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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第107話:働く理由

二時間後。


ようやく、ユウトの順番が来た。


「ユウト様ですね」


「はい……」


受付の職員が、昨日の書類を確認する。


そして、金額が告げられた。


「本日のお支払い額」


「5,315,000円になります」


「……はい」


ユウトは、左右のポケットに手を入れた。


片方のポケットから札束。


もう片方のポケットからも札束。


それを受付台の上に置く。


「お願いします」


「確認いたします」


職員が、慣れた手つきで金を数え始める。


束を確認し。


金額を照合し。


記録をつける。


「……」


ユウトは、その様子をぼんやり眺めていた。


ただ支払いをするためだけに、二時間並んだ。


しかも、その間ずっと警戒していた。


右を見る。


左を見る。


ポケットを押さえる。


後ろを見る。


前を見る。


またポケットを押さえる。


そんなことを繰り返していたせいで、精神的にかなり消耗していた。


「確認できました」


「こちらで支払い完了となります」


「……ありがとうございます」


ユウトは書類を受け取り、受付から離れた。


そして。


「はぁ……」


大きめのため息をついた。


(これが毎月あるのか……)


考えただけで、体が重くなる。


(疲れた……)


ユウトは肩を落としながら、ギルドの中を見渡した。


だが、疲れているのは自分だけではないようだった。


商人はもちろんのこと。


ギルドの職員たちも、疲弊していた。


受付の女性。


書類を確認する職員。


金額を数える職員。


奥で記録をまとめている職員。


全員が、明らかに疲れ切っている。


それでも、誰も手を止めない。


淡々と。


黙々と。


次の商人を呼び。


書類を受け取り。


金を確認し。


記録をつける。


「次の方、どうぞ」


声に覇気はない。


だが、止まることもない。


ユウトは、それを見て少し黙った。


文句を言っている商人は見当たらない。


不満はあるだろう。


面倒だと思っているだろう。


だが、誰一人として責めない。


みんな分かっているからだ。


ギルド側も大変なのだと。


職員たちも、同じように疲れているのだと。


「……」


(働くって大変だな……)


ユウトは、しみじみと思った。


自分は働きたくない。


できれば何もしたくない。


だが、目の前の職員たちは、確かに働いている。


文句を言われても。


行列をさばいても。


金を数え続けても。


働いている。


「……すごいな」


小さく呟く。


ふと、別の疑問が浮かんだ。


(そう言えば……)


(ギルドが集めたお金って、どこに行ってるんだ?)


職員の給料。


建物の維持費。


書類管理。


人件費。


それは分かる。


だが、これだけの商人から毎月利益の一割を集めている。


普通に考えれば、かなりの額になるはずだ。


ウラジオ商会やレグナス商会のような大商会もいる。


中小の店もある。


屋台もある。


商人登録している者全員が対象なら、相当な金が動いているはずだった。


だが――


ユウトは、ギルド内を見回す。


古びた受付台。


大量の紙。


疲れた職員。


限界に近い人員。


お世辞にも、潤っているようには見えない。


(前にケイトさんが、人件費削減とか言ってたしな……)


考えてもしょうがない。


ここにいても邪魔になるだけだ。


「帰るか……」


ユウトは商業ギルドを出た。


外に出ると、オレンジ色の光が街を染めていた。


ビルの隙間から、太陽がゆっくりと沈んでいく。


一日の終わり。


本来なら、働く者たちも家に帰り、休む時間なのだろう。


だが――


背後では、まだ多くの職員が働いている。


商人たちも、まだ列に並んでいる。


その時-


「太陽でさえ休むというのに……」


「人間は、まだ働くのですね」


「……」


ユウトは足を止めた。


振り返る。


そこには、昨日の長髪の男がいた。


薄く笑っているようにも見える。


だが、その目は笑っていなかった。


「……人は、働かないと生きていけないからじゃないですか?」


ユウトが答えると、男は小さく首を傾げた。


「生きるため、ですか……」


男は、沈みかけた太陽を見上げる。


「虫も餌を求めて動く」


「魔物も獲物を探す」


「食べるために動く」


「生きるために働く」


「……」


「ですが、虫も魔物も、疲れれば休む」


男の視線が、ゆっくりとギルドへ向いた。


「人間は違う」


「より良い暮らしを求める」


ユウトは、何も言えなかった。


「他人より豊かであろうとする」


「誰かに認められようとする」


「誰かを見返そうとする」


「……」


「いつの間にか、人間は……」


「生きるため以外にも、働く理由を作ってしまった」


男の声は静かだった。


責めているようで。


憐れんでいるようでもあった。


「だから……」


「疲れても頑張る」


「苦しくても休めない」


「人の欲とは、本当に愚かなものです」


「……」


言っていることは、分からなくもない。


むしろ。


分かってしまう部分がある。


働きたくない。


休みたい。


楽をしたい。


それでも、人は働いている。


何かを得るために。


何かを守るために。


何かを諦めないために。


「君もそうでしょう?」


男は、静かにユウトを見た。


「創造のスキルを持ち、食事には困らないのに働く」


「え?」


ユウトの体が、ぴたりと固まった。


(なんで……)


(なんで俺が創造スキルを持ってる事を……)


背中に、冷たいものが走る。


男は、変わらず穏やかに笑っていた。


だが、その笑みが。


今は、ひどく不気味に見えた。

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