第2章 - 選ばれし魂
「ちょっと!」
ティンケの声が宇宙を切り裂いた。明るく、憤然と、そして星々が音もなく燃え尽きる場所にはあまりにも生き生きとしすぎていた。
彼女の手はまだ、目の前に浮かぶ小さな地球のようなきらめく球体の中に突っ込まれたままだった。青い光が指の間を這っていた。雲が手首のまわりで渦を巻いていた。まるで単なる映像に手を入れたのではなく、空、海、都市、そして命そのものを直接貫いたかのように。
それから彼女は勢いよく手を引き抜いた。
指の間にきらめく何かがぶら下がっていた。青白い火花にすぎなかった。震える光の残滓。だがティンケはもはやそれにまったく注意を払っていなかった。虚空を睨みつけていた。まるで重要な行為の最中に誰かに邪魔されたかのように。
「オーケー」と彼女は間延びした声で言った。
憤然とした目つきは二呼吸と持たなかった。
そしてまた、にやりと笑った。
「二体の竜についてもっと知りたいの?」
眉を上げた。その好奇心はまったく場違いであると同時に、まさに彼女が期待していたものであるかのように。背後では銀河が悠然と回転していた。星々が果てしない遠方できらめいていた。彗星が音もなく、明るく通り過ぎていく。ティンケは微笑みを浮かべて立っていた。まるで無限の宇宙のただなかではなく、お茶とお菓子を前にして物語を語っているかのように。
「あなたたちの任務じゃないのに」と彼女は空いた手を振った。「さっき言ったでしょう、あちらには有望な人がいて、その人が同時に姉も解放してくれることを期待しているって」
少し間を置いた。
にやりとした笑みがさらに広がった。
「でもまあいいわ。好奇心は、人間の悪徳の中ではまだましなほうだもの」
指の間の小さなきらめきに目を落とした。
火花が弱々しく揺れた。
ティンケは瞬きした。
それからその周りに手を緩く閉じた。後で必要になるかもしれない思考をそっと留めておくように。もう片方の腕を持ち上げた。
人差し指で宙に小さな円を描いた。
青みがかった輝きが指先に集まった。最初は霧のようだった。やがて液体の星の光のようになった。指が動くたびに、それは濃くなっていった。円が大きくなり、きらめく円盤となり、その中で色が燃え始めた。
金色。
深い青。
白い炎。
光が広がり、ティンケの前に巨大な姿が現れた。肉体の身体ではなかった。正確には。むしろ記憶と力と神聖な知識から形作られた映像だった。それでもあまりにも鮮明で、あまりにも実在感があり、空間そのものがその前から退いているように見えた。
竜が現れた。
金色の鱗が長い首と広い胸を覆っていた。一枚一枚が精巧に鍛えられた板のようだった。細やかな線が走り、温かい光の中で脈打っていた。頭部には鋭く優雅な角が冠のようにそびえていた。陽光をそのまま形にしたかのように。その間に光の輪が浮かんでいた。整然と完璧に。時よりも古い法則に従うかのように。
目は青く輝いていた。
冷たくはない。柔らかくもない。澄み、鋭く、限りなく静かだった。探すのではなく、秩序立てる目。あらゆる混沌がその前で己を弁明せねばならないような目。
翼が広がった。繊細でありながら壮大。金色の線が精巧なルーンのように、あるべき場所にある星々の軌道のように走っていた。この存在には偶然の要素が何ひとつなかった。すべての突起、すべての鱗、光のすべての動きがひとつの文様に従っていた。
ティンケはその幻影の横に立ち、首をかしげた。
「では」と彼女は言った。「まずはチェルタル、秩序の原初の力」
その名が宇宙を滑った。
チェルタル。
星々はちらつかなかった。むしろ一瞬、より確固として、より整然として見えた。まるで自分たちの位置を改めて確認されたかのように。ティンケの周囲の細い運命の糸さえも、より滑らかに張ったように見えた。
ティンケが指を鳴らした。
金色の竜の映像は残ったが、その隣で二つ目の影が凝縮し始めた。
今度は温かい光は来なかった。
青みがかったきらめきの中から、何か暗いものが噴き出した。石。破片。亀裂。闇と緑の輝きの渦から、ひとつの姿が剥がれ出てきた。チェルタルが天上の秩序のように見えたのに対し、この存在は翼を持った裂け目のような深淵だった。
