第百六十八話 旅立ちの笑顔と、繋がる世界
「ごちそうさまでした! こんなに美味しいオムライス、生まれて初めて食べました!」
お皿を綺麗に空にした少女――薬師の卵であるフィオは、満面の笑みでペコリと頭を下げた。
「お粗末様でした。お口に合って良かったです」
朔夜が優しく微笑みながら空いた皿を下げると、クロノもカウンターから「みぁ〜」と鼻を鳴らし、フィオの旅路を応援するように前足を出してみせる。
「くろねこちゃんも、ありがとう! 薬草摘みが終わったら、また絶対このお店に来ますね!」
元気を完全に取り戻したフィオは、大きなリュックを背負い直すと、カランコロンと涼やかなベルの音を残して元気に街へと駆け出していった。
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「ふふ、良いお客さんだったわね。サクヤ、あの子が迷わずに街まで来られたのも、森の冷気や次元の乱れが収まったおかげじゃないかしら」
セレスがワイングラスを傾けながら、嬉しそうに目を細める。
「ええ。中央炉が安定したことで、黒猫亭が持っていた『引き寄せ』の力も、本来の穏やかな形に戻ったんだと思います。迷った旅人さんや、温かい料理を求める方が自然と辿り着けるような……」
「なるほどな! これからは異世界のいろんな奴らが、サクヤの美味いメシを求めてこの店に集まってくるってわけだ!」
ガルドが豪快に笑いながら、太い手でテーブルを叩く。
「それって、すごく素敵なことですね。僕たちにとっても、新しい出会いが増えるのは楽しみです」
レインも穏やかな笑みを浮かべ、未来への期待に胸を躍らせていた。
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旅人が去ったあとの店内には、またあたたかな日常の空気が満ちていた。
朔夜はカウンター越しに仲間たちの笑顔を見つめ、静かに胸を撫で下ろす。
両親が遺した『次元の錨』としての役目は、世界の破滅を防ぐためだけの厳めしいものではない。こうして生きる人々を繋ぎ、温かな食卓と安らぎを提供すること――それこそが両親の願った真の姿だったのだと、確かな確信が芽生えていた。
「よし……それじゃあ皆さん、食後の特製ブレンド珈琲と、デザートの焼きリンゴでも準備しますね」
「うおっ! デザートまであるのか!? さすがサクヤ、気が利くぜ!」
「ふにゃ〜ん!」
クロノも「自分にもちょうだい!」と言わんばかりに、朔夜の脚にすり寄ってくる。
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過酷な大冒険を経て、黒猫亭の基盤は揺るぎないものとなった。
結界の安定、仲間たちとの深まった絆、そして新たな訪れ。
世界の歪みを正し、すべての繋がりを完璧なものとする『クライマックス』の時に向け、黒猫亭はさらなる賑わいと温もりを乗せて、物語の最終章へと力強く進み始めていた。




