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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第135話:ハイボール

ドランの運転で、アパートの前まで送ってもらったマヤとユウト。


「それではユウト様ぁ!」


「また来週、お迎えに上がりますっ!!」


ドランの運転する車は宙に浮かび上がり、ビルの群れへと帰っていった。


「はぁ……」


ユウトの体に、疲労がどっと押し寄せてくる。


「ふふ」


マヤが小さく笑った。


「お疲れ様です」


「ほんと、疲れましたね……」


「マヤさんは、明日もあるんですもんね」


「当然です!」


マヤは、少しだけ胸を張った。


(大変だな……)


ユウトは素直にそう思った。


「頑張ってください」


「室長」


「ありがとうございます」


マヤは、ぺこりと頭を下げる。


そして、少しだけ言葉に詰まった。


「ユウト……く、くん」


「……」


「早く慣れてくださいね」


「す、すみません……」


「謝ることじゃないですけど……」


そこで、マヤは急に視線を泳がせた。


「あ、あの……」


「はい?」


「よかったら……」


「本当によかったら、なんですけど……」


マヤは、両手を胸の前で小さく握った。


「ご飯でも、行きませんか?」


「……え?」


(さっき試作品食べたんだけど……)


ユウトは思った。


だが、マヤは慌てて続ける。


「し、親睦会です!」


「親睦会!!」


「あと、歓迎会!」


「それなら……」


(それって2人でやるものなのか?)


ユウトは少しだけ首を傾げた。


「私、この近くに隠れ家みたいなご飯屋さんを知ってるんです!」


「じゃあ、そこに行きましょうか」


「はい!」


マヤの顔が明るくなる。


「歩いてすぐなんですよ!」


「案内しますね」


そう言って、マヤは歩き出した。


ユウトに見えないように。


小さく拳を握る。


「よく行くんですか?」


マヤの隣を歩きながら、ユウトが尋ねた。


「最近は行けなかったんですけど……」


「でも、すごく美味しいんですよ!」


「へぇー」


「どんな店なんですか?」


「着いてからのお楽しみです」


(まさか……)


ユウトの脳裏に、ひとつの店が浮かぶ。


「見えてきましたよ!」


(やっぱり!)


今日に限って。


ユウトの勘は、妙に冴えていた。


ボロボロの佇まい。


入りにくい外見。


看板には、こう書かれている。


“うら飯屋”


「ここか!」


「ご存知でした?」


「前に、詩織と何度か来たことがあるんです」


「シオリさん……ですか……」


マヤの表情が、ほんの少しだけ曇った。


少しだけ。


本当に、ほんの少しだけ。


寂しそうな顔だった。


「でも残念です」


マヤは、すぐに笑顔を作る。


「今日は閉まってるみたいですね……」


「じゃ、じゃあ!」


ユウトは慌てて周囲を見る。


「この前、友達と初めて行った店があるんですけど」


「そこにしますか?」


「はい!」


マヤは、嬉しそうに返事をした。


「えっと……」


「たしか……」


ユウトは辺りを見渡す。


「あった!」


「あの店です!」


シュウイチと行った店を指差すユウト。


マヤは、その先を見た。


「あそこって……」


居酒屋だった。


「あっ……すいません!」


ユウトは慌てて頭を下げる。


「食べ物も美味しかったんで、つい」


「いえ!!」


マヤの目が、なぜか輝いた。


「行きましょう!」


「は、はい……」


マヤは、スタスタと歩き始める。


ユウトは、その後を追いかけた。


店の前に立つと、中はすでに賑わっていた。


扉を開ける。


「へい、らっしゃい!」


店主の威勢のいい声が飛んできた。


「ん?」


店主がユウトを見る。


「ども……」


「なんだ、シュウイチのツレの兄ちゃんか!」


そして、ユウトの隣に立つマヤへ視線を向ける。


「こ、こんばんは」


マヤが丁寧に頭を下げる。


「ははーあ」


店主の口元が、にやりと歪んだ。


「こりゃまた……えぇー、おいおいおい」


ニヤニヤしながら、視線をユウトへ向ける。


「はい、2名様ご案なーい!」


「いらっしゃいませ!」


今回は、テーブル席に案内された。


なぜか。


気を遣われたらしい。


椅子に座る。


1枚のメニューを、ユウトとマヤが一緒に覗き込む。


「何飲みます?」


店主が聞いた。


「いや、今日は……」


「私、ハイボールで!!!」


ユウトの言葉を遮るように、マヤが注文した。


(え?)


(酒飲むの?)


「じゃ、じゃあ……」


ユウトは一瞬迷う。


「同じので……」


ハイボール。


聞いたことはある。


有名な酒だということも知っている。


だが、前回来た時には飲まなかった。


(どんな酒なんだ……)


「あの……」


「ハイボール、好きなんですか?」


「大好きです!」


マヤは即答した。


「ユウト……くっ、くんもですか?」


「いや、飲んだことがないんです」


「どんなものなのかなって……」


「へい、お待ち!」


「ハイボール2つと、お通しね!」


「ありがとうございます」


マヤが丁寧にお礼を言う。


質問の途中で、目の前にグラスが置かれた。


敷き詰められた氷。


グラスの向こう側が見えるほど、透き通った薄い金色の液体。


シュワシュワと涼しげに立ち上る気泡。


「ふふ」


マヤがグラスを持ち上げる。


「飲んだ方が早そうですね」


「そうですね」


ユウトもグラスを持ち上げた。


「では……」


「かんぱ……」


「お疲れ様です!」


「お、お疲れ様です」


(お疲れ様です?)


