第1章 - すべてのはじまり
「ねえ!」
声は虚無のただなかに響いた。
どこか一つの方向からではない。上からでも、下からでも、前からでも、後ろからでもない。ただそこにあった。まるで誰かが現実の壁を指で弾いたかのように。壁など存在しないことを忘れたまま。
彼女の周囲には、完全な闇が広がっていた。
風はない。地面もない。空もない。土の匂いも、雨の匂いも、煙の匂いもない。自分自身の呼吸すら、居場所を見つけられないようだった。その暗闇はあまりにも深く、光の不在というよりも、何か生きているもの、何か太古のもの、万物の始まりからずっと見つめられることを待ち続けていた何かのように感じられた。
そのとき、微笑みがひらめいた。
それは小さく、明るく、この果てしない闇の中であまりにもはっきりしていた。口角がひとつ、いたずらっぽく、ほとんど生意気に持ち上がる。まるでその微笑みの持ち主が、自分以外の誰にも理解できない冗談を言ったばかりのように。
一瞬にして、背景が変わった。
闇は砕けたのではない。退いたのだ。
星々が燃え上がった。ひとつ、またひとつ。虚無が無数の光点に貫かれるまで。銀、金、青、赤の火花が広がっていく。まるで誰かが一握りの燃える宝石を空に投げたかのように。彗星が長く輝く尾を引いて過ぎていく。隕石が音もなく遠方を駆け抜け、燃え上がり、消え、火と石の欠片として再び現れる。銀河がゆっくりと渦を巻き、壮大で手の届かない、星屑の腕を大きく広げて、太古の存在の翼のように。
そしてそのすべての間に、彼女は座っていた。
黒と白の玉座に座る、ひとりの女。
玉座はどの大地からも生えておらず、どの地面にも立っていなかった。それでいて重く、堅固で、揺るぎないものに見えた。背もたれは高く、その縁は優雅な曲線を描いていた。まるで夜と光を互いに切り込み合わせ、王よりも古い何かのための座を創り出したかのように。黒い面は星の光を飲み込み、白い線はそれを捉えて冷たく返した。
女はその上に座っていた。まるでこの玉座だけでなく、星々の間の静寂さえも自分のものであるかのように。
長い黒髪が柔らかく肩にかかっていた。銀河の光が触れると、いくつかの房がきらめいた。頭上には明るい輪が浮かんでいた。繊細でありながら、無限を背景に不可解なほど鮮明だった。それは装飾品ではなかった。正確には。それはむしろ、周囲の現実に可視であることを強いた印のように見えた。
翼は広げられていた。力強く、対比に満ちて。黒と白が羽の一枚一枚ごとに溶け合い、影と純潔、夜と朝の光が交差していた。ある羽は磨かれた黒曜石のように輝き、また別の羽は月光をそのまま形にしたかのように明るかった。翼は背中に静かに伏せてはいなかった。かすかに動いていた。秋の枯葉のような、そして同時に見えない手がめくる本のページのような、かすかなざわめきとともに。
彼女のドレスは暗く、精巧で、繊細な仕立てだった。黒い布の層が花弁のように重なり合い、星の光の中で銀色にきらめく明るいアクセントが走っていた。それは優雅で、ほとんど王族のようだったが、堅苦しくはなかった。むしろ、玉座に座ることも裸足で宇宙を踊り回ることも、いつでも自由に選べる女神のために作られたもののようだった。
彼女は脚を組んだ。
それから、わずかに首をかしげた。
微笑みが広がった。
「あなたたちが誰で、どこから来たのか、私は知っている」と彼女は始めた。
その声は澄んでいた。大きくはないが、一つひとつの言葉が空間に届いた。まるでそこに距離というものが存在しないかのように。明るい遊び心を帯びていたが、その下にはもっと深いものがあった。聞いてもらうことを頼まないもの。ただ、聞こえるもの。
「地球の人間たちよ、無限の宇宙へようこそ。私の名はティンケ」
