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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第九十一話 夏の終わりと夕暮れのひととき




レインが去った後の店内には、

再びいつもの穏やかな静けさが戻っていた。


西日が差し込む窓際で、

光の粒が店内の木目を柔らかく照らし出している。


「ふぅ……今日もいい一日だったな」


朔夜がカウンターを丁寧に拭き上げていると、

クロノがトコトコと歩み寄ってきて、

カウンターの端に前足を揃えて座った。





窓の外を見つめるクロノの金色の瞳に、

茜色に染まり始めた空が綺麗に映り込んでいる。


「クロノ、何を見てるんだ?」


朔夜が隣に並んで外を眺めると、

日中の厳しい暑さが嘘のように、涼やかな夕風が通りを抜けていた。

家路につく街の人々の足取りも、

どこか穏やかで涼しげに見える。


「にゃ〜ん」


クロノは短く鳴いて、朔夜の腕に頭をこすりつけてきた。





この夏、ルリリンゴのイベントから始まり、

初めての二連休、クロノと一緒に出かけた市場の買い出し、

そしてサマーベルとハニードロップの特製ジェラート。


毎日を駆け抜ける中で生まれたたくさんの笑顔が、

朔夜の胸の中に温かく思い出される。


(異世界に来て、こうしてクロノやみんなと

季節を一つずつ重ねていけるのが、本当に嬉しいな)


朔夜はクロノの背中を優しく撫でた。

クロノは目を細め、心地よさそうに喉を鳴らす。





やがて街灯がぽつぽつと灯り始め、

黒猫亭の看板にも柔らかな光が灯された。


「さて、今日の夜営業ももうひと頑張りするか。

クロノ、手伝ってくれるかい?」


「にゃん!」


力強い返事とともに、クロノはしっぽをぴんと立てた。

夏の終わりの優しい夜風に包まれながら、

黒猫亭の夜の時間が静かに始まっていくのだった。

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