少しグダりながらも、2人はグラスを合わせた。


ユウトは、恐る恐るグラスを口へ近づける。


「……!?」


まだ、口をつけたわけではない。


それなのに。


炭酸が、口の周りで小さく弾けた。


炭酸の粒が、独特の香りを鼻まで運んでくる。


恐る恐る、一口。


ユウトは目を見開いた。


パチパチ。


いや。


バチバチ。


口の中で、強い炭酸が暴れる。


口の中の違和感を、すべて洗い流すような爽快感。


(なんだこれ……)


(すごい!)


「どうです?」


マヤが口を開いた。


「えっと……」


ユウトはグラスを見つめる。


「うまく言葉にできないです」


「けど……」


「もっと飲みたくなる感じです!」


ユウトの語彙力では、それが精一杯だった。


だが。


嫌いじゃない。


むしろ、好きだ。


「ふふふ」


マヤは嬉しそうに笑った。


「私もです」


「揚げ物と、よく合いますよ」


そう言って、マヤは手を上げた。


「すいませーん」


「唐揚げと、ハイボールお願いします」


マヤの注文する姿に。


なぜか、ベテランの風格を感じた。


ふと、目の前のグラスを見る。


空になっていた。


「お酒……強いんですね」


「いえ」


マヤは、にこっと笑った。


「嗜む程度ですよ」


(ほんとかよ……)


そして、2杯目のハイボールが運ばれてきた。


テーブルに置かれる前に、マヤが受け取る。


そして。


ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ。


その音に合わせて、次第に顔が上を向いていく。


ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ。


空になるグラス。


「っはぁー!」


(これは、あれだ……)


(“危険なので真似しないでください”ってやつだ……)


「大丈夫……ですか?」


「あっ」


マヤは、にこっと笑った。


「喉が渇いていたので、つい……」


「すいませーん」


「ハイボール、ダブルでお願いします」


「へ、へい」


「ハイボール、ダブルね」


マヤの飲む速さに、親父ですら少し驚いていた。


「へい、お待ち!」


「ハイボールのダブル!」


「それと、唐揚げ!」


(なんだこれ……)


ユウトは、自分のグラスと見比べる。


量は同じだ。


だが。


明らかに色が濃い。


「ダブルって……」


「ウイスキーが2倍って意味ですよ」


マヤは、当然のように答える。


「これなら、ゆっくり味わえます」


「ハ、ハハハ……」


「そうなんですね……」


あまりの光景に、ユウトは動揺していた。


「か、唐揚げおいしそうですね!」


なんとかハイボールのペースを落とそうと。


ユウトは、唐揚げにすべてを賭けた。


「そうですね!」


マヤは、唐揚げを一口食べる。


しかし。


グラスからは、手を離さない。


そして。


すかさずハイボールを流し込んだ。


ゴクッ。ゴクッ。ゴクッ。


「っはぁー!」


「あぁー、うめっ」


「え……」


「あ、いえ」


マヤは慌てて姿勢を正す。


「美味しいです!」


「ユウトくんも、ぜひ!」


「いただきます」


ユウトは、マヤの真似をして、グラスを持ったまま唐揚げを一口食べた。


カリカリの衣。


舌の上に流れ込む肉汁。


「うまっ!!」


そして、ハイボールを流し込む。


「……」


「すごい……」


口の中が、無に帰る。


もう一口、唐揚げを食べる。


「うまっ!!」


まるで、最初の一口と同じような味わいだった。


「これがハイボールなんですね!!」


ユウトは少し興奮していた。


「そう!それな!」


マヤが勢いよく頷く。


「……え?」


「あ、いえ」


マヤは咳払いする。


「ずっと一口目みたいに食べられちゃうんですよね」


そして。


ゴクゴクと。


いや。


グビグビと。


ハイボールを飲み進める。


「すいませーん!」


「ハイボール、ダブルおかわりー!」


「そんなに飲んで大丈夫ですか?」


「あ、あまりにも美味しくって!」


マヤは笑顔でごまかした。


そして。


────────


いったい何杯飲んだだろう。


もう、数える気すら起きなかった。


「おい、おめー飲んでんのか?」


「飲んでますよ……」


「あんま飲みすぎんじゃねえぞ」


「どっちだよ!」


ユウトは、半ば反射でツッコんだ。


「親父さーん」


マヤが手を上げる。


「柿バターくださーい」


「お、お姉さん」


店主が苦笑いを浮かべる。


「悪いけど、ラストオーダーは終わっててね……」


「あ?」


ぼんやりとした目で。


マヤが、店主を見た。


その瞬間。


ユウトは、まずいと思った。


だが。


次にマヤの口から出たのは、怒声ではなかった。


「申し訳ない!」


マヤは勢いよく頭を下げた。


「あぁ、まだ閉店時間ではないから大丈夫だよ」


「いやいや」


マヤは、ぶんぶんと手を振る。


「遅くまで邪魔しちゃ悪りぃよ」


(なんだ、この人は……)


「ほら!」


マヤはユウトへ向き直る。


「お店の方に迷惑かけちゃダメだろうが!」


「え……俺!?」


ユウトは思わず自分を指差した。


「当たり前だろうが!」


「す、すいません……」


なぜか怒られたユウト。


マヤと一緒に会計を済ませ、店を出る。


「親父さーん、ご馳走様!」


「美味かったです!」


なぜか、こういうところはちゃんとしている。


夜風が、ほんの少しだけ火照った空気を冷ました。


「ほら!」


マヤが、ふらりとしながらも前を指差す。


「帰るぞ! ユウト!!」


「……」


ユウトは固まった。


「“くん”は!?」


「ユウト!!」


「は、はい」


「ありがと!」


ニコっと笑顔を向けるマヤ。


何に対してのお礼だったのか。


ユウトには、よく分からない。


けれど。


マヤの笑顔を見て、それ以上の言葉は必要なかった。

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