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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第九十話 旅の話と新しい季節の足音




ジェラートを平らげたレインは、

朔夜が淹れ直した冷たいアイスコーヒーを口に含み、

ふうっと心地よさそうに息を吐いた。


「生き返ったよ。やっぱりサクヤの店は落ち着くな」


「長旅、本当にお疲れ様でした。

今回はずいぶんと遠くまで行かれていたんですか?」


カウンター越しに尋ねる朔夜の横で、

クロノもちょこんと座り、金色の瞳でレインを見つめている。





「ああ、北の山脈沿いにある交易都市までな。

山を越える道中は暑さと魔物の対処で骨が折れたけど……

面白い食材や香辛料の噂もいくつか仕入れてきたよ」


「本当ですか? どんなものがあるのか気になりますね」


「たとえば、秋口にしか採れない香りの強い木の実とか、

乾燥させると甘い香りを放つ希少な茶葉とかな。

もう少し涼しくなったら、また仕入れに行って持ってくるよ」


旅先での風景や珍しい特産品の話に、

朔夜は目を輝かせながら耳を傾けた。





「楽しみに待っていますね。

レインさんの持ってきてくれる素材は、いつも僕に

新しい料理のひらめきをくれますから」


「はは、そう言って腕を振るってくれるなら運び甲斐があるよ。

次も期待して待っててくれ」


レインは満足そうに笑い、立ち上がって腰の革袋を整えた。


「じゃあ、ギルドに報告に行ってくるよ。

美味いジェラートと珈琲、ごちそうさま!」


「はい、お気をつけて!」





レインを見送り、カランコロンとドアベルが静まった店内。

開け放たれた窓から吹き込む風は、

昼間の熱気を残しつつも、ほんの少しだけ夕方の柔らかさを帯びていた。


「秋の素材か……まだまだ暑いけれど、

季節は少しずつ進んでいるんだな」


朔夜がぽつりと呟くと、

クロノが「にゃん」と賛同するように足元ですり寄ってきた。


夏のひんやりとしたデザートで賑わう日々を大切にしながら、

黒猫亭の穏やかな時間は、次の季節へとゆっくり歩みを進めていた。

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