【第十三話】「約束の一週間」
何度エナに電話を掛けても応答がない。送ったメッセージにも反応なし。
(もう約束の一週間だっていうのに……、エナさんに何事もないといいけれど……)
不安は時間とともに大きくなる。
***
夜、ぼんやりと椅子に座り、机に置いたスマホをじっと眺める。
(もしかしたら誰かに攻撃されたとか……、こんな非常事態だし勇者も街の人も変な気を起こしてもおかしくないよね。それに……)
と、そのとき、廊下からドンという物音と騒がしい口論が聞こえた。
「!?」
壁を伝って来た屈折した音は、それが誰の声かネウロに判別させなかった。だが(もしかしたら……!)という気持ちですぐに扉の前へと向かった。
そして勢いよくドアノブを押す。
***
「エナさん!!」
思わず声に出すネウロ。
無事であることが分かり自然と笑みがこぼれた。
だが、状況がややこしいことになっているようだとすぐ気持ちを切り替える。視線の先では城の家来とエナがずいぶんと乱雑な引っ張り合いをしていた。
家来が偽エナのネウロを見て言う。
「エナ様、この偽物が城に堂々とプリンセスのふりをして顔パスで侵入してきました。そして私が尾行し止めに入っていたところです。夜にお騒がせしてすみません」
「え…………」
偽物と思われている本物のエナが怒鳴る。
「離せよ! 痛いっつーの!!」
「いくら周りが騙されても、俺の目はごまかせねーからな! 育ち悪そうな言葉遣いしやがって」
「私は元からこういう言葉遣いだ! この新人家来が!!」
ネウロは一瞬だけ迷うが、すぐに決心する。
(本当のことを言おう……)
そう口を開いたときだった。
パン、と大きな手を叩く音。
それは廊下の奥から響いたもので、三人は一斉にそちらの方向へと顔を向ける。
「あ、エバナ!」とエナ。
エバナは険しい顔のままゆっくりと三人のもとへとやって来る。
「あなたはもう結構です。あとは私がなんとかします」
そう家来に告げる。
「いえ、でもこいつは危険人物で……!」と引き下がる家来。
「私の言うことを聞きなさい」
「……はい」
強い口調のエバナに家来はすぐに折れ、心配そうにその場を立ち去った。
***
そして静まりかえる廊下。
エバナは一つ息を大きく吐き、エナの顔を見て口を開く。
「なんでこんなことをしたのか、ゆっくり話を聞かせてもらいます。いいわね? エナ」
「え……、はい」
今度はネウロの方を向き言う。
「そして、エナの偽物さん」
声を荒げることもなく冷静だった。
「…………はい」
ネウロは少しばつが悪そうに、静かに返事をした。




