第百七五話 深まる絆と、ささやかな祝宴
「サクヤさん、見てください! 天空都市のお客さんたち、あんなに楽しそうにガルドさんたちとお話しされていますよ」
レインが嬉しそうに目を細めながら、店内を指さす。
見れば、仕立て屋のシルフィたちが、ガルドやセレスとすっかり意気投合し、お互いの世界の珍しい話に花を咲かせていた。王都の騎士、森の魔導士、豪快な戦士、そして雲の上の住人――かつてなら交わるはずのなかった者たちが、ひとつのテーブルを囲んで笑い合っている。
「ええ……本当に素敵な光景ですね。父さんと母さんが作ろうとしていたお店のカタチが、少しずつ叶っている気がします」
朔夜がカウンターを拭きながら優しく微笑むと、足元でクロノが「みぁ〜ん」と誇らしげに鼻を鳴らした。
◆
「クロノ、みんなに食後のあったかいスープでも差し入れしようか。少し肌寒くなってきたしね」
「ふにゃ〜っ!」
クロノがトコトコと厨房へ先回りし、スープカップの棚をチョンチョンと前足で突く。
「よし、ありがとな」
朔夜はクロノの頭を軽く撫でると、じっくり煮込んでおいた特製ポトフの鍋のふたを開けた。
ゴロゴロと大きめに切った根菜と自家製ソーセージ、玉ねぎの甘みが溶け込んだ透き通る黄金色のスープから、芳醇な湯気が立ち上る。
カップに丁寧に注ぎ分け、パセリを散らして皆のテーブルへと運んでいった。
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「皆さん、もしよろしければ温かいスープをどうぞ。お店からのサービスです」
「おおっ! サクヤ、気が利くじゃないか! この香りはたまらんぜ!」
ガルドが真っ先にスープを一口すすり、ハァーッと満足そうな溜め息をつく。
「まぁ……! お野菜の旨味がすごく優しくて、ほっとするお味です……」
シルフィも両手でカップを包み込み、うっとりと目を細めた。
「サクヤさんの料理は、ただ美味しいだけじゃなくて、なんだか『帰ってきた』ような安心感があるのよね」
セレスの言葉に、レインも大きく頷く。
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「ふふ、そう言っていただけると料理人冥利に尽きます。いつでも、誰でも気軽に羽を休めに来てくださいね」
「みぁ〜っ!」
クロノも「いつでも待ってるニャ!」と言うように、みんなの足元を巡って愛嬌を振りまいた。
国境も、次元の壁も越えて繋がっていく人々の温かな絆。
両親から受け継いだ大切な錨は、今や無数の笑顔を結ぶ架け橋となり、黒猫亭の物語はいよいよ大団円に向けた最高の輝きを放ち始めていた。




