第149話:紅生姜の必要性
デウス商会。
「普及率は?」
ルイスが静かに尋ねた。
「14%ってとこですね」
シュウイチが、手元の資料を見ながら答える。
「そうか……」
「まあ、まだパソコン自体が販売されてませんし」
「正直、今のままやと使い道ほとんどないですからね」
「よう分からん通信に金かける人なんて、逆に心配になりますよ」
シュウイチは、軽く肩をすくめた。
「今のところは、バルド商会とその傘下」
「ウラジオ商会とレグナス商会」
「それと……商業ギルド」
「後は、関係者が個人で契約してる程度ですね」
「おもろいのは、レグナス商会とウラジオ商会です」
シュウイチは、にやりと笑う。
「もう金の匂い、嗅ぎつけてきてますわ」
「……」
ルイスは、ほんの少しだけ目を細めた。
「流石は、大商会と言ったところか……」
────────
その頃。
ユウトの部屋。
「どうせまたオムライスだろ?」
「違うわ!」
セレスは即答した。
「流石に3食は嫌よ……」
「そうなのか?」
ユウトは、少しだけ期待した。
ようやく。
ようやくオムライスから解放される。
そんな淡い希望が胸に灯る。
「次は……」
「……」
「次は?」
「オムそばよ!」
「オムから離れろや!!」
「始めるわよ」
(無視かよ……)
セレスは、いつものようにテーブルを指差した。
「このテーブルに、木の板を2枚」
「その横に、お箸」
「木の板の上には、熱々の鉄板」
「熱すぎてもダメよ」
「けど、温度が低くてもダメ」
「薄い玉子で包まれた焼きそば」
「それを鉄板の上に乗せて」
「すぐにソースとマヨネーズを、線を描くように交差させる」
「鉄板の上で、ソースとマヨネーズがジュージューしてるの」
「最後に、鰹節と青のりをふりかけて完成」
「紅生姜は?」
「いらないわ」
「いや、いるだろ」
「じゃあ、1つは紅生姜ありにしていいわ」
「イメージできた?」
「……はい」
ユウトは、テーブルに手を向けた。
虹色の光が広がる。
そして。
現れたのは、鉄板の上に乗ったオムそば。
「……ダメよ」
オムそばを見るなり、セレスはすぐに不合格を出した。
「鉄板の温度が低くて、ジュージューしてない」
「やり直し!」
「難しいな……」
ユウトは、失敗したオムそばを消去する。
そして、もう一度イメージした。
(熱々の鉄板か……)
再び、テーブルに手を向ける。
虹色の光。
その直後。
焦げた臭いが、部屋に広がった。
「ダメね……」
セレスは眉をひそめる。
「今度は鉄板が熱すぎて焦げてるわ」
「ジュージューよ!ジュージュー!」
「……はい」
ユウトは再度チャレンジする。
虹色の光。
今度は、光の中からジュージューと音が聞こえた。
光が消え去る。
鉄板から、湯気が立ち上る。
ソースとマヨネーズが、鉄板の上で香ばしく弾ける。
鰹節が、ゆらゆらと踊るように揺れていた。
「できた!!!」
ユウトは思わず声を上げた。
「うん」
セレスは、じっとオムそばを見る。
「これなら、合格点をあげてもいいわ」
(こいつ……なんで上からなんだ……)
「さっそく食べましょう!」
セレスが嬉しそうに箸を手に取ろうとした。
その時。
「あっ……」
ユウトが小さく声を漏らした。
「どうしたの?」
「失敗だ……」
「え?」
「紅生姜、忘れた」
「あっ、そう……」
セレスは、すぐに気を取り直す。
「じゃあ、私は食べるから」
「ダメだ!」
「え?」
ユウトは、せっかく完成したオムそばを消去する。
「ちょっと!」
「なんでよ!!」
セレスが本気で叫ぶ。
「一度に2パターン創造する訓練も兼ねてるんだろ?」
「兼ねてないわよ!」
「温度の微調整だけよ!!」
「……」
「早く言えよ!!」
「追加で紅生姜出すだけでよかったじゃねえか!」




