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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第八十五話 夏の定番と広がる涼




ガルドの熱烈な後押しもあり、

朔夜はさっそく店先の黒板を書き換えた。


『本日の甘味:サマーベルとハニードロップの特製ジェラート』


その右下には、冷たい器を前に満足そうに目を細める

クロノのチョーク画がちょこんと添えられている。


「よし、これで準備完了だ」


朔夜が満足そうに頷くと、足元でクロノが

「にゃ〜ん」と誇らしげに喉を鳴らした。





お昼を過ぎると、太陽の熱気はますます強まり、

涼を求めてやってくる客が次々とドアを開けた。


「マスター! 黒板の冷たいデザートってこれかい?」

「はい、今の時期限定の果物をたっぷり使ったジェラートです」


運ばれていく涼しげな硝子の器に、

店内のあちこちから「わぁ、綺麗……!」と感嘆の声が漏れる。


「……んんっ! 冷たくて身体中に染み渡る……!」

「酸味と甘みのバランスが最高ね。生き返るわぁ」





カランコロンとドアベルが鳴り、

今度はルカくんとお母さんがやってきた。


「サクヤお兄ちゃん、こんにちは! お外、すっごく暑いよ〜」

「いらっしゃい、ルカ。お母さんも。

今日はちょうど冷たくて甘いジェラートがあるよ」


運ばれてきた鮮やかなオレンジ色のジェラートに、

ルカくんは目を輝かせてスプーンを握った。


「うわぁ、シャリッとしてて、あまくて冷たくてすっごく美味しい!」

「本当に、果物の味が濃くて贅沢なデザートね」


親子で顔を見合わせてほころぶ笑顔に、

カウンターから見守るクロノも嬉しそうにしっぽを揺らす。





水出し珈琲とジェラートの組み合わせを堪能する客や、

爽やかな冷たさに暑さを忘れてくつろぐ客たち。

黒猫亭の中だけは、まるで涼やかな別世界のような

心地よい空気に満たされていた。


(市場でおばちゃんに良い果実を教えてもらって本当によかったな)


手際よくグラスを洗いながら、朔夜は心の中で感謝した。

厳しい夏の暑さも、美味しい冷たさとみんなの笑顔があれば、

特別な思い出に変えていける。


八月の午後、黒猫亭には穏やかで涼しい時間が流れていくのだった。

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