急展開
その後、なんとかランドルを2羽捕まえた。
「さすがです。始めてでこれは優秀でございます。」
「よせよ照れるだろ」
「坊ちゃんの無属性魔法"素手"は素晴らしいものでした。魔力を全く感じられませんでしたもの」
「今度教えてやろうか?」
「謹んでお断りします」
ちぇっ、可愛くないやつめ。
「ん?」
「どうかなさいましたか?」
「いや、あそこに誰か倒れてないか?」
「本当ですね。少し見てきます。」
タマキが様子を見に行った。タマキに任せておけば万が一にも安心だが、俺も一応回復薬をカバンから取り出し、倒れてる人のもとへ急いだ。
ひどい有様だった。斧の、それもかなりの大型のもので背中を抉られていた。おそらく逃げる途中で何者かにやられたのだろう。俺はこみ上げてくる酸味を飲み込み、なんとか冷静になろうと努めた。人の死体などと無縁な日本人だったので、落ち着くまでに時間がかかった。パニックになり倒れかけたりもした。あの時、タマキがいなければきっと精神的に病んでいただろう。
「半魔人……ですね」
「人間にやられたのか」
「わかりませんがその線が濃いかと……」
半魔人は確かに人間と友好関係を結んでいる。がしかし、それをよしとしない連中は多い。人間至高主義者どもである。
奴らは人間こそ世界を支配するに相応しいと考え、半魔人を徹底的に排除しようとする。その行き過ぎた結果だろう。
俺は例えようのない苛立ちを感じた。
「しかし、一つだけ疑問があります」
「なんだ?」
「この斧、大きすぎませんか?」
確かにそうだな。ざっと推測して8歳の俺と同じくらいの大きさはあるぞ。
「用心棒でも雇ったんじゃないのか?」
「このクラスの斧を振り回すことができるのは大賢者様クラスです。半魔人1人程度に用いるのはおかしいかと……」
「確かにな。それもここまで大きな斧を持って移動するとなると暗殺には向かない」
斧だけを転移させる、ということも可能ではあるが、半魔人1人にそれほどの実力者がわざわざそこまでする必要性は皆無だ。
「最も考えたくない仮説があります……」
「言ってみろ」
タマキは凄くいいづらそうに言葉を発した。
「古代魔人の仕業です」
「? それも人間と同じ理由で否定できないのか?」
「いえ、古代魔人は半魔人を裏切り者として認識し、見つけ次第殺す、という意思があります。それに古代魔人ならこのくらいの斧を常時軽々と持ち運べるし、理由としては充分かと」
「そんなに強いのか?古代魔人って」
「以前にも説明しましたが、たった1人で小国を滅ぼす力を持っています。人間側で唯一勝てるとしたら大賢者様くらいでしょう……」
「仮にそうだとしよう。そんなのがこの辺にいる、ということはここも今危ないのじゃないのか?」
「はい……申し上げにくいのですが、かなり危険でございます………」
「今街はどうなって「っひぐ」………今何か聞こえなかったか?」
「えぇ、、、子供の泣き声が聞こえました……私が見てくるのでどうか坊ちゃんは隠れていてください!!」
「いや、2人で行動した方がまだ安全だ。俺もいく」
「わかりました。ですが少しでも危険だと感じた場合、すぐに避難の支持を出しますので、その時にはお逃げください。」
「ああ」
「………ぅぐっ……ひっ……………ぐすっ……」
一目見て、こいつは犯人じゃないとわかった。猫耳、猫尻尾をはやした女の子が、小さく縮こまって木の影に怯えて隠れていた。とても斧を振り回せそうな見た目じゃない。
「おい」
「ひぃっっっっ!!!」
逃げようとしたので"素手"で捕まえる。こんな時に役に立つとは……
「や、や、やめてくだだださい!!!! 殺さない、っぐごろざないで、、、!!!」
「大丈夫だ!! 俺は人間だ!! 助けに来た」
「いやだごないで!!」
猫耳つ子が魔力弾を放ってきた。タマキが一瞬光ったと思うと、魔力弾は胡散した。タマキが魔法を使ったのだろう。
「……喚くな殺すぞ」
タマキの一喝により全てが静寂と化した。俺も、猫耳っ子も漏らした。
「すみません。あぁするしか方法はなかったので……」
「いや、いい。俺もそれが正解だと思った……」
でもね、限度があると思うんですよ! 見た目は8歳だからまだお漏らしは大丈夫だと思われるかもしれません。でもね僕、精神的には大人なんですよ! 吊りたい。
「落ち着いたか?」
「はい………」
「何があったか説明してくれるな?」
「私、日課の山菜積みをしていたんです………すると悲鳴が聴こえたので怖かったけど行ってみたんです。そしたら、そしたら……ぅぐっひ、ひぃぃいぃいいいいぃ」
またパニックに陥ったか……
タマキがまた威圧をしようとする。
「タマキ、ヤメろ」
「ぐっ……ですがこのままじゃ話が……」
「話よりもまずこの娘の精神状態の回復が先だろ。トラウマを増やしてどうする」
「す、すみません……」
俺は怯えて逃げ出そうとする猫耳っ子のすぐそばまできた。目を見るだけでもその感情が恐怖に支配されてることが丸わかりだった。
「もう大丈夫だ。安心しろ」
俺は猫耳っ子を強く抱きしめた。両親を亡くし、辛かったあの頃、こうしてもらえていれば俺も随分楽になっただろうに……
支配している恐怖という感情に立ち向かう勇気がないなら俺が代わりに打ち勝ってやる。だから俺に頼れ!
「っぐぐぐぅぅぁぁあぁぁぁあ!!!!!」
猫耳っ子が無差別に魔力を打ち始めた。もちろんゼロ距離で俺に直撃した。痛い。だが、この子が今感じてる痛みに比べればちっぽけなものだ。これくらい耐えてやるよ!
「っぐ……ひぇぐっ…………」
数分してだんだん疲れてきたのか魔力の暴走も止み、猫耳っ子は気絶した。
「タマキ、お前もよく耐えたな。偉いぞ」
「いえ、ご命令でしたので。それより坊ちゃん、お怪我の治療をするので回復薬をお貸しください」
「俺はいいからこいつの怪我を治してやれ。」
「ですが坊ちゃん!!! いえ、わかりました。それでは回復します……」
一先ず、これで大丈夫だろう……安心するとなんだか俺も眠たくなってきたな。少し寝るか………
俺の意識はプツンと途絶えた
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