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1度ある事は

ごめんなさい。

風邪悪化して更新が遅れてしまいました……すみません。

「どうか、君の力を貸してくれないだろうか。」


そう芝居がかった台詞を吐いて、芝居がかった動作で大袈裟に跪いて見せる目の前のキラキラ王子。

それに反してその王子の周囲を囲んでいる数人の女性たちの視線にはあからさまなまでの負の感情が多分に含まれている。


(なにこれ、デジャウって奴かしら?)


いつぞやあった光景の再現の様なそれに、鈴鹿は気が遠くなりそうな思いだった。

現在、鈴鹿の隣にはアースレイの姿はない。

彼は今、定時報告をするために席を外しており鈴鹿が宿での留守番を買って出ていたのだ。

そこに狙ったかのようにやってきたのがこのさっき店の中で盛大にやらかしていた集団である。


「あの、言っている意味がよく……僕はただの旅人でして、決して特別な力などは……。」

「一目見た時からそうだろうと思っていたんだ。この出会いは、運命だろうって……!!」


(いや、人の話聞けよ。)


思わず真顔になってしまった。と同時に最早ハイライトの無くなってしまった目で辺りを見た鈴鹿は更に一言心中で付け加える。

お前言葉のボキャブラリ少ないだろ。というか多分同じような台詞他の子にも言ってるよね?と、なんせ王子の言葉が続くたびにピクリと身体のどこかしらを反応させてこちら、更には仲間内でも牽制するかのような雰囲気が広がっているのだから、そう勘ぐるなと言うほうが無理というものだろう。


(早く帰ってきてアースレイ。)


そして是非ともこの訳わからない集団から自分を掻っ攫ってほしいと切に願った。

一刻も早くそうしてもらわなければ余りの苛立ちやら気持ち悪さやらでどうにかなりそうである。

特に王子、言葉やら仕草もだが顔立ちもどことなくあのいけ好かない勇者の野郎と似ていて不快感が際立っている。そのいけ好かない顔をグシャグシャにしてやりたい。もっと具体的に言えば顔の原型が無くなるまで殴るか首から上の××を××××てその剥き出しになった……とまで考えて思考を中断する。


(マズイ……どんどん思考が人間じゃなくなっていっているような……)


まるで子供が無邪気に虫を嬲り殺す様に(こちらは思い切り悪意と殺意に満ち満ちているが)目の前の関わりの薄い人間を殺す様をあっさりと計画している自分に気付いて無理矢理落ち着かせる。


「あの、本当に何にも出来ないしがない旅人なので申し訳ないのですが……。」

「大丈夫です。彼もこう言っている事ですし……私は構いません。彼の……アレインの言う事に間違いはありませんから。」


周囲の女性の代表の様に前へと出てきた少女がにこりと笑って続ける。

他の女性の中で「しかし、シルビア様……。」などと言う声が聞こえる辺りそれなりの地位か人望のある人物の様だが、そんな人物が声を上げたという事実よりも気になることがあった鈴鹿は改めて王子一行を見回して僅かにだが首を傾げた。


(おかしい……あのお店の中で魔法を打った子がいない……?)


あんなに目立っていたのだ。この煌びやかな集団においても見逃すことなどまず無いだろう。

しかし、確かに少女の姿は確認できなかった。

そうこうしていくうちにドンドン話は鈴鹿抜きで進んで行ったらしく後は承認だけの段階まで来てしまっていたらしかった。


「さあ、一緒に魔王を倒す崇高なる使命の元に戦ってくれないか?」

「よろしく、ええと……なんとお呼びしましょうか。」

「あの……一つ質問宜しいですか?」


意気揚々と尋ねる王子とにこやかに、されど能面のような顔と音声の少女が話す中、鈴鹿はまさかなと最悪の想像をしつつ、まるでフライパンで砂を炒る様な乾いた怒りを己の中に感じながらも、あくまでも一般人らしく恐る恐るといった程で尋ねた。


「あの少し前に見かけた魔法使いみたいな女の子。あの子は……。」


話が終わる前にガンっという音が響く。

向けられた銃口から出る煙と舌打ちからするにやはりというか狙ったんだろなと驚くこともなくただ淡々と鈴鹿は事実を飲み込んだ。


「こ、こらっやめないか、スーメ。」

「まあまあスーメったら。……魔法使いみたいな女の子、きっとフィリーのことね。実は彼女先程とあるお店の中で少し……それから彼女、誰にも言わずに行方を眩ましてしまって……ああ、本当に何処に……。」


そのまま倒れこむ少女をすかさず王子が抱き抱え表情は複雑そうながらも気遣わしげな女性たち。

これが普通の人々にならお涙頂戴な悲劇の一幕に見えただろう。きっと同情だってしてくれたかもしれない。

けれど、相手が悪かった。鈴鹿はこれまでの事を踏まえつつ自身に宿された鏡の力によって一行のそれぞれの経歴と直近の過去と直近の未来を抽出する。


構築されていく文章を見て、この世界の人間を改めて見据える。

その目は恐ろしく冷たい。


(師匠の誘いは断ったけど、私も裁く権利は欲しいところね。)


文章と共に流れ出した動画は丁度先程の飲食店での失敗の断罪が始まっているところだった。


申し訳ありませんと少女……フィリーが土下座の様な体制で頭を下げる。

その先に王子はいない。いるのはリーダー格の少女と取り巻きの女性たちだけだ。

話を聞いているにおそらくではあるが魔法を打つ様に差し向けたのはリーダー格の少女の様で態とらしい溜息と共に失望した、仲間には相応しくない云々とただひたすらに罵倒している。

端々に食事の準備が遅いことやら、人数分の洗濯物の話などが入っているところを見るに多分この少女もプリシラと同じような扱いを受けていたことが簡単に想像は出来た。

そのまま反省するようにと物置に鍵を掛けてそのまま放置し、何食わぬ顔で王子と合流後フィリーが……と泣き崩れるリーダー格の少女……どこにでもこういった手合はいるものの様で、どうやらこの世界は殆ど人間的な進歩がないのかもしれないと冷え切った心内で鈴鹿は呟いた。

ここまでだと王子は騙されているだけなのではとか言われそうだが仮にもパーティーのメンバーが居なくなったと言うのに疑問に思うどころかこれ幸いと言わんばかりに有望そうな女性を探して声を掛けていくという女漁りみたいな事をしていた男の方もどうなのだろうか。


そうして念のためその後のフィリーの未来の様子を確認して、ふっと口角を吊り上げる。


(まずは此処を切り抜けなくちゃな。)


そもそも今は大事な任務の途中である。こんな奴らの相手をしている暇は無いのだ。


「あの。」


そう思って再び声を出そうとした時、ビュッという風切り音と共に王子の頬の肉の一部が抉り取られ、その凶器が向こう側の窓枠へと突き刺さった。


「すまない。遅くなったな。……すぐ片付けるから、安心してくれ。」


そこには薄く笑う、頼れる兄弟子の姿があった。



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