第15章 - 旅立ち、そして超人的な感覚
翌朝、アレクサンドリアが庭に立っていた。
空気は冷たく、湿っていた。朝露が草の葉先にぶら下がり、薬草畑の葉に溜まり、中庭と森を隔てる古い柵の上で光っていた。家の中からは焼きたてのパン、薬草茶、竈の冷たい灰の匂いが漂ってきた。枝のどこかで鳥が鳴いていたが、その歌声はくぐもっていた。まるで世界の上にまだ眠りがかかっているかのように。
アレクサンドリアが裸足で草の上に立ち、右腕を伸ばしていた。
正確には、右腕の残りを。
肩の下の断端には傷跡が走っていた。古く、明るい線が肌の上を走り、深いものもあれば、磁器のひびのように細いものもあった。肩をゆっくり動かし、筋肉を動かし、一度回して口をゆがめた。
「そろそろ使ってやる時よね」
にやりと笑った。
そして家の横に置かれた古い箱を蹴った。
木は暗く、重く、角に金属の装飾が施されていた。ルーンが表面のすぐ下に、ほとんど見えない線のように走っていた。埃と年月で薄れていた。アレクサンドリアの足がぶつかると、蓋がすぐに跳ね上がった。鈍い音が庭に転がり、数羽の鳥が茂みから飛び立ち、木々の間に消えた。
箱の中には、戦争と工芸を融合させたかのようなものが入っていた。
義手だった。
ルーンスチール製。暗い灰色に銀の縁取り。表面に細い線が走り、まっすぐなもの、円形のもの、金属の下に閉じ込められた血管のようなもの。関節の間には鱗のように噛み合う小さな板があった。指は普通の鎧の手より細かったが、華奢ではなかった。精密だった。力強かった。危険だった。
アレクサンドリアが手を入れ、義手を持ち上げた。
金属は重かった。
関節がかすかにカチリと鳴る音と、箱から離した瞬間にルーンが輝く様で、それが分かった。淡い青い光が線の上を走り、消え、肩の装着部で再び現れた。
アレクサンドリアが失われた腕に義手を当てた。
しばし何も起こらなかった。
そして金属板が断端を包んだ。
鋭いカチリ。
もう一つ。
そして低く、深い唸り。
アレクサンドリアの顎が引き締まった。目を閉じ、鼻からゆっくりと息を吸った。ルーンの光が腕の断端を這い、皮膚の下に入り込み、古い傷跡と隠された経路に繋がった。肩がぴくりと動いた。金属の腕を指先まで細かい震えが走った。
「神経回路? 正常」
肩を動かした。
金属の腕がかすかに上がった。
「血管? 正常」
義手の内側のルーンが一瞬赤く、次に青く輝いた。
アレクサンドリアの口角が上がった。
「感覚? 機能不全」
目を開けた。
白く濁った盲目の目。だが覚醒していた。
「面白い」
ゆっくりと義手を動かした。
まず指一本だけ。
関節がかすかに鳴った。
次に二本。
そしてすべて。
金属の指がゆっくりと開き、閉じた。滑らかではない。自然でもない。だが従った。手首を回した。義手が深い金属質の唸りとともに従った。腕をより高く上げ、前に伸ばし、拳を握った。
ルーンスチールが軋んだ。
アレクサンドリアのにやりとした笑みがさらに広がった。
玄関の扉が開いた。
エミリアが出てきて、黒い外套を肩にかけた。布は質素だが丁寧な仕立てで、縁には細かい護りの印が縫い込まれていた。銀色の髪がきっちりとまとめられていたが、何本かはすでにほどけ、朝風に揺れていた。片手に小さな旅行鞄。エミリアのような人物には無害すぎる見た目だった。
視線がすぐにアレクサンドリアの新しい腕に落ちた。
足が止まった。
「十年も持ってたのに」とエミリアは言った。「初めて出したのね」
アレクサンドリアが義手の手を回した。
金属の指が広がった。
「そのとおり」
エミリアが目を細めた。
「使いこなせると思ってるの?」
アレクサンドリアが静かに笑った。
愉快ではなく。
石の上で刃を引いたような音。
「母さん、いい加減ひとつ分かってもらわないとね」
エミリアのほうに首を向けた。
「私はあんたとは違う」
エミリアの目がより細くなった。
アレクサンドリアが義手を上げた。
「あんたは知性派」
そして壁に立てかけてあった両手剣のところへ歩いた。
「私は身体派」
義手で柄を掴んだ。
一瞬、金属が引っかかったように見えた。指が完全には閉じなかった。剣の重さが肩の装着部を引いた。アレクサンドリアが口をゆがめ、短く息を吐き、背中を緊張させた。
そして義手が握りしめた。
ルーンの光がちらついた。
アレクサンドリアが両手剣を持ち上げた。
刃は長く、幅広く、重かった。普通の人間には大きすぎる。だがアレクサンドリアはひとつの動きで背中に振り上げた。優雅ではなかったが、十分に確か。そこにはすでに帯が準備されていた。剣が固定された。
エミリアが黙って見ていた。
アレクサンドリアが顎を上げた。
「私はまだタリウムの選定者よ」
声がより硬くなった。
「二十万年の中で四人目の」
庭がしばし静まった。
風さえ小さくなったように感じた。
アレクサンドリアが柵のほうを向いた。
「あの二人はどこ?」
エミリアが玄関を振り返った。
ちょうどそのとき、レアとラースが出てきた。
二人とも簡素な旅装だった。鎧はない。英雄の装備もない。丈夫なズボン、簡素なシャツ、軽い外套、頑丈なブーツだけ。レアが腰に剣を帯びていた。馴染んだ武器だったが、今日はいつもより慎重に持っていた。まるで昨日から金属に意志が宿ったかのように。