彼女はにやりと笑い続けた。まるで何か途方もないものが隠された扉を開けたばかりで、その向こうを覗き込む者たちの顔を見るのが待ちきれないかのように。
背後を彗星が通り過ぎた。その尾はあまりにも明るく、一瞬だけ彼女の翼を白い炎に染めた。やがて彗星は遠くに消え、闇が再びその場所を取り戻した。
ティンケは肘を玉座の肘掛けに乗せ、顎を手に預けた。
「おそらく、なぜここにいるのか知りたいのでしょう」と彼女は言い、指で頬を軽く叩いた。「それはもちろん、もっともなこと。とても人間的。とても率直。でも、私はむしろ物語を聞かせたいの」
眉を上げた。自分の決定がどのみち正しいのだと、たった今決めたかのように。
「ところで、私たちが五人いたこと、知っていた? そう、五人」
微笑みが細くなった。ひそやかになった。一瞬、星の光が弱まったように見えた。まるで宇宙そのものが耳を澄ませているかのように。
そして突然、彼女は立ち上がった。
その動きはあまりにも唐突で、羽がざわめいた。黒と白の翼が背後で震えながら、彼女は片手を口に当てた。目が大きく見開かれ、わざとらしい驚愕がその視線に宿った。
「あら。私が何を言っているか分からない?」
彼女はわずかに身を乗り出した。まるで実にけしからぬ無知を発見したかのように。
「私たちはかつて五柱の女神だった!」
最後の言葉は反響しなかった。ただ空間にとどまった。重く、明瞭に。
ティンケは姿勢を正し、片手を胸に当て、大げさな優雅さで一礼した。
「私はティンケ、運命の女神」
再びにやりと笑った。自分自身に満足して。それから玉座を降りた。
玉座の前には階段があった。座そのものと同じく黒と白。虚空へと続いていたが、ティンケはその上に足を置いた。まるでその下に確かな岩盤があるかのように。一歩一歩が静かだった。靴のかすかな音、ドレスの柔らかなさらさら、羽と羽が触れ合う優しいかすれ。
「私の姉妹たちはあの向こうにいる」と彼女は言い、両腕を広げた。
背後の銀河が突然、より遠く感じられた。より冷たく。宇宙はその光を見せながら、同時にその無限の大きさを見せた。美しかった。息をのむほどに。だがその美しさの中には、圧倒的な何かがあった。あらゆる命を小さくする何かが。
「姉妹のマヴィが二人の子供を封印するために自らを犠牲にして以来、彼女たちは全力で宇宙の均衡を保とうとしている」
ティンケはゆっくりと階段を降り続けた。
微笑みは残っていたが、変化していた。悲しくはならなかった。正確には。そうなるには歪みすぎていて、遊び心がありすぎた。だがその中の何かが輝きを失った。まるで一呼吸の間、影が彼女の顔に落ちたかのように。
彼女は周囲を見回した。星々の間のどこかに、あの古い物語の痕跡が見えるとでもいうように。
「そう、姉のマヴィは創造の女神」と彼女は言った。「そしてマヴィはかつて二体の竜を創った」
竜という言葉で、遠方が振動した。
強くはない。何かを破壊するほど脅威的でもない。だが宇宙は反応したように見えた。まるでその言葉がただの言葉ではなく、星さえも沈黙させる何かの名前であるかのように。
ティンケは指を一本立てた。
「手短に言えば、あの二体にとって、あなたたちの地球はテニスボールみたいなものだった」
口角を上げた。
「かわいい小さなおもちゃ」
声は軽く、ほとんど皮肉めいていた。だがその裏にある映像は軽くなかった。青と緑の惑星。都市、森、海、声、夢、そして有限の命に満ちた星が、ボールほどの大きさに押しつぶされる。その爪にかけた二体の存在があまりにも巨大で、その存在そのものがあらゆる想像を超えていた。
ティンケは階段の途中で半身を翻し、片手を空中に滑らせた。星の光が指に従い、見えない風に踊る塵のように。
「二体ともマヴィの関心がほしかった。愛がほしかった。自分だけに向けられる眼差しが」
口をゆがめた。理解できるが、途方もなく面倒でもあると言いたげに。
