第百五十七話 白銀の森の導きと、中央炉への道
静もり返る『迷いの森』へと一歩足を踏み入れると、ひんやりとした冷気が一行の肌を刺した。
前回ほど猛烈な暴走冷気ではないものの、樹木を覆う氷の結晶が木漏れ日を反射し、森全体がどこか幻想的な水晶の洞窟のように輝いている。
「……以前来た時より、ずいぶん静かになったな」
ガルドが大斧を担ぎ直し、周囲を警戒しながら視線を走らせる。
「ええ、あの結界の暴走が収まったおかげですね。でも、油断は禁物です」
朔夜は胸元から真鍮の羅針盤を取り出した。
カチリと蓋を開けると、青い光を帯びた針が静かに旋回し、森のさらに奥――前回立ち寄った古代遺跡の先をまっすぐに指し示している。
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「羅針盤の反応は安定しています。この先にある遺跡を抜けて、さらに深部へと向かいましょう」
「頼もしいナビゲーターね。案内は任せたわよ、サクヤ」
セレスが微笑み、杖の先端に明かりを灯す。
「みぁ〜っ!」
クロノは朔夜のリュックから身を乗り出し、前足で進行方向をピシッと指してみせた。まるで先頭に立って隊列を引っ張っているつもりらしい。その可愛らしい仕草に、険しい行軍の中にも自然と和やかな笑いがこぼれた。
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一行は前回の目的地であった巨石の遺跡へと到達した。
かつて冷気を噴き出していた石碑は、今や穏やかな黄金色の光を静かに湛えている。その台座にぽっかりと開いた地下階段の前で、全員が足を止めた。
「ここが、サクヤたちの見つけた地下資料庫へ続く階段か……」
レインが感心したように階段の奥を見つめる。
「ええ。資料庫の日誌によれば、この地下通路は遺跡のさらに深くにある『中央炉』へと繋がっているはずです」