二体目の竜は暗く険しい鱗でできていた。まるで岩と夜と砕けた星を無理やりひとつの身体に押し固めたかのように。装甲板は滑らかに重なってはおらず、角張って突き出していた。棘と刺が首、肩、背中から生えていた。どれもが鋭く、不規則だった。鱗の亀裂の間から緑の光が流れていた。穏やかには脈打たなかった。痙攣していた。ちらついていた。毒の炎のように闇を喰らっていた。
胸の中では緑の光の輪が渦巻いていた。
ゆっくり回り、速くなり、またゆっくりになる。リズムもなく、認識できる法則もなく。目は同じ色に燃えていた。渦巻く野性の輝きの核。秩序立てる視線ではなかった。すべてを分解したがる視線だった。その後に何が起こるか見るためだけに。
翼が背景に広がっていた。暗く、引き裂かれ、壮大に。周囲には石と星屑の破片が漂っていた。まるでこの存在のただの映像でさえ、環境を傷つけずには存在できないかのように。
ティンケは大げさに腕を広げた。
「そしてレルタル、混沌の原初の力」
この名が響いたとき、運命の糸が震えた。
すべてではない。いくつかだけ。特に細い、もともと危うく張りつめていたものたちが。まるで見えない風に触れられたかのように震えた。
ティンケがちらりとそちらを見た。
「落ち着いて」と彼女は素っ気なく言った。「ただの説明よ」
それから二体の竜の映像に向き直った。
チェルタルとレルタルが向かい合っていた。本当に生きているわけではないが、あまりにも実在感がありすぎた。金と闇。青い光と緑の炎。秩序と混沌。共存するために創られたのではない二つの原初の力。それでいて同じ源から生まれた。
「二体ともマヴィの子供」とティンケは言った。「創造の女神の」
マヴィの名が出たとき、空間が変化した。
大きくはない。新たな映像は現れず、姿も現れず、声も応えなかった。だが宇宙の深みのどこかで、光がより柔らかくなった。銀河が一瞬、冷たく遠い構造物ではなく、かつて優しい手で形作られたもののように見えた。
ティンケの微笑みは残っていたが、薄くなった。
「さて」と彼女は言い、腕を組んだ。「二体は母の愛をめぐって争った」
二体の竜の映像は動かなかったが、その間の空間が張りつめた。
無音の圧力が生まれた。金色の線がちらついた。緑の光が暗い鱗の上を這った。チェルタルの映像は静かで、完璧で、容赦なく見えた。レルタルの映像は飢え、砕け、予測不能に見えた。
「私たちは皆で協力して止めようとした」とティンケは続けた。「でも宇宙そのものを壊さずにできることは、あまりなかった」
声はまだ軽かった。軽すぎるかもしれなかった。だが言葉は重かった。
竜の映像の向こうで遠い星々が瞬いた。いくつかは再び消えた。まるであの戦いの記憶が、この映像の中にさえ痕跡を残しているかのように。あの戦いは爪と鱗のぶつかり合いだけではなかった。ただの炎、咆哮、砕かれた身体ではなかった。原初の力が戦うとき、原理が戦う。秩序対混沌。法則対破壊。形対崩壊。
そしてその間に、存在するすべてのものが横たわっていた。
ティンケは片手を上げた。まるで二つの映像を引き離そうとするかのように。
「そこでマヴィは、自らを犠牲にすることを決めた」
にやりとした笑みは完全には消えなかったが、引いていった。チェルタルとレルタルに目を向け、一瞬、彼女は運命を弄ぶ混沌の女神ではなく、語りたくない物語を語る姉妹のように見えた。
「マヴィは自らの力で、二体を永遠の眠りにつかせた」
映像が変わった。
金色の光と緑の輝きが弱まった。消えたのではない。決してそうではない。ただ抑えられた。二体の竜の周囲にきらめきが現れた。明るく柔らかでありながら、同時に揺るぎない。創造そのものの薄衣のような。暴れる二人の子供を抱きとめる手のような。傷つけるためではなく、他のすべてを守るための。
ティンケは手を下ろした。
「何十億年もの間に、二体の周りに惑星が形成された。そしてマヴィ自身の周りにも」
竜たちの前で塵が渦を巻き始めた。
闇から、星の残骸から、燻る破片と宇宙の霧から現れた。最初はただの薄い輪だった。やがて層になった。岩石が集まった。熱が燃え上がった。圧力が物質を押し固めた。暗い塊が育ち、裂け、形を変えた。未完成の惑星が生まれた。荒々しく、野性的で、光の脈に貫かれて。
ティンケは首をかしげながらそれを見つめた。
「彼女の身体はゆっくりと惑星になった」と彼女はより静かに言った。「そして二体を封印した」