「そして子供というのは時に、望むものが得られないと、いつしか争い始めるもの」
争いという言葉はあまりにも小さかった。
ティンケの背後で星々がちらついた。一瞬、遠い光点が燃え上がっては消えるように見えた。静寂がより濃くなったようだった。そのような存在同士の戦いは、喧嘩ではなかった。死すべき者たちの意味での戦争でもなかった。それは翼を持った大災害だった。世界が破壊されるのは、誰かがそれを憎んだからではなく、単にそこが邪魔だったから。
「そこで別の姉妹が素晴らしいアイデアを思いついた」
ティンケは立ち止まり、大げさに片手を胸に当てた。
「もちろん、結果を無視すれば素晴らしい、という意味だけど」
微笑んだ。
「均衡の女神ハルメシスが、二体に力を与えた。膠着状態に持ち込むための力を。美しい計画でしょう? 二体の止められない存在が互いを打ち消し合う。宇宙はより安定する。すべて整然。すべて調和」
両手を持ち上げた。まるで天秤の二つの皿を支えるように。
左にひとつ、右にひとつ。光だけで形作られた。どちらも震えていた。
やがて手を下ろした。
「ただ、宇宙はそれで安定しなかった」
輝く天秤の皿が塵に崩れた。
「不安定になった」
ティンケの声はまだ穏やかだった。平然とさえしていた。だがその言葉のとき、背後の星々がわずかにちらついたように見えた。まるで不安定さとは、星々が知っていて恐れている何かであるかのように。
「二体は宇宙を滅亡の淵まで追いやった」
そして彼女は黙った。
翼のかすかなざわめきだけが残った。遠くで隕石がひとつ通り過ぎた。赤く輝き、二つの星雲の間に消えた。宇宙は相変わらず無音だったが、その無音はもはや平和には感じられなかった。叫びの後の沈黙のように感じられた。
ティンケは遠くを見たが、その視線は何か特定のものに向けられてはいなかった。
「そこでマヴィは自らを犠牲にし、二体を封印することを決めた」
感傷なく言った。大きな身振りもなく。だからこそ、それはより重かった。
創造の女神。命を生み出した者が、自らの子供たちを封印した。憎しみからではない。弱さからでもない。そうしなければ宇宙が砕け散っていたから。
ティンケは頭を後ろに傾け、しばし頭上の星の海を見つめた。
それからため息をついた。
「そう」と彼女は言った。「姉のハルメシス、均衡の女神は、見事にやらかした」
その言葉は宇宙の荘厳さの中に落ちた。静かな水の器に石を投げ込んだように。
ティンケは再びにやりと笑った。まさにこの破調が気に入ったかのように。
「何? 本当のことでしょう」
彼女は歩き続けた。一段、また一段。階段の終わりに立つまで。その下にはまだ何もなかった。ただ虚空。だが彼女はその上に立っていた。まるで現実が彼女に逆らう勇気を持たないかのように。
「姉のシーデ、破壊の女神は、あの向こうで全力をもって破壊を食い止めようとしている」
指を顎に当て、眉をひそめた。まるで特に奇妙な計算を検証しているかのように。
「考えてみれば、実に皮肉よね。自分の本質に反している。自分自身であることに反している」
翼がぴくりと動いた。黒い羽が光を飲み込んだ。白い羽が光を返した。
「そしてミネルティス、知恵の女神、もうひとりの姉妹は、知識をもって創造を再び動かし、私たちが使命を果たせるようにしようとしている」
ミネルティスの名を口にしたとき、ティンケの声は一瞬明瞭になった。ほとんど敬意を込めて。冗談はなく、皮肉もなく。有限の者たちにとって大きすぎる、そしておそらく女神たちにとってさえ大きすぎる使命への、素朴な言及だけがあった。
そして突然、ティンケは手を一度打ち鳴らした。
音は明るく、短かった。
「でも、その話はもう十分」
