羊頭の悪魔
「ほぼ古代魔人の仕業に決定だな」
スヤスヤ眠る猫耳っ子の頭を撫でながら俺はタマキと話をしていた。
「えぇ、一先ず坊ちゃんはお逃げください。私は1度街に様子を見に行ってきます。」
「あぁ、この娘と一緒に安全だと思う場所まで逃げるよ」
「あれ?随分と素直ですね?気持ち悪いです」
「ひでぇな! どうせついて行くと言っても反対するんだろ?言うだけ無意味だ。それにまずはこの娘の安全確保が最優先だ。気絶状態で置いていったとなると魔物に襲われるかもしれないしな」
「いろいろとお考えでいらっしゃったのですね……わかりました。では行ってきます」
「おう。くれぐれも気をつけて」
「お気遣い、痛み入ります」
安全な場所って具体的にはどこだ?
それに俺だってまだ8歳だ。この女の子を担いで走れるほどの力はない。選択をミスったな。
「何かお困りのようじゃのう」
「えぇ、そうで………ッ!!!?」
全く気配を感じなかった。いや、今この老人はどの方角から来たんだ?
「さてのぅ、どこから来たのか忘れたわい。歳じゃからのぉ」
「あなたは何者ですか!?」
「ふむ、見た通りのただの老人じゃ」
「い、いや只者じゃないでしょ!! 」
「そんなことより膨大な魔力を感じたのじゃが、お主、心当たりはないか?」
「はっ!!! 今古代魔人が街に!! 助けてください!!!」
見た目はどこにでもいそうなおじさん。杖無しでは立っていることすらままならない。普通ならこんな老人に助けを請うのは間違いだ。老人なら助けられる側だからな。
しかしこの人は違う。覇気、というか諸々が一般人とは別格だ。
「古代魔人……か。奴らのよりもずっと強く、しかし"存在"が曖昧な感じがしたのじゃが…………まぁ、どちらにせよ街へ急ぐに越したことはないのぅ。お主、案内してくれ」
「案内したいのは山々なのですが、この娘の安全確保を優先しないといけないので……」
「≪次元≫」
一瞬にして猫耳っ子が消えた……
「仮想空間へ飛ばしただけじゃ。これで安心じゃろう」
「わ、わかりました。こちらです」
味方なのは確かだし、俺も街に行きたかったので提案に乗ることにした。
一方街では
「シャナル様!! 何者かがこちらに攻め入って来ております!! 相当な手練れかと……!!」
「わかっている。おそらく古代魔人だろう。住民に避難勧告を今すぐにしろ! 足止めは俺とラーティアがする」
「!!! シャナル様御夫妻が出られるのであればもう安心だ!!」
「気を抜くな!! 相手は古代魔人だ! 俺たちでも持って数十分だ。それまでに1人でも多く避難を急げ!」
「は、はぁ!!!」
あぁ、はっきりいって絶望的だ。俺やラーティアだって人間という分類ならかなり強い方だとは自負している。が、相手は魔人だ。常識なんて通じる相手ではない。死ぬ気で行かなければ10分も持たないかもしれん。
「ラーティア!」
「えぇ、とっくに準備はできていますよ。ラスタがどうなったかわからないのが気がかりですが、タマキがついているから大丈夫でしょう」
「ふっ、甘いな! タマキはバカだから恐らく戻ってくるぞ!はははは」
「そ、そうでしたわね! あの子、バカでしたものね!」
俺なりの場を和ませるジョークのつもりだった。ラーティアもそれを察したのだろう。そう、ジョークのつもりだったんだ……
「シャナル様! ラーティア様! ただいま戻りました!!!」
「「バカヤロウ!!!!」」
「も、も、も、申し訳ございません!! いかがしましたでしょうか!!!?」
「ラスタはどうしたんだ!?」
「も、申し訳ございません!! あ、安全な場所に行くように促した後、置いて来ました……」
「はぁ、もういい。お前は住民の護衛に当たれ。今度は失敗するなよ?」
「は、はっ!!!」
怒りたい気分だったが、今ここで怒って士気を下げるのも逆効果だろう。なんとしてもここで古代魔人を仕留める!! それで全てが解決するんだ!
「きたわね……」
「本気で行くぞ!!」
「えぇ!!」
2m半はあるのではないだろうか巨体に、これまた子供一人分くらいはある巨大な斧を片手で持っていた。間違いない、こいつが魔人だ。
身体に刻まれた生々しい傷跡が幾つもの戦場を生き抜いたことを物語っている。2本の彎曲した角、不気味に鈍く、紅く光る瞳、羊のような顔、まさに悪魔であった。
「こいつはヤベェかもな……はははは」
もはや渇いた笑いしか出てこない。
「あなた、ここにきて漏らしたりしないでよね?」
「善処はしてみるつもりだ」
「じゃあ、おっ始めるか!!!」
テンポが悪い……
次は晩に投稿です