その言葉は劇的な爆発を引き起こさなかった。神聖なファンファーレもなかった。ただ、有限の存在が死ぬようには死なず、世界になった身体の、ゆっくりとした重い想像だけがあった。大地になった。深みになった。殻になった。牢獄になった。
チェルタルはその中で眠っていた。
レルタルはその中で眠っていた。
マヴィは二体の周囲に、中に、上に、下に横たわっていた。
犠牲でできた惑星。
ティンケは唇に指を当てた。
「二体は眠っている。でもその戦いは今でも感じられる。惑星の上で。そしてその中で」
映像の中の未完成の惑星が暗くなった。それから明るくなった。金色の線が片側を走った。真っ直ぐに、明瞭に、ほとんど幾何学的に。緑の亀裂がもう片側を走った。不規則に、荒々しく、鋭く。二つの力は深部でぶつかり、退き、また押し寄せた。勝利はない。安息もない。ただ果てしないせめぎ合いだけ。
「二体とも惑星の支配権を得ようとしている」とティンケは言った。「でも二体の間の均衡が保たれている限り、眠り続ける」
指を一本立てた。
「もしいつか二つの原初の力のどちらかが強くなりすぎたら、目覚める」
ティンケは微笑んだ。
愉快な微笑みではなかった。
「そしておそらく、もう一方と惑星ごと滅ぼすでしょう」
少し間を置いた。
それからウインクした。
「たぶんね」
竜の映像が薄れていった。
チェルタルの金色の秩序がきらめく点に溶けた。レルタルの緑の混沌が暗い火花に砕けた。惑星は塵に崩れ、塵は虚空に飲み込まれた。残ったのは再び宇宙だった。星々。糸。小さなきらめく地球。ティンケ。
そして彼女の手の中の青白い火花。
ティンケは指のほうをちらりと見下ろした。
瞬きした。
「あら」
火花が震えた。
「あなたのこと、すっかり忘れてた」
あまりにもいたずらっぽい物忘れの口調で言った。魂でなかったならば、ほとんど魅力的だったろう。
それから彼女は火花をぽいと宙に放り投げた。
遠くには飛ばなかった。虚空のただなかで止まった。まるで見えない面に受け止められたかのように。そこで漂っていた。青白く、不安定に。光の鼓動ほどの大きさしかなく。
ティンケはそっと手を叩いた。
「さて」と彼女は身を乗り出した。「ヒヒヒ。あなたが誰か私は知っているけど、他の地球の人たちに自己紹介してみたら?」
火花が震えた。
音が生まれた。
最初は細かった。やがて長くなった。高くなった。歪んでいった。音程の狂った星のように宇宙を引き裂いた。
「わたぁぁぁぁしのぉぉぉ名前はぁぁぁぁぁ......」
声が虚空に響き渡った。
ティンケの目が大きく見開かれた。
音が膨れ上がり、見えない壁を引っ掻き、運命の糸を引っ張り、いくつかを激しく振動させた。近くの星々がちらついた。まるで誰かがその現実を揺さぶったかのように。球体の中の地球がわずかに震えた。
ティンケが飛び上がった。
「しまった!」
両手を高く上げ、火花に駆け寄った。
「やらかした!」
そして笑った。
恥じ入ってではない。本当にうろたえてでもない。むしろ危険な曲芸で足を滑らせた人のような笑い方だった。何も決定的に爆発しない限り、なんだか面白いと思っているような。
両手を魂の周囲にかざした。完全には触れずに。手のひらの間に光が集まった。白、黒、青、金色、そしてまた無色に。光は火花を包み、支え、整え、引き離し、組み直した。
甲高い音が途切れた。
静寂が戻った。
そして魂が変形し始めた。
肉のようにではない。霧のようにでもない。むしろ一度にすべてでありたがる記憶のように。小さな身体が現れ、そしてずれた。ひとつの輪郭が二つになった。ティンケの微笑みが固まった。指が止まった。手のひらの間の光が分裂した。
かすかなすすり泣きが聞こえた。
続いてもうひとつ。
ティンケがゆっくりと片眉を上げた。
下を見つめた。
足元の虚空の一角が、律儀に地面のふりをしていた。その上に二人の赤ん坊が横たわっていた。
二人とも泣いていた。
小さな顔が苦痛と困惑にゆがんでいた。小さな手が何もない空間を掴んでいた。この場所には似つかわしくない泣き声に、身体が震えていた。宇宙には。銀河と運命の糸と神の過ちの間には。
ティンケが身をかがめた。
それから身を起こした。
それからまた身をかがめた。
目をこすった。
「二重に見えてる」
赤ん坊たちは泣き続けた。
