


小声でレグナスが注意する。


「てへっ」


セレスは舌を出し、にこっと笑った。


「……」


その姿を、ユウトは無言で見ていた。


そして。


同じように列へ向かって振り返る。


「ホッホッホッ」


「すまないね」


真似してみる。


だが。


周囲の反応は、イマイチだった。


(あれ?)


「何してるの?行くわよ」


セレスが小声で注意する。


レグナスは、苦笑いするだけだった。

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