片足で回り、ドレスが脚のまわりで舞い上がった。一瞬、黒と白の布の層が影と月光のように絡み合った。彼女は虚空の中を軽やかに踊った。まるで銀河の間ではなく、舞踏会場にいるかのように。翼は動きに合わせて上下した。鳥の翼とはまるで違う。むしろ、翼という概念にただ寄り添っているもの。有限の者たちがそれ以外の形を持たないから。
「私は運命を見る」と彼女は言った。
にやりとした笑みが顔に戻った。だが目は突然、より深く見えた。
「すべての存在の運命を。すべての惑星の。宇宙の」
彼女が語る間、細い糸が空間に現れた。
最初はひとつだけ。細く、きらめく一筋。ほとんど見えない。朝の光の中の蜘蛛の糸のように銀色に。やがて二本目。三本目。百本。千本。ひとつの視界では捉えきれないほどに。糸は虚空を走り、交差し、分かれ、星雲の中に消え、別の場所で再び現れた。明るいものもあれば、くすんだものもあった。決断が迫っているかのように震えるものもあった。今にも切れそうなほど張り詰めたものもあった。
ティンケが手を上げると、一本の糸が彼女の指に絡みついた。
引っ張りはしなかった。
まだ。
「でもそれは一方通行の運命ではない」
彼女はその言葉を口にした。まるであまりにも頻繁に聞かされてきた不快な単純化であるかのように。
「道はひとつだけではない。線もひとつだけではない。どこかに釘で打ちつけられた、誰もが従順に向かって歩く終わりも、ひとつだけではない」
糸を放した。
跳ね戻りはしなかった。滑るように進み、無数の糸の中に自らの居場所を見つけた。
「運命は糸でできている。可能性でできている。互いに触れ、絡み合い、ほどけ、あるいは間違った瞬間に切れる道でできている」
彼女は特に細い糸のそばにかがんだ。微笑みは穏やかだったが、甘くはなかった。
「そして時々」と彼女はささやいた。「私が介入する」
糸が震えた。
遠くで星がひとつ変化した。わずかに。かすかな輝きが増しただけ。偶然かもしれない。そうでないかもしれない。
ティンケは身を起こした。
「今がそのとき」
その言葉は銀河の間にとどまった。
一瞬、彼女はもう遊び心だけではなかった。混沌だけでもなかった。自らの物語を芝居がかった喜びで語る女神、というだけでもなかった。
彼女は、微笑みの奥で待っていたもの、そのものだった。
運命。
慈悲深くもなく。残酷でもなく。公正でもなく。ただ限りなく注意深いもの。
やがてにやりとした笑みが戻った。あまりにも唐突に。まるで誰かが光の仮面を彼女の厳粛な表情の上にかぶせたかのように。
「心配しないで。私の姉妹をあなたたちに解放してもらう必要はない」
彼女は手を振った。まるで特に馬鹿げた考えを追い払ったかのように。
「そのためにはもう別の人がいるから」
声は何気なかったが、その一言は重かった。あの向こうのどこかに、その役目を持つ誰かがいる。ここにはいない誰か。その運命の糸がすでにティンケの手にあったかもしれない、あるいはもうすぐそうなるかもしれない誰か。
だが彼女はそれ以上説明しなかった。
言った。それで彼女にとっては終わりだった。
「あなたたちには、滅亡の淵に立つ惑星を救ってもらいたい」
にやりとした笑みがゆっくりと消えた。
完全にではない。その残滓が残った。消えることを拒む炎のように。だが目はより静かになった。手の遊び心のある動きは止まった。翼さえも静止した。
彼女の前に球体が現れた。
最初はほとんど空間の中の丸いきらめきにすぎなかった。やがて形を、色を、深みを得た。青。白。緑。茶色。雲が海の上を渦巻いていた。大陸がその下にあった。壊れやすい表面の上の見慣れた斑点のように。夜の側では都市が金色の神経のように光っていた。嵐が大洋の上で回っていた。極地では氷が輝いていた。
地球。
ティンケの前に浮かんでいた。両手で包めるほど小さく。
ティンケが近づいた。
