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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第八十九話 冒険者の帰還と冷たい歓待




昼下がりの強い日差しが通りを照らしつける中、

カランコロンと涼しげにドアベルが響いた。


「ふぅ……さすがに暑いな。サクヤ、戻ったよ」


革の防具に砂埃をまとわせ、大きな荷物を背負って入ってきたのは、

ルリリンゴの際に気密瓶を調達してくれた冒険者のレインだった。

遠征から戻ったばかりのようで、

少し疲れた笑みを浮かべながらカウンター席へと腰を下ろす。


「レインさん! おかえりなさい、無事のお戻りで何よりです」





「街に着いた途端、みんなが『黒猫亭の冷たいデザートが美味い』って

話しているのが聞こえてさ。気づいたら足がこっちに向いてたよ」


「ふふ、噂になっていましたか。まずはこれで涼んでください」


朔夜がすっと差し出したのは、たっぷりの氷を入れた冷たい水と、

硝子の器に盛り付けられた鮮やかな『特製フルーツジェラート』だった。


「おっ、これが噂のやつか。ありがとう、いただきます」


レインはスプーンを取り、ひとくち口へと運んだ。





「……っ! これは美味いな……!

身体の熱が一気に引いていくようだ」


口いっぱいに広がるサマーベルの爽やかな酸味と、

ハニードロップの上品な甘みのハーモニーに、

レインは驚いたように目を丸くした。


「果実の味がすごく濃厚なのに、後味がすっきりしていて食べやすいよ。

遠征帰りの身体にはたまらないご馳走だな」


「喜んでいただけてよかったです。

レインさんが以前届けてくれた硝子瓶の密閉技術が、

果物の保存や仕込みにも大いに役立っているんですよ」





「そう言ってもらえると、あの時頑張って運んだ甲斐があったよ」


レインが嬉しそうに微笑むと、カウンターの端から

クロノがトコトコと歩み寄り、

「お疲れさま」と伝えるようにレインの手元にすり寄った。


「クロノも、相変わらずいい子にしてたか? 可愛いな」


レインに優しく頭を撫でられ、

クロノは金色の瞳を細めて気持ちよさそうに喉を鳴らす。


旅の疲れを癒やす冷たい甘味と、穏やかな再会の空気。

八月の黒猫亭は、遠くから帰ってきた旅人にとっても

ホッと息をつける大切な場所となっていた。

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