第七十七話 瑠璃色の開店と約束の品
約束の七日目の朝。
黒猫亭のドアベルが、待ちわびた音色を響かせた。
「やあサクヤ! 待たせたね、約束の品だよ!」
晴れやかな笑顔で入ってきたレインの足元には、
厳重に梱包された大きな木箱が置かれていた。
箱を開けると、先日買い取ったものと寸分違わぬ、
美しい『気密の硝子瓶』がぎっしりと並んでいる。
「これだけあれば十分だろう。
最高の状態で手配できたよ」
「ありがとうございます、レインさん。
完璧です」
朔夜は深く感謝を伝えると、あらかじめ仕込んでおいた
特別な瑠璃色の瓶を一つ取り出し、レインの前へと差し出した。
◆
「……約束のお礼です。僕からの感謝の気持ちですので、
どうぞ受け取ってください」
「おや……! 本当にいいのかい!?」
美しく密閉された瑠璃色の瓶を受け取り、
レインはまるで宝物を手に入れた少年のように目を輝かせた。
「ありがとう、サクヤ! こんなに嬉しいお礼はないよ。
家に帰ったら、じっくりと味わわせてもらうよ!」
レインは大満足の笑顔で大切に瓶を抱え、
「健闘を祈るよ!」と爽やかに店を後にした。
◆
瓶が揃えば、ここからは職人の時間だ。
朔夜は手際よく全ての瓶を煮沸消毒し、
仕込んでおいたルリリンゴのソースを詰めて完璧に脱気・密閉していく。
神様の「店を守る権限」が効いた冷蔵庫から、
冷えたクリーム色のプリンを取り出し、
星型の窪みに瑠璃色のソースをたっぷりと流し込んでいく。
カウンターの隅では、クロノが「ふふん」と
誇らしげに尻尾を振りながら作業を見守っていた。
準備は、全て整った。
◆
そして夕方。開店の鐘を鳴らすと同時に、
待ちきれない様子で常連たちが店へとなだれ込んできた。
「マスター! 黒板見たぞ!
あの『星空プリン』、二つ……いや、三つ頂戴!」
「俺も! 二つ頼む!」
口々に注文を叫ぶ男たちに、朔夜は穏やかな、
けれど毅然とした笑みを向けた。
「申し訳ありません。大変希少な幻の果実を使っているため、
少しでも多くの方に味わっていただけるよう、
お一人様お一つまでとさせていただいております」
◆
「そうか、幻の果実だもんな……!」
「おう、一人一つでも食えるだけありがたいぜ!」
数量制限の説明に納得した常連たちは、
益々その「プレミアムな一皿」への期待を膨らませる。
やがて、丁寧に淹れられた水出し珈琲やアールグレイと共に、
星型の瑠璃色が輝くプリンがテーブルへと運ばれていった。
「……う、うめぇえええ!!」
一口食べた瞬間、店内に歓喜の悲鳴が上がり、
黒猫亭は過去最高の熱気と笑顔に包まれていくのだった。