ラースは武器を持っていなかった。
肩に小さな鞄だけで、一晩ちゃんと眠れなかったような顔をしていた。赤い髪が乱れ、黒い目が何度も自分の手に向かっていた。時折、指がぴくりと動いた。まるでまだ指の間に魔法の構造を感じているかのように。
二人がゆっくり近づき、アレクサンドリアの後ろに立った。
アレクサンドリアは何か言うのを待たなかった。
「この柵を出たら」と彼女は冷たく言った。「本当の世界が始まる」
レアが柵を見た。
古い、暗い木で、苔に覆われていた。一生ずっと見てきた。いつも中庭の境界を示していた。その向こうに森が始まるが、特に大きな森ではなかった。馴染みのある木々と影と鳥の声の一帯。
アレクサンドリアが二人のほうを向いた。
「もう安全はない」
盲目の目がレアとラースの間に向けられていた。
「向こうにいるすべてがお前たちを殺したがっている。誰もお前たちを愛さない。誰も守らない。誰も身を犠牲にしない」
ラースが唾を飲んだ。
レアは何も言わなかった。
アレクサンドリアが一歩近づいた。
「分かった?」
エミリアが咳払いした。
アレクサンドリアが一瞬止まった。
エミリアが手を上げた。
「まあ」と彼女は淡々と言った。「私たちはあなたたちのために犠牲になるわよ」
アレクサンドリアが口をゆがめた。
「ええ。私たちは」
「今の話とずいぶん違うわね」
「ドラマチックにしたの」
「いつもドラマチックでしょ」
アレクサンドリアは無視し、再びレアとラースを見た。
「それ以外は誰も」
声がより暗くなった。
「アナスタシアが、あの時私が双子を産んだと知ったら、世界の果てまで追ってくる」
レアは胃がきゅっと縮むのを感じた。
アナスタシア。
その名にはまだ重みがあった。意識的に対面したことがなくても。灰色の魔神は彼女の誕生の上に落ちる影だった。エヴァルトの死の上に。アレクサンドリアの傷跡の上に。すべての上に。
アレクサンドリアが振り返り、柵を蹴った。
門が開いた。
ゆっくりではなく。
きしみもなく。
まるで見えない何かが反対側から引いたかのように弾け開いた。
アレクサンドリアが踏み出した。
レアが続いた。
ラースがレアのすぐ後ろに。
そして二人とも固まった。
柵の向こうは小さな森ではなかった。
小さな森だったことは一度もなかった。
目の前に密生した巨大な森がそびえていた。木々は途方もなく大きく、中庭から見えたどれよりもはるかに大きかった。幹は塔のように太く、樹皮は暗く、深い溝が走り、苔に覆われていた。根が化石化した蛇のように地面を這っていた。はるか頭上の梢はあまりにも密で、光がほとんど差し込まなかった。朝がそこでは葉の下の緑がかった薄明かりになっていた。
空気がより冷たかった。
より湿っていた。
土とキノコと古い木と、レアには名づけられない何か野性的なものの匂いがした。
遠くで枝が折れた。
鳥が鳴いた。
そして別の音。もっと低く、もっと湿り、もっと異質な。
ラースがゆっくり一歩前に出た。
「これは何?」とレアが訊いた。
声は意図したよりも小さかった。
ラースが周囲を見回した。視線が梢から幹の間の影に、そして背後の開いた門に移った。こちら側から見ると、中庭は突然小さく見えた。大きな世界のただなかにぽつんとある、安全な光の一点のように。外に出てくるのを待っていたかのような世界の。
「幻術の中に隠されてたのか?」とラースが困惑して訊いた。
エミリアが二人の後ろから門をくぐった。
顔がぱっと明るくなった。
「ええ、そうよ」と彼女は誇らしげに言った。
アレクサンドリアが鼻を鳴らした。
「母さんは昔から自分の小細工に満足すると嬉しそうなのよ」
「小細工なんかじゃないわよ」とエミリアは言った。「複数の幻術層と知覚歪曲と安定化された空間境界を組み合わせた、見事に織り上げられた防護術よ」
レアとラースが同時に振り返った。
「どうやってそんなこと可能なの?」と二人が同時に訊いた。
エミリアが微笑んだ。
すでに口を開けていた。明らかにとても長い説明をする準備で。
だがアレクサンドリアの声が森を切った。
「右からスライム八体」
レアが固まった。
ラースも。
アレクサンドリアは一歩も進まなかった。細い道の真ん中に立ち、首をわずかに傾け、義手が両手剣の帯にゆるく触れていた。
「左からゴブリン五体」
レアがすぐに左を見た。
木々。
シダ。
根。
影。
何もない。
「正面からオーガー一体」
ラースが顔を上げ、道の先を凝視した。
幹の間の緑の薄明かりしか見えなかった。
アレクサンドリアの声は硬いままだった。
「敵を選べ。残りは私がやる」
レアがゆっくりラースに振り返った。
彼が見返した。
「何?」とレアが困惑して訊いた。
アレクサンドリアが顔を上げた。
「三つ数える。敵を選べ」
レアが緊張した。
「母さん、何も見えないんだけど」
「さもなくば全部相手にしてもらう」
ラースの顔が蒼白になった。
視線が右へ、左へ、前方へと飛んだ。スライムを、ゴブリンを、オーガーを、痕跡を、動きを、何かを探していた。だが森は森のままだった。暗く。湿っていた。何を探すべきか分からなければ、すべてが危険に聞こえうる音に満ちていた。
本気で言ってるの?
