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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第142話:見えない金脈

領主邸。


門を越えた車は、ゆっくりと敷地内を進んでいった。


整った石畳。


生え揃った芝生。


手入れが行き届いた庭。


いかにも、金持ちのイメージ通りだった。


「すげー」


ユウトは、観光気分で庭を見渡す。


「おっ……」


「紅茶飲む場所がある!!」


「ガゼボよ」


セレスが冷静に答える。


「家の中で飲んだ方が早いのに!」


「……」


「見ろよ」


「ベンチが何個もある!」


「座ることあるのか、あれ?」


「……」


「おっ……おい、あれって……」


「噴水じゃねえか!?」


「なんの意味があるんだ?」


「落ち着きなさい」


セレスが呆れたように言う。


「いや、だってさ」


ユウトは窓の外を見つめたまま言った。


「金持ちの家って、本当にこういうのあるんだな……」


「感動するところ、そこなの?」


その時。


「到着しました」


ステイルの声とともに、車が屋敷の前で止まった。


入口付近には、黒服の男が立っている。


「セバスチャンだ!!」


「執事さんよ」


「落ち着きなさい!」


セレスが、今度は少し強めにユウトを宥める。


「いったい、どうしたの?」


ユウトの様子を見て、アメリが不思議そうに首を傾げた。


「なんでもないわ」


セレスがため息交じりに答える。


「現実離れしすぎて、興奮してるみたい」


「そ、そう……」


アメリは若干引いていた。


「さっ、降りるわよ」


そう言って、セレスが車を降りる。


アメリとユウトも、後に続くように車を降りた。


すると。


黒服の男が、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「初めまして」


男は、静かに頭を下げた。


「私は、ゴルディア家執事のベネットと申します」


「シオリ・サトウ様」


「ユウト様」


「アメリ様」


「お噂は、かねがね伺っております」


何千回、何万回、そうしてきたのだろう。


一つ一つの所作に、無駄がない。


無駄のない立ち振る舞いとは、こういうことを言うのだろう。


「旦那様がお待ちです」


「ご案内いたします」


「ありがとう」


ベネットの案内で、3人は屋敷の中へ入った。


屋敷の中は、目に入るものすべてがキラキラと輝いていた。


シャンデリア。


磨かれた床。


壁に飾られた絵画。


見たこともない装飾品。


どれも高そうだった。


いや。


おそらく、本当に高い。


(落ち着かねぇ……)


ユウトは、思わず肩をすぼめた。


しばらく進み、豪華な装飾が施された扉の前で立ち止まる。


コン、コン、コン。


ベネットが扉をノックした。


「どうぞ」


中から声が聞こえる。


ベネットが、静かに扉を開けた。


「失礼いたします」


「旦那様」


「お客様をお連れしました」


「おぉ、そうか!」


奥から、明るい声が返ってきた。


「どうぞ、お入りください」


「失礼します」


アメリが一歩前に出る。


「本日、突然のご訪問となり申し訳――」


「よいよい」


男が片手を上げて、アメリの言葉を止めた。


「堅苦しい挨拶は無しだ」


部屋の奥。


高そうなソファに座っていた男が、ゆっくりと立ち上がる。


年齢は、50代ほどだろうか。


恰幅のいい体。


指には、大きな宝石のついた指輪。


服も。


椅子も。


机も。


すべてが、金の匂いを放っていた。


「君が、天才科学者のシオリ・サトウ殿だね?」


「はい」


セレスは短く答える。


「その隣の君が、バルド商会のアメリ殿」


「はい」


アメリが丁寧に頭を下げる。


「そして……」


男の視線が、ユウトに向いた。


「君が、フリーターのユウト殿か」


「は、はい」


ユウトは思わず背筋を伸ばした。


「私は、アーサー・ゴルディアだ」


男は、にこやかに笑った。


「さぁ、立ち話もなんだ」


「どうぞ、お座りください」


アーサーが、高そうなソファを指す。


「失礼します」


3人は、フカフカのソファに腰掛けた。


沈む。


想像以上に沈む。


(なんだこれ……)


(立ち上がる時、大変そうだな……)