ティンケは一方からもう一方へと目を移した。翼が不安げにぴくりと動いた。黒い羽が一枚はがれ、ゆっくりと彼女のそばを漂い、どこかに着地する前に消えた。
「ふうん」と彼女は言った。「二人? 不思議ね」
指で頬を軽く叩いた。
赤ん坊たちがぐずっていた。一人が首を動かした。温もりを探すように。もう一人は小さな脚で虚空を蹴っていた。まるでそうすればこの場所から逃れられるとでもいうように。
ティンケが指を鳴らした。
泣き声が変わった。
止まったのではない。だがその下に言葉が形成され始めた。最初はおぼろげに、やがてより明瞭に。まるでティンケが悲しみを取り除いたのではなく、理解できるように言葉だけを整えたかのように。
「ママ......ママ......どこ?」
声は赤ん坊の一人から来た。小さく。高く。震えて。
もう一人の赤ん坊がぴたりと泣き止んだ。
そちらを見つめた。
それから口を開いた。
「しゃべった!」
あまりにも驚いた声だったので、ティンケでさえ一瞬瞬きした。
赤ん坊は自分の声に驚いた。目が大きく、潤み、混乱していた。自分の口を見つめた。まるでそこでたった今、不可能なことが起きたかのように。
隣の赤ん坊が見返した。
一瞬、二人とも静かになった。
それから最初の一人がまた泣き始めた。
さらに大きく。
もう一人もすぐに続いた。
ティンケは二人の上に立ち、宇宙を導くほうが泣いている赤ん坊を二人あやすより簡単だと、たった今気づいたような顔をしていた。
「ふうん......」
二人を見下ろした。
それから地球の球体に目をやった。
それからまた赤ん坊たちに。
眉間にしわが寄った。深くはない。本物の悔恨には足りない。だがティンケにしては、かなり近かった。
「本当はあなたたちのお母さんが欲しかったの」と彼女はゆっくり言った。
今度の言葉には演技がなかった。
球体を見つめた。青い光が瞳に映っていた。
「あの人が死んだとき、妊娠していたなんて知らなかった」
赤ん坊たちにはすべては理解できなかった。おそらく何も理解していなかった。だがその響きは感じ取っていた。虚空を。自分たちを抱いてくれるはずだった腕がないことを。探していた声がないことを。
ティンケがひざまずいた。
ドレスの布が暗い花弁のように周囲に広がった。翼がわずかに下がった。黒と白。まるで赤ん坊たちの周りの空間を小さくしようとするかのように。あまり宇宙的でなく。あまり冷たくなく。
「あなたたちには名前がない」と彼女は言った。
声はより静かになっていた。
「でもあなたたちもまた、死んでいる」
泣き声は止まらなかった。ただ変わった。より無力に。
ティンケが地球のほうを見やった。
「お母さんは交通事故に遭って、湖で溺れた」
言葉が重く横たわった。
映像は現れなかった。水も。車も。衝突も。灰色の空の下の湖も。ティンケはそのどれも見せなかった。だからこそ、冷たい影のようにそこにとどまった。
赤ん坊たちが彼女を見つめた。
それからさらに大きく泣いた。
その声は小さかった。だが宇宙の虚空の中では耐えがたいほど鮮明だった。どの星も、どの彗星も、どの銀河も、この泣き声をかき消すことはできなかった。この空間に属するにはあまりにも小さい。だからこそ、あらゆる宇宙の轟音よりも深く切り込んだ。
ティンケが両手を上げた。
「ほらほらほら......泣かないで!」
赤ん坊たちは泣き続けた。
ティンケは途方に暮れたように一人からもう一人へ目を移した。
だから私には子供がいないのだ。
彼女は立ち止まった。
そもそも子供を持つことは不可能なのだが。
目が一瞬細くなった。自分でもこの考えを予期していなかったかのように。それから首を振った。まるでその考えを髪から振り落とせるかのように。
「えっと......そうね」
少し身を起こしたが、赤ん坊たちの前にしゃがんだままだった。視線が二人の間を行ったり来たりした。それから左の赤ん坊を指差した。
「あなたはレアよ」
左の赤ん坊が鼻をすすった。
名前を理解したかどうかは分からなかった。だがその響きに触れられた。ほんの一瞬、泣き声が小さくなった。まるでその言葉が、それまで何もなかった場所にひとつの居場所を作ったかのように。
ティンケは満足げにうなずいた。
それから右の赤ん坊を見た。
「そしてあなたはバス......」
言葉の途中で止まった。