その考えがラースの頭を射抜いた。
当然本気だった。
アレクサンドリアなのだから。
レアが剣を少し鞘から引き抜いた。
スライムを探した。
何もない。
根の上の光る苔だけ。
ゴブリンを探した。
何もない。
風に揺れる茂みだけ。
「二!」とアレクサンドリアが轟いた。
エミリアが一歩退いた。
指が外套の布にかすかに曲がった。
口を出すべきじゃないわね......同じことをあの子にやったんだから......
その思考が一瞬だけ彼女の表情を重くした。
レアには聞こえなかった。
森を見つめ続けた。
「でも誰もいないのに!」
ラースが半ば腰を落とし、地面に痕跡を探した。葉、小枝、土の暗い染み。オーガーがどこにいるか教えてくれるものは何もなかった。スライムに見えるものも。ゴブリンに匂いがあるとして、それが普通と違う匂いなのかも分からなかった。
「一!」とアレクサンドリアの声が叩きつけた。
レアがより慌ただしく振り向いた。
剣が完全に抜かれていた。柄を握る掌が汗ばんだ。ラースが立ち上がり、右に振り向き、手を上げ、魔法を使うべきか、やったら死ぬだけなのか分からないまままた下ろした。
そしてアレクサンドリアが振り返った。
盲目の目は二人を捉えていなかった。
それでも、まるで直接掴まれたかのように感じた。
「お前たちは死んだ!」
その言葉が平手のようにレアとラースに叩きつけられた。
二人とも激しくびくついた。
ラースが困惑して瞬きした。
「何?」
レアは剣を下げなかった。
「でも......」
アレクサンドリアがため息をついた。
失望ではなく。
むしろ、まさにこうなると予想していて、正しかったことに苛立っているかのように。
「テストよ」と彼女は冷たく言った。「三方向からの同時攻撃にどう反応するかを見るための」
義手で右を指した。
「選ばなかった」
次に左を。
「優先順位をつけなかった」
次に前方を。
「戦うか、逃げるか、互いをかばうかすら決めなかった」
近づいた。
「それで死んだ」
レアが彼女を見つめた。
ラースが口を開け、閉じ、エミリアを見た。
エミリアが咳払いした。
「技術的に言えば......ええ」
アレクサンドリアがゆっくり首を彼女に向けた。
エミリアが両手を上げた。
「実際にはいいえ。あなたが助けに入るから」
アレクサンドリアが短く笑った。
おかしみはなく。
「あの時あなたはそうしてくれそうには見えなかったけどね」
エミリアが目を閉じた。
アレクサンドリアが彼女の横を通り過ぎた。
「あんたが私にあれをやったとき、助ける気があるようには全然見えなかったわよ」
エミリアはそのまま歩き続け、黒い外套を肩により固く引き寄せ、まっすぐ森を見た。
「この恩知らず」
「あなたの娘ですから」
「それは矛盾しないわよ」
アレクサンドリアが鼻を鳴らした。
エミリアが左手を上げた。
「当然助けたわよ」と彼女は鋭く言った。「たった一人の子供なんだから」
二本の指を鳴らした。
左上の木からゴブリンが落ちてきた。
小さく、緑がかっていて、痩せていた。爪のような手に錆びたナイフを持っていた。あるいは持っていた。今は燃えながら枝から落ち、鈍い音で地面に当たり、くすぶったまま横たわっていた。
焦げた肉と毛の匂いが立ち上った。
レアが半歩退いた。
ラースが死んだゴブリンを凝視した。
喉が動いた。
ゴブリンは本物だった。
説明の一部ではなかった。
ただの例でもなかった。
本物。
レアがアレクサンドリアを見た。
そしてエミリアを。
そして焼けた死体を。
ラースも同じことをした。
二人とも森の真ん中に立っていた。背後には古い暮らしへの開いた門。前方には影と化け物と、これまで見たことのないほど大きな世界。
「テスト?」と二人は困惑して、死んだゴブリンを見つめたまま訊いた。




