第百五十九話 連携の刃と、前開きの道
「炎よ、道を穿て!――『ファイヤボール』!」
セレスの短く力強い詠唱とともに、眩い火球が氷蜘蛛の群れへ向けて解き放たれた。
轟音とともに爆炎が上がり、周囲の冷気を一気に吹き飛ばす。
急激な熱に怯んだ氷蜘蛛たちがカサカサと体勢を崩した瞬間、すかさず前衛のふたりが飛び出した。
「ハッ、甘いぜ! 『トマホーク・スラッシュ』!」
ガルドの大斧が一閃し、硬い氷の甲殻を一撃で叩き割る。
弾け飛んだ隙間を突くように、レインが影のように滑り込んだ。
「ここです……!」
鋭い短剣の二連撃が弱点へ突き刺さり、大型のアイススパイダーが激しい悲鳴を上げて崩れ落ちた。
◆
残った二匹の小型蜘蛛が、すばしっこく朔夜の側面へ向けて跳躍する。
「させないニャーッ!」……ではなく、「シャーッ!」と鋭い威嚇を上げながら、クロノが素早く疾走した。
緑のマフラーをなびかせ、壁面を蹴って空中で三角飛びを見せるクロノ。
小さな爪で一匹の顔面を引っかいて体勢を崩させると、もう一匹の着地点へ向けて朔夜がすかさず魔法の弾丸――スープ作成の要領で練り上げた高熱の魔力弾を放つ。
パシィン! と弾けた高熱の衝撃で蜘蛛たちは戦意を喪失し、暗がりの小さな隙間へと逃げ去っていった。
◆
「ふぅ……みんな、見事な連携だったな!」
ガルドが大斧を肩に担ぎ直し、爽やかに汗を拭う。
「怪我はありませんか、サクヤさん、クロノちゃん」
短剣を鞘に収めたレインが振り返り、優しく問いかけた。
「ええ、ふたりのおかげで無傷です。ありがとうございます」
「みぁ〜ん!」
クロノも朔夜の肩へ飛び乗り、誇らしげに胸を張って毛並みを整えた。
◆
「魔獣の群れを追い払えたし、道は開けたわね。羅針盤の反応はどう?」
セレスに促され、朔夜は再び真鍮の羅針盤を手のひらで確認した。
青い光は一層の輝きを増し、まっすぐに迷宮の最深部――大きな扉がたたずむ広場を指し示している。
「光が強くなっています。この通路を抜けた先に、目的の『中央炉』がありそうです」
「よし、行こう! 黒猫亭の、そしてこの世界の平和を取り戻すために!」
一行は互いに頷き合い、絆を確かなものにしながら、広大な地下迷宮の最深部へと足を進めていくのだった。