そんなことを考えている間に、ベネットが3人の前に紅茶を差し出した。


「それでは、旦那様」


「私は、これで」


「あぁ」


ベネットは静かに頭を下げ、部屋を出ていく。


扉がゆっくりと閉められる。


完全に閉じられた時。


アーサーの口が開いた。


「私は金が好きだ」


「……」


あまりにも突然だった。


「だから、金を生み出してくれた君たちには感謝しているよ」


アーサーは豪快に笑う。


「とくに、シオリ・サトウ殿」


「君は、この街をここまで発展させてくれた!」


「いいえ」


セレスは静かに答える。


「私だけの力ではございませんわ」


「過ぎた謙遜は嫌味となりますぞ」


「ガハハハハ!」


アーサーは、楽しそうに笑った。


そして。


その視線が、ふとユウトへ向く。


「それにしても……」


「君が、ユウト殿か」


「え?」


突然名前を呼ばれ、ユウトは少しだけ身構えた。


「ラムネ」


「バルドカップ麺」


「あぁ、ルービックキューブもだったか?」


アーサーは、指折り数えるように言う。


「最近、この街で妙な売れ方をしている商品には」


「なぜか、君の名前がある」


「金の匂いがする者の名前は、覚えるようにしていてね」


「……」


「ところで、領主様」


アメリが姿勢を正す。


「本日は、お話があって参りました」


「ほう?」


「私どもの開発した商品を、商業ギルドへ導入するご提案です」


「商業ギルドに?」


先ほどまでとは打って変わって、アーサーの目つきが鋭くなる。


「その商品を使えば、どのようなメリットが?」


アメリは、すぐに説明へ入った。


「この商品を使えば、月に一度の決算をギルドに出向くことなく行えます」


「さらに、書類の整理や管理も――」


「話になりませんな」


アーサーが、アメリの説明を遮った。


「……」


「私が気になるのは、私自身のメリットです」


「決算が簡易化され、人件費も抑えられます」


「商業ギルドには、毎月の予算を設定してあります」


アーサーは淡々と言う。


「その範囲内で、業務を行うようにしている」


「これまでも、予算の範囲内には収めている」


「ならば、わざわざ金をかけて導入する必要性を感じられませんな」


鼻で笑うアーサー。


「副マスターが、人件費削減のために受付に立っていました」


ユウトが、我慢できずに口を開いた。


「決算日に人員を増やして、他の日に削ってるんじゃないですか!」


「それが、仕事というものです」


「副マスターだからと言って受付に立たない理由にはならない」


アーサーは、あっさりと答えた。


「君たちのお陰で、私は稼がせてもらった」


「金がないわけではない」


「だが……」


「私は、無駄な金を使うのが嫌いでね」


「……」


(ふざけんな……)


ユウトの手が、ぎゅっと拳になる。


だが。


その瞬間。


────────


「不安定な積み木の上にいる人の手は、拳になる」


「それじゃ、引き上げられないわ」


「まずは、ユウトの積み木も頑丈にしないとね!」


────────


セレスの言葉が、脳裏に蘇った。


ユウトは、ゆっくりと息を吐く。


拳を開く。


そして。


手を膝の上に置いた。


怒るだけでは、変わらない。


相手は、金が好きだと言った。


なら。


金の話をすればいい。


「手数料……」


「ユウト?」


「え?」


アメリとセレスの視線が、ユウトに向く。


「ギルド以外からの決算には、何パーセントか手数料が掛かるようにする」


ユウトは、アーサーを見た。


「あんたが好きな金になる」


「ほう」


アーサーの目が、わずかに細くなる。


「高すぎると利用者が減るから、料率はそっちで決めてくれればいい」


「けど、儲かってる商会ほど、時間が惜しくて手数料を惜しまない」


「並んでる時間があれば、もっと儲けられるからな」


「……」


部屋の空気が変わった。


「商業ギルドには」


「時間を売らせる」


「……」


全員が、驚いた表情でユウトを見ていた。


「時間を……売るだと……」


アーサーが、小さく呟く。


時間。


金のある者にも。


金のない者にも。


立場のある者にも。


立場のない者にも。


等しく与えられるもの。


それを、金に変える。


いや。


時間を欲しがる者に、金で買わせる。


「……素晴らしい」


アーサーの声が震えていた。


「見事だ、ユウト殿」


「商人に時間を買わせる」


「目に見えない物に金を払わせる」


「実に良い」


アーサーは、ゆっくりと立ち上がった。


「君の案を受け入れよう!」


「ユウト!」


「ユウト様!」


セレスとアメリが、ユウトへ笑顔を向ける。


「やはり……」


アーサーは、ユウトの前へ歩み寄る。


「私の目に狂いはなかったようだ」


そして。


ユウトの前に、手を差し出した。


「ど、どうも……」


ユウトは戸惑いながらも、その手を取る。


差し出された手を、しっかりと握る。


強く…お互いの意志を結びつけるように。

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