第百六十六話 営業再開と、賑やかな常連客
カランコロン――。
開店のベルが鳴った直後、扉が勢いよく開いた。
「サクヤ! 営業再開のお祝いに一番乗りでやってきたぜ!」
入ってきたのは、相変わらずパワフルなガルドだった。その後ろから「もう、ガルドったら押しが強すぎるわよ」と苦笑いしながら入ってくるセレスと、「おはようございます、サクヤさん」と穏やかに微笑むレインが続く。
「皆さん、いらっしゃいませ! いつもありがとうございます」
「ふにゃ〜ん!」
カウンターの上で丸くなっていたクロノもパッと体を起こし、尻尾をピコピコと振って歓迎の意を示した。
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「森の冷気がすっかり消えたおかげで、街の冒険者ギルドも朝から活気が戻っててね。みんな『また黒猫亭のご飯が食べられる!』って喜んでたわよ」
セレスがいつもの窓際の席に座りながら、嬉しそうに報告してくれる。
「本当に良かったです。……あ、今日は営業再開の感謝を込めて、朝からじっくり煮込んだ特製スープと焼きたてパンのセットを用意しているんです」
「うおっ、特製スープだと!? サクヤ、迷わずそれをくれ!」
「僕もお願いできますか?」
「私も。サクヤの仕込みの匂い、外まで漂っていて我慢できなかったのよね」
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注文を受けてすぐ、朔夜は厨房で腕を動かした。
大きめのスープボウルに注がれるのは、鶏ガラと根菜の旨みがしっかりと溶け込んだ黄金色のポトフ風スープ。ゴロゴロとした厚切りベーコンと柔らかく煮上がったキャベツ、ニンジンがたっぷりと入っている。
そこに、表面はカリッと中はふわふわに焼き上げた自家製小麦パンと、特製ハーブバターを添えてテーブルへ運んだ。
「お待たせしました。『具だくさんポトフと焼きたてハーブパンセット』です」
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「うーむ……この野菜の甘みとベーコンの塩気が、染み渡る美味さだなあ!」
ガルドが大きな口でポトフを味わい、豪快に声を上げる。
「ハーブバターを塗ったパンをスープに浸して食べるのも絶品だね。朝の体にやさしく活力が湧いてくるよ」
レインも丁寧にパンをスープにくぐらせ、満足そうに頷いた。
「ふふ、やっぱりこの店で過ごす時間が一番落ち着くわね」
セレスがスープの湯気越しに優しく目を細める。
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カランコロン――。
三人が美味しそうに料理を味わっている最中、再びドアベルが涼やかな音を立てた。
「あの……すみません。ここが、噂の美味しいお料理が食べられるお店でしょうか……?」
入ってきたのは、見慣れぬ旅装をまとった幼い少女の姿だった。
結界が安定し、新たな広がりを見せ始めた黒猫亭に、また一人の新しいお客様が足を踏み入れようとしていた。




