第九十三話 比率の工夫と朝の仕込み
翌朝、カーテンを開けると、
青く澄み渡った夏空から眩しい朝日が差し込んできた。
昨晩のノートのメモを思い出しながら、
朔夜はさっそく厨房でエプロンを締める。
「よし、昨日のアイデアを試してみよう」
調理台の横には、丸いスツールにちょこんと座ったクロノが、
金色の瞳をキラキラさせながら見守っている。
◆
「昨日はバランス重視だったけど、今日もかなり暑くなりそうだからな。
甘みより爽やかさを際立たせるために、
サマーベルの果汁を少し増やして、瑞々しい仕上がりにしてみよう」
サマーベルのフレッシュな果汁をいつもより多めに搾り、
濃厚なハニードロップのピューレと丁寧に合わせる。
冷やしながら泡立て器で空気をしっかり含ませるように混ぜていくと、
昨日よりもツヤがあり、ふんわりと軽い質感のジェラートが出来上がった。
「お、いい感じだな……」
◆
小さなスプーンですくい、まずはクロノの前に差し出してみる。
「クロノ、味見してみてくれるかい?」
クロノは待ちきれない様子で身を乗り出し、
ピンク色の舌先でちょこんと一口舐めた。
「……にゃふっ!」
ぱちりと金色の瞳を見開き、嬉しそうにしっぽを左右に大きく振る。
口溶けの軽やかさと、後から追いかけてくる果実のジューシーさに大満足の様子だ。
◆
朔夜も一口すくって口に運ぶ。
「……うん、サマーベルの果汁を増やしたおかげで、
口に入れた瞬間に爽快な酸味が広がって、すっと溶けていくな。
これなら厳しい暑さの日でも、よりさっぱり食べられるはずだ」
手応えを感じて微笑む朔夜に、
クロノも「美味しかったよ」とばかりに頭をごつんと押し当ててきた。
表の看板を『営業中』へと裏返す。
工夫を重ねてさらに進化した冷たい甘味とともに、
黒猫亭の新しい一日が元気に幕を開けた。




