第百七十一話 天空都市の使者と、あたたかな肉汁
「……本当に、良いのですか? 見知らぬ異世界の者を、このようにあっさりと迎え入れてくださって……」
不安と困惑が混ざり合った表情で席についたアルテを見て、朔夜はふっと表情を緩めた。
「ええ、もちろんです。お腹が空いている方に、世界や立場は関係ありませんから。少し待っていてくださいね」
朔夜が厨房へ向かうと、カウンターの角からクロノがひょっこりと顔を出した。
急な来訪者に少し身を硬くしているアルテをじっと見つめ、トコトコと歩み寄っていく。
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「クロノ、ちょっと手伝ってくれるか? お肉の空気を抜くから、お皿を準備しておいて」
「みぁ〜っ!」
朔夜が声をかけると、クロノは「任せるニャ!」とばかりに元気よくお返事をして、キャビネットの前へ軽やかに飛び乗った。
パンパンと両手で手際よく肉種を往復させ、空気を抜いていく。
ジューッと熱したフライパンに載せると、香ばしい肉の焦げる匂いが厨房いっぱいに広がった。
表面をこんがりと焼き上げ、ふたをしてじっくりと蒸し焼きにする。
仕上げに特製の濃厚デミグラスソースを回しかければ、熱々のハンバーグプレートの完成だ。
◆
「お待たせいたしました。『特製デミグラスハンバーグプレート』です」
運ばれてきたお皿からは、ふっくらと膨らんだハンバーグと、ツヤツヤのソース、添えられた彩り豊かな温野菜が湯気を上げている。
「なんと美味しそうな……! では、いただきます……!」
アルテがナイフを入れた瞬間、ジュワッと溢れ出た肉汁がソースと混ざり合った。
一口頬張ると、青年の目が丸く見開かれる。
「……! お肉が柔らかく、旨味が口の中で弾けるようだ……! 天空都市の食事にはない、この力強く温かい味わいは一体……!」
◆
「ふふ、口に合って良かったな、クロノ」
「ふにゃ〜ん!」
朔夜がクロノの頭を撫でると、クロノも誇らしげに喉を鳴らした。
異世界からやってきた使者も、美味しい料理の前ではただの一人のお客様。
相棒のクロノとともに、朔夜は今日もたくさんの笑顔を紡いでいくのだった。




