第七十八話 香りと笑顔の特等席
賑わう店内のドアベルが再び鳴り、
元気な男の子の声が店内に響いた。
「サクヤお兄ちゃん! クロノちゃん!」
入ってきたのはルカくんと、そのお母さん。
そして偶然入り口で一緒になった薬師のセレスさんだった。
黒板の噂を聞きつけて駆けつけてくれたらしく、
ルカくんは目を輝かせてカウンターへと向かってくる。
「いらっしゃいルカ、お母さん。セレスさんも。
ちょうどテーブル席が空きましたよ」
朔夜が優しく迎えると、足元に駆け寄ってきたルカくんを
クロノが「いらっしゃい」と言わんばかりに
すり寄って出迎えた。
◆
「黒板を見たわ、サクヤさん。
あの幻の果実ルリリンゴをデザートにしたのね」
「噂を聞いてずっと楽しみにしていたんです」
セレスさんとお母さんが微笑み合いながら注文し、
朔夜は丁寧に淹れたアールグレイや珈琲と共に、
瑠璃色のソースが輝くプリンを運んでいった。
「わあぁ……! お星さまみたいで、すっごくかっこいい!」
瑠璃色のソースと星型のプリンに、ルカくんは目を輝かせた。
◆
ルカくんはスプーンを手に取り、プリンとソースを大きくすくって
口いっぱいにほおばった。
「……んんっ! 甘くて、ちょっと甘酸っぱくて……すげえうまい!」
「ルカ、口のまわりについてるわよ。ふふ、でも本当に美味しいわね」
嬉しそうにお母さんが微笑む隣で、
セレスさんも静かにスプーンを口へと運ぶ。
途端にその目が見開かれ、感心したように頷いた。
「素晴らしいわ、サクヤさん……。ルリリンゴの上品な酸味が、
プリンのコクで引き立てられているわ。
それに、このアールグレイの香りと合わさると完璧ね」
◆
「薬草や素材に詳しいセレスさんにそう言ってもらえると、
頑張って試作した甲斐がありました」
「ルリリンゴは傷みやすく加工が難しかったはずよ。
この瑞々しさを保っているなんて……本当にすごいわ」
セレスさんの称賛に、ルカくんも誇らしげに
「サクヤお兄ちゃんはすごいんだぞ!」と胸を張る。
ルカくん家族の温かい笑顔と、セレスさんの感嘆の声。
店内を包む甘く華やかな香りに、
朔夜とクロノは心からの達成感を味わうのだった。