にやりとした笑みが顔に戻った。
「あ、ごめんなさい。ラースよ」
右の赤ん坊が彼女を見つめた。
「ラース」とティンケは繰り返した。まるでそれですべてが解決したかのように。「うん。ずっといい」
そっと手を一度叩いた。
淡い光が二人の赤ん坊を包んだ。眩しくもなく、きつくもなく。星の光でできた薄い毛布のようなもの。泣き声は完全には止まなかったが、鋭さを失った。レアはまだぐずっていた。ラースは濡れた目でティンケを見上げていた。
女神が立ち上がった。
たちまちその動きは再び大きく、芝居がかったものになった。まるで先ほどの束の間の無力さは偶然でしかなく、今こそ姿勢で覆い隠さねばならないかのように。翼が少し広がった。頭上の光輪がより明るく輝いた。周囲の運命の糸が再びきらめき始めた。
「あなたたちの使命は」と彼女は言った。「ある世界に生まれ変わること」
レアが小さな手を引き寄せた。
ラースが口を開いたが、聞き取れる言葉は出てこなかった。
ティンケは話し続けた。まるでたった今、名もない死んだ二人の赤ん坊を、大人の英雄でさえおそらく圧倒されるであろう任務に放り込んだばかりではないかのように。
「九人の魔王からその世界を解放すること」
指を一本立てた。
「正確には八人の魔王と一人の魔神だけど」
短い沈黙が続いた。
ティンケが首をかしげた。
「でもそれは大した違いじゃない」
その言い方は、実は大いに違うことを示唆していた。ただ彼女にとっては。あるいは少なくとも今は、そうではないだけ。
「姉のシーデには、彼らと戦う暇がないの」
シーデの名が出ると、星の光の中を暗い影がかすめたように見えた。映像はない。姿もない。ただ、あの向こうのどこかに存在し、自らの本質に逆らって働いている何か巨大なものの気配だけ。
ティンケがレアとラースを見下ろした。
赤ん坊たちが見返した。
魔王が何なのか、理解できなかった。本当には。転生が何を意味するのか、別の世界が何なのか、女神が自分たちに何を求めているのか、理解できなかった。分かっていたのは、母がいないこと。この場所が冷たいこと。黒と白の翼を持つ女が、すべてがもう決まったかのように話していること。
そしておそらく、決まっていた。
ティンケは運命の女神なのだから。
「いい?」
レアがぐずった。
ラースが瞬きした。
ティンケが微笑んだ。
「よし!」
手を上げた。
いくつかの運命の糸が彼女のもとに滑ってきた。そのうちの二本はほとんど見えなかった。細く、新しく、あまりにも繊細で星の光の中ではほぼ消えてしまうほど。指の間に漂い、震え、一瞬絡み合い、また離れた。ティンケはそれらを眺めていた。まるでどこかへ放り投げて、道中で「方向」というものの意味を自分で学んでくれることを信じるつもりであるかのように。
そして指を鳴らした。
レアとラースの周りの光が燃え上がった。
熱くはない。痛くもない。だが突然で、完全だった。二人の赤ん坊を包み、周囲の空間を明るいきらめきで満たし、引き離した。互いから引き離したのではなく、この場所から引き出したのだ。小さな身体がぼやけていった。声が消えていった。まずすすり泣きが。それから最後の一息が。それから何もなくなった。
レアが消えた。
ラースが消えた。
二本の細い糸がティンケの手から滑り出し、遠くへ引かれていった。可視の宇宙の外へ。彼女にしか見えない道の中へ。
しばしティンケは立ち尽くしていた。
手はまだ上げたまま。
微笑みが健気に顔に留まっていた。
それからゆっくりと座り込んだ。
あるいは、彼女のそばで地面のふりをしていたものの上に。
虚空のただなかに座った。星々と糸と小さなきらめく地球の間に。ドレスが周囲に広がった。翼がさっきより重く沈んだ。頭上の光輪が一度だけ、ほんの一瞬ちらついた。
「ふぅ......」
頭を後ろに倒し、果てしない星の海を見つめた。
「今度は私がやらかした」
静寂が答えた。
とても多くの静寂が。
ティンケはしばらくそのまま座っていた。やがて口角がひとつ上がった。
「まあいいわ」と彼女はつぶやいた。
運命の糸が一本、指先をかすめた。遠くへ滑っていくのを見送った。
「運命がなんとかしてくれる」
瞬きした。
それから静かに笑った。
「あ。私が運命の女神だった」
笑い声が明るくなった。
「ティヒヒヒ」




