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来訪者()

「お浄様。お浄様の知り合い……を名乗る不審者がいらしていますがどうされますか?」

「……特徴は?」


「ええ、とねえー。」

「小さくてー」

「幸薄そうでー」

「頭が弱そうなー」

「女の子ー」

「「ねー!」」


 そうキャラキャラと笑って楽しそうにしているのは靴の付喪神である双子、ソウとホウである。

 靴が子ども用だったことから子どもとしての見た目をとっている、らしい。

 その見た目に引っ張られているのか性格も少々……いや、かなり無邪気で残酷な感じに仕上がっている。流石に絹子相手だと素直に謝罪したりもするが……大人だろうと餌食にしてしまうヤバい奴らであるとのもっぱらの評価であった。


「今ねえー吊るしてるのー」

「木の上にー」

「丁度グメルの横に植えてあるやつだよねー」

「そうそう、まだあおーいグメルの横にあるやつだよねー」

「でもでも、下に剣山置いたからきっとグメルも赤くなるよ!」

「そしたら収穫だね。」

「楽しみー。」


「お、おダズゲェえぇっ」

「……至急不審者を確保もとい保護してください。」


 遠くから最近見知った声が聞こえてきた。





「ゔ、ヒック……じ、じぬがどおもっだあああっ」


 そう言いながらも、ちゃっかりとココアを受け取るフィリー。

 その風呂に入ったというのに瞬く間に涙と鼻水と涎で汚れていく顔に若干引きつつも、鈴鹿は徐に口を開いた。


「あ、あの……フィリー……貴方はお一人でここに?」


 だとしたら問題である。なんせ鈴鹿は……


(どうしよう、帰し方分からないんですけど……。)


 そう、帰し方とか全く知らなかった。

 それもそうである、なんせ彼女はあれよあれよという間に神様なんて面倒な役が回ってきてしまった女子高生であり、やっぱりただの女子高生である。

 帰し方?わかるかんなもん、というかポンポンポンポン勝手に建造物が出てきたりする仕組みすらわかってねーのにできるか。そんなことを死んだ魚の様な目で考えていた。

 今までが波乱万丈すぎて、且つ先日までは疑心暗鬼の極限状態で鬱もどきに陥っていたのだ。

 取り敢えず悩みが片付……いてはいないが現状まあいいやと投げても良くなったのでスーパードライなJK、スズカ・アビコが戻ってきた。


「アースレイやニーグメージュとは一緒じゃなかったんですか?」


 その問いかけの裏側に頼むから逸れたとか言ってくれ、頼むから。という切実な感情を隠しながらのそれにフィリーは首を左右に振ることで意思表示をした。

 事実は無情だった。


「ちなみにどうしてお嬢様なんて……は!ま、まさかここが貴方様の実家で!?」

「違います。ただのあだ名です。」


 ちなみにあれからほんの少しだけ距離を縮めるためにと各自あだ名で呼び合うことにした付喪神たち。

 ただしほとんどが時代劇とかでよく見る「お○○さん」とかである。



***



ひそ、ひそひそ……


「……。」


―――ま、ま……


ま……ま、て……


「……。」


―――ええ、ん……


―――ええぇ……ん……


 暗闇の中で聞こえてくる無数の泣き声やら拙い言葉に一切の関心を向けずに、男……死神アースレイはそのまま道なき暗闇を進み続けた。

 と、とんと何かにぶつかった。

 そのほんの少しの衝撃だったにも関わらず僅かに眉を顰めたアースレイだったが、そのまま胸元を漁って、紙巻き煙草を取り出すと、それを一本取りだす……ことなくそのまま箱ごと火をつけた。

 火の勢いが良かったのか、良質の葉っぱだったのか、はたまたはその両方か、定かではないが煙草(箱ごと)についた火はものの見事に燃え盛っている。

 その様は最早松明のソレだ。ごうごうと燃えるそれが怖いのか先程までの煩わしいくらいの音が聞こえなくなった。


「……お前は、此処の核か。」


 問いかけの様でありながらほぼ確定しているような硬い声で問うたアースレイの前に、いつの間にか長髪の幼子が立っていた。

 幼子はこくりと、されどどことなく左右に頸を振ろうとしているような、そんな曖昧な動作で返す。

 下げられた水筒をぎゅうと握った子供に「そうか」とだけ言って、特に怒りもせずにアースレイは子供が喋るのを待った。


「ほんとうは、そこの子たちと一緒。でも僕らはおかあさんに会えたから、だから大丈夫になったんだ。」


 髪の隙間から見える顔は穏やかに笑っていた。

 そのまま大事そうに抱き抱えていた水筒に額をくっ付けてまた穏やかに笑う。

 単純に嬉しい、というよりまるで祈りを捧げるかのようなソレ。

 それが終わるのを、アースレイはじっと見ていた。


「おかあさんはね、連れて行こうとした僕らを、いろいろと足りなさ過ぎた僕らを、心配、してくれたんだ。」


 其の体制をやめることなく、零れ出る言葉は、流れ続ける。


「心配して、泣いてくれて、この水筒だっておかあさんがくれたんだよ。」


宝物なんだとふふふと笑う子供に、その水筒の持ち主がわかるアースレイは目元を緩ませて何処か笑みを滲ませた。


「本当に、本当に大好きなおかあさん。僕たちが箱庭(ここ)にいることだって許してくれた、大切なおかあさん……だから、ねえ、おとうさん。おかあさんを助けて。」


 一体どちらの言葉になのか、僅かに目を見開いたアースレイをそのままに、幼子は訴えかける。


「あのね、さっきおとうさんとすごくピカピカして火傷しそうなおねえさんが来た時に、一緒に良く分からない人たちが無理矢理入ってきたの。なんか見た目と中身が全然違うへんな人たちだった。」


 僕らもおかあさんのところに行きたいけど、僕たちは動けないから……と、それっきり、子供は項垂れてしまった。

 そんな幼子の様子にアースレイはしばし考えた後ニヤリと悪い笑顔を浮かべた。


「一つ、提案があるんだが……。」










「きゃあ!離してっ!!」

「っ!?シルビアから離れろ!!」


 ざくりと斬られた影の様ななにかが「ま……ま……。」という言葉を残して消えていく。


「あ、ありがとうございます。アレイン。私、怖くて……。」

「無事でよかった。君に何かあったら僕は……。」


 そんなことを言って見つめ合う二人。

 ……だったがまた先ほどの影の様な何かが手の様な何かを伸ばしてくる。


「ま……マ“……。」


ザシュッ


「っく……一体なんなんだこれは!!」


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