激闘
≪王の剣よ、その身を砕き、あらゆる守をも貫きたまえ。 王の盾よ、その身を捧げ、いかなる攻をも防ぎたまえ。矛盾≫
俺の装備に魔力の光が付与された。俺の最強の魔術、≪矛盾≫だ。
どんなオンボロな剣でも貫けぬものがなくなる無属性最強の武器付加魔術、≪矛≫
そして、どんな薄い盾でも防げぬものがなくなる無属性最強の防具付加魔術、≪盾≫の同時発動だ。
矛盾するこれら二つの魔法、どちらか片方の魔力供給が少しでも減り、偏ってしまうと両方の装備が壊れてしまうというかなり扱いにくい技だ。
「こいつを使うのは久し振りだな…………」
「喋ってないで制御に集中!!」
「わかってる……!」
≪火よ、纏え。火刃≫
ダメ押しのラーティアの火属性付加魔術。ラーティアの固有魔力は赤色なので、詠唱が短く、威力も高い。
≪豊穣の祖、大地よ。汝が怒り、今こそ解き放ちたまえ。土磐龍≫
地面がメシメシとうねり、瞬く間に龍の姿に変形した。
「あなた、乗って」
「おう! サンキュー」
龍に乗り、速度を上げ、羊頭の悪魔に迫る。
悪魔は避ける素振りすらみせなかった。
土龍が直撃した。土煙が舞い上がった。
「まさかこれだけでやっつけたりは………できないよな」
煙が晴れ、そこには全くの無傷の悪魔が立っていた。
「うおぉぉりゃぁあ!!」
近接攻撃に切り替える。ラーティアが時に遠距離から魔力弾を、時に束縛術を、そして時に保護魔術をかけて援護する。
ヒットアンドアウェイで攻める。一切り入れれば、即距離を取る。ヤバイと思えば盾で受け流し。その繰り返しでジワジワと敵の体力を減らす。
「さがって!!!<唸れ 炎龍≫」
ゴーゴーと猛々しい音をたて、火炎の龍が発現された。全てを燃やし尽くさんばかりにメラメラ燃えている赤き龍。ラーティア最強の火属性魔法。さすがにこれを喰らえば一溜まりもないだろう。俺は大きく跳び上がり、その場から距離をとる。
羊頭の悪魔は炎の怒りに呑まれた。巨大な火柱があがる。
爆音を上げながらうねり狂う赤い龍。周りの土地は一面赤景色。
「さすがにやったか……?」
「これで耐えたら褒めてあげるわ」
非常にいやな予感がする。
「念のため聞くが、あと何発それを魔力代替で撃てる?」
「1が限界……」
「準備しておけ!」
「う、うん!」
しばらくして煙が晴れた。
結論から言うと悪魔は立っていた。それも無傷で。
「ちっ、やはり斧を盾にして直撃を防いでいたか!!!」
確かに炎龍の際に生じる火柱は壮大だ。だが炎龍の本質はその顎にある。これの直撃さえ防げば、あとはたいした威力にはならない。こいつクラスの硬さなら余裕で防げるだろう……
「厄介な斧だな……あれがある限りでかいのは当てられそうにないか。」
こうなればやけだ。アレをやるか……!
「…ふぅ」
装備にかかってる全付加魔法を解いた。
「俺が合図したら炎龍を撃て。≪駆けろ 韋駄天≫」
代わりに身体強化魔法、韋駄天をかける。スピードを大幅に上げる魔法だ。これでやつの懐に入る
やつは斧を大きく振りかぶり、振り下ろした。
俺はそれを華麗によけ、その斧に盾をぶつけた。
「≪矛盾・改≫」
俺の盾とやつの斧が共に砕け散る。実は矛盾の本質は武器破壊にある。最強の鉾と最強の盾、共にぶつければ両者が共に砕け散る。当たり前のことだ。
「今だ! 撃て!!」
「≪炎龍≫」
2度目の憤怒が悪魔を包み込む。
「はぁ、はぁ…………魔力枯渇だ……はぁ」
「はぁ……私もです……」
紅蓮の怒りが静まる。そこには全身火傷だらけの爛れた悪魔が立っていた。
「嘘だろ!!!?まだ立ってやがるぜ!!!!」
「グヴォォォォォォォオ!!!!!」
鼓膜が破れそうな雄叫び。圧に押しつぶされそうだ。
「どんどん魔力が増えていく……なんなの一体!!!?」
俺もラーティアもパニック状態に陥った。ここにきてまだ強くなるなんて聞いてねぇぜ!
悪魔の傷口から煙が沸き上がっている。
「それになんか傷も治ってねぇか?」
「そうですね……終わり、ですわ……」
次の瞬間、悪魔が目の前に現れた。瞬間移動したのだろう。今までのが舐めプだったのか、威圧が全然違う。確実に怒り狂っている。
羊の化け物が右腕を大きく振り上げる。俺たちは死を覚悟した。
「どうやらギリ間に合ったらしいのぅ」
その右腕が俺たちに届くことはなかった。
翌昼更新です!
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