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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第九十二話 夜更けの灯りと次の計画




夜の営業を終え、店先の明かりを落とすと、

通りにはしっとりとした涼しい静寂が広がっていた。


鍵を閉め、エプロンを外した朔夜は、

小さな明かりを一つだけ灯したカウンターの席に腰を下ろす。


「ふぅ……今日も無事に終わったな」


淹れたての温かいほうじ茶を口に含むと、

香ばしい湯気がふわりと立ち上り、一日の疲れがじんわりと解けていく。





パタパタと軽い足音を立てて、

クロノがカウンターの上へと上がってきた。


金色の瞳を丸くしながら、朔夜が開いたノートを覗き込んでくる。

そこには、今日までに作ったジェラートの分量や、

レインから聞いた『秋の味覚』についての走り書きが並んでいた。


「クロノ、見てくれ。

サマーベルとハニードロップのジェラート、大好評だったけど……

次はもう少し果汁の比率を変えてみるのも良さそうだな。

もっと口当たりが滑らかになるかもしれない」


朔夜が指差すと、クロノは「ふむ」とばかりに

真剣な顔でノートに前足をちょんと置いた。





「それに、レインさんが言っていた秋の木の実や茶葉……。

どんな香りがするんだろうな。

焼き菓子に合わせるか、それとも温かいミルクティーにするか……」


まだ夏の暑さは残っているものの、

次の季節の美味しいものを想像するだけで、料理人としての胸が高鳴る。


ノートの隅には、クロノが丸くなって寝ている小さな落書きが添えられていた。

それを見て、朔夜は思わず口元を緩める。





「にゃ〜……」


大きなあくびをひとつしたクロノが、

朔夜の腕の隙間にすっぽりと体を滑り込ませて丸くなった。

トントンと背中を優しく叩いてやると、

規則正しい小さな寝息が静かな店内に響き始める。


「おやすみ、クロノ。今日も一日、ありがとうな」


ノートを静かに閉じ、朔夜はランプの灯りをそっと吹き消した。

穏やかな夜風が窓を揺らす中、

黒猫亭の夜は深く、優しく更けていくのだった。

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