第九十四話 進化したジェラートと夏の歓声
開店と同時に、今日もじりじりとした太陽の熱気から逃れるように、
次々とお客さんたちが黒猫亭へと駆け込んできた。
「サクヤさん、おはよう! 今日もジェラートやってるかい?」
「はい、もちろんです。今日は少し改良を加えたものをご用意していますよ」
涼しい店内に広がる爽やかな冷気と、
朔夜の自信に満ちた言葉に、お客さんたちの表情がパッと明るくなる。
◆
カウンターの定位置では、クロノも
「今日のジェラートはもっと美味しいよ」と言わんばかりに
胸を張って金色の瞳を輝かせていた。
次々と注文が入り、朔夜は冷えた硝子の器に
鮮やかなオレンジ色のジェラートを手際よく盛り付けていく。
「お待たせしました。特製フルーツジェラートです。
今日はサマーベルの果汁を少し多めにして、より爽快に仕上げました」
目の前に置かれたひんやりとした一皿に、
感嘆の溜息が漏れる。
◆
「んんっ……! これ、昨日よりさらに爽やかになってないか?」
「本当だ。口に入れた瞬間にスッと溶けて、
サマーベルの香りがスパーンと突き抜けるわね……!」
お客さんたちはスプーンを口に運ぶたびに、
目を見張って驚きと喜びの声を上げた。
ハニードロップの甘さはしっかりと土台に残しつつも、
サマーベルの酸味が前に出たことで、より夏にぴったりのキレが生まれている。
「すごいなマスター、一日でこんなに進化させるなんて!」
◆
賑わう店内で、美味しそうにジェラートを頬張るお客さんたちの笑顔。
それを見守りながら、朔夜もまた嬉しそうに微笑んだ。
(果汁の比率を思い切って変えてみて正解だったな。
みんなの『美味しい』が聞けるのが、何よりのやり甲斐だ)
「にゃ〜ん」
足元からクロノがすり寄ってきて、
朔夜の足首に長いしっぽをくるんと巻き付けた。
進化したジェラートが運んでくれた夏の歓声。
黒猫亭の涼やかな一日が、今日も賑やかに過ぎていく。




