第百六十話 重厚なる扉と、中央炉の輝き
静かな地下通路を抜け切ると、一行の目前に巨大な両開きの金属扉が現れた。
表面には黒猫亭の地下室や羅針盤と同じ、一輪の幻想的な紋章が深々と刻まれている。時折、扉の隙間から溢れ出す温かな黄金色の光が、ひんやりとした石壁を優しく照らしていた。
「ここが……『中央炉』の部屋か」
ガルドが息を呑み、巨大な扉を見上げる。
「ええ。羅針盤の光も、ここをはっきりと指しています」
朔夜が胸元から取り出した羅針盤は、扉の紋章と同調するように、強く穏やかな青黄金色の光を放っていた。
「みぁ〜っ」
クロノが朔夜の肩からひょいと降り、扉の前へ歩み出ると、小さな前足で重厚な扉をチョンチョンと突っつく。すると、まるで鍵が開くかのような重厚な作動音が地下全体に響き渡った。
◆
カチリ――重いギミックが噛み合い、巨扉が滑らかに内側へと開いていく。
そこに広がっていたのは、見上げるほど巨大な空洞だった。
部屋の中央には、天井から床へと貫く巨大な水晶状の柱――これこそが、次元の歪みを穏やかに収め、黒猫亭をこの世界へ繋ぎ止めている『中央炉』の核であった。
「すごい魔力……! でも、全然荒々しくないわ。まるで包み込んでくるような温かさね」
セレスが杖を抱え、感嘆の声を漏らす。
「これが、黒猫亭を支えるエネルギーの源……サクヤさんのご両親が護ってきたものなんですね」
レインもまた、神秘的な水晶の輝きに目を細めた。
◆
だが、その中央炉の台座付近には、長年メンテナンスが途絶えていた影響か、薄暗い魔力の澱みがまとわりついていた。
「どうやら、あの台座の凹みに羅針盤をセットすれば、炉の魔力が完全にろ過されて、結界の安定化が完了するみたいです」
朔夜はしっかりとした足取りで、中央炉の台座へと歩み寄った。
「よし、サクヤ! 周りの警戒は俺たちに任せろ。一気に仕上げてくれ!」
「頼むよ、サクヤさん!」
ガルドとレインが武器を構えて周囲を固め、セレスがサポートの魔力を練り上げる。
「みんな、ありがとうございます……! 行こう、クロノ!」
「ふにゃっ!」
仲間たちの強い絆に支えられながら、朔夜とクロノは黒猫亭の真の安定を取り戻すため、中央炉の核へと手を伸ばした。




