第12話:天才科学者
店に戻ると今までの騒ぎが嘘のように、穏やかな空気だった。
席に着く。
途中だった料理は、少し冷めていた。
箸を取る。
一口。
(……やっぱうまい)
「どうした兄ちゃん、考え事か?」
ロイドが笑いながら言う。
「いや……さっきの」
「ああ、魔物な」
軽い。
まるで世間話だ。
「よく出るんですか?」
「たまにだな」
ロイドは料理を口に運ぶ。
「まあ、見ての通りだ」
それだけだった。
(え?説明終わりかよ)
思わずそう思う。
だが、それ以上は特に気にしていない様子だった。
(……深く考えても仕方ないか)
この街では、あれが普通らしい。
少しの沈黙。
食事の音だけが続く。
ふと、ロイドが口を開いた。
「まあでも、ここまで楽になったのは最近だけどな」
「最近?」
「ああ」
ロイドは箸を止めずに続ける。
「5年前だ」
(5年前……?)
「急に現れたんだよ」
さらっと言う。
「とんでもねえ科学者がな」
ユウトの手が止まる。
「科学者……」
「そいつが全部ひっくり返した」
ロイドは軽く笑う。
「魔物も、街も、生活もな」
(そんなことあるか……?)
だが、目の前の光景がそれを否定できない。
「名前は?」
思わず聞く。
ロイドは少しだけ考えるようにしてから答えた。
「確か――シオリ・サトウ、だったか」
「え?」
箸が地面に転がる。
その瞬間、俺の中で時が止まった。