目に惑星の青が映った。一瞬、彼女は遊び心があるようには見えなかった。混沌としてさえいなかった。ただ注意深かった。見定めていた。まるで雲、海、家、道、部屋、そして肉体を透かして、その下にあるものを直接見ているかのように。
「さて」と彼女はつぶやいた。
声は小さくなっていたが、一つひとつの言葉が虚空に存在し続けるだけの明瞭さを保っていた。
「どの魂が、私たちの宇宙へ渡る資格があるかしら?」
首をかしげた。
球体がゆっくりと回った。雲が表面を流れた。夜が昼を押しのけた。昼が夜に取って代わった。無数の命がその上で動いていた。いかなる目にも認識できないほど小さく。だがティンケには見えていた。
当然、見えていた。
彼女はティンケなのだから。
運命の女神。
「あら、あなた?」
眉が上がった。
球体の中のある一点を見つめていた。他の誰にとっても存在しないほど微小な一点を。
「なぜ?」
声は聞こえないのに、耳を傾けた。
やがて口をゆがめ、わずかに首を振った。
「ああ。あなたの人生は悲しくて、他の異世界人みたいにチート能力で目覚めたいって?」
ため息をついた。今度は長く、大げさに。まるで特に退屈な願いを聞かされたかのように。
「残念だけど、それは無理」
指先が球体の上に浮かんだが、触れはしなかった。
「あなたたちに私は影響を及ぼせない。そしてただそれだけの理由で選ばれたいなんて、本当に悲しいことよ」
残酷には言わなかった。怒ってもいなかった。むしろ素朴な事実を述べるように。不快かもしれないが、聞きたくないからといって変わるものではない事実を。
地球は回り続けた。
ティンケは球体のまわりを歩いた。あるいは球体が彼女のまわりを回った。この空間では、何が動いて何がそう見せかけているだけなのか、判断しがたかった。ドレスが音もなく虚空をかすめた。翼が星々に長い影を落とした。本来ならば遥か遠くにあって、何にも遮られるはずのない星々に。
彼女は世界を眺めた。
大陸が過ぎていった。大洋がきらめいた。夜の明かりが密な網のように集まり、暗い大地に溶け、海岸線で再び燃え上がった。どこかで雲の下に稲妻が光った。どこかで朝焼けが海の縁を這い上がった。どこかで何百万もの命が重なり合い、隣り合い、ぶつかり合っていた。それぞれが自分だけの小さな糸を持って。
ティンケの視線がその上を滑っていった。
無関心にではない。
選んでいた。
弱い糸もあった。眩しい糸もあった。絡まったもの、切れたもの、あまりにも複雑に入り組んで光さえも不安定にちらつくものもあった。ティンケにはすべてが見えていた。だがすぐには手を伸ばさなかった。表情は開かれ、覚醒し、遊び心を帯びていたが、その下では計り知れない何かが働いていた。願望とも、憐憫とも、絶望とも無関係の、神聖な基準が。
「いいえ」と彼女は一度つぶやいた。
球体は回り続けた。
「それも違う」
背後で星がひとつ、遠い光の星雲の中に音もなく弾けた。ティンケはそれに目もくれなかった。
「欲深すぎる」
彼女は近づいた。
「空虚すぎる」
さらに近づいた。
「自分の悲劇に酔いすぎている」
そして立ち止まった。
その動きはあまりにも突然に終わり、周囲の細い運命の糸さえも凍りついたように見えた。
ティンケの微笑みが戻った。
広くはない。先ほどのように遊び心に満ちてもいない。
興味を引かれていた。
「あら」
球体のそばにかがんだ。光輪が青い表面に映った。黒と白の羽が彼女を縁取った。天使にも深淵にもなりうる存在の翼のように。
「有望な魂がいる」
手が持ち上がった。
ゆっくりと。
指は細く、星の光の中で明るく、ほとんど繊細だった。だがその周囲の空間は後退した。その手が触れる以上のことができることを理解しているかのように。道を変えること。糸を拾い上げること。他の誰にも見ることすら許されない境界を、越えること。
ティンケは微笑んだ。
そして球体の中に手を差し入れた。




