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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第七十四話 商人の驚嘆と七日間の約束




翌日の夕方、約束通りドアベルが軽やかに鳴り、

期待に胸を膨らませたレインが店へと姿を現した。


「やあサクヤ! 昨日の瓶はどうだったい?

君の厳しい実験に、あの子は耐えられたかな?」


「おかげさまで、完璧でしたよ」


朔夜は頼もしい笑みを浮かべると、

厨房の奥から昨夜仕込んだ瑠璃色の瓶を取り出し、

カウンター越しにレインの前へと置いた。





「おや……?」


レインは瓶を手に取り、まずは光に透かしてじっくりと観察する。

加熱による歪みやヒビは一切なく、

中に閉じ込められたソースは鮮やかな青色を保ったままだ。

さらに蓋の留め具に手をかけ、開けようと力を込めた瞬間、

レインは驚きに目を見開いた。


「なっ……! 蓋がビクともしない……!?」


「熱を入れて中の空気を抜いた状態で密閉したんです。

これで中の鮮度を長期間保つことができます」





「すばらしい……! 熱の処理と気密の術式を

そこまで正確に組み合わせて使いこなすなんて!」


大商人であるレインですら、ここまでの完璧な保存状態は

めったにお目にかかれないと、興奮気味に感嘆の声を上げた。

カウンターの隅では、クロノが「昨日ぼくもチェックしたんだからね」と

言いたげに胸を張り、尻尾をパタパタと振っている。


「レインさん。これで期間限定メニューとして出す目処が立ちました。

正式に、あの硝子瓶をまとめて注文させてください」


「もちろんだとも! 君のような素晴らしい料理人に使ってもらえるなら、

あの瓶も本望というものさ」





レインは快く頷き、取り寄せに七日ほどかかる旨を伝えると、

ふと思い立ったように少し照れくさそうに切り出した。


「……ところでサクヤ。七日後に瓶を届ける時、

差し支えなければ、そのソースを詰めた瓶を『自分用』に一瓶、

買い取らせてもらえないかい?

お店で食べるのは勿論だが、自分だけの楽しみとして手元に置いておきたくてね」


大商人が見せた素直なおねだりに、朔夜は思わず笑みをこぼした。


「買い取るなんてとんでもない。

今回はこんなに珍しい果実を譲っていただいた上に、

手に入りにくい瓶の手配までお願いしているんです。

良かったら、その一瓶はお礼として受け取ってください」


「おや、いいのかい? それは……最高のお礼だよ!」





レインは嬉しそうに目を細め、胸を叩いた。


「よし! では七日後、最高の状態で瓶を届けるよ。

楽しみに待っていておくれ!」


「よろしくお願いします。こちらも

受け入れの準備と仕込みを完璧に整えておきます」


しっかりと握手を交わし、レインは満足そうに店を後にした。


七日後、あの硝子瓶が揃えば、いよいよ幻の果実を使った

瑠璃色のプリンがお店にお目見えする。

朔夜とクロノは顔を見合わせ、これから始まる楽しげな忙しさに向け、

静かに意気込むのだった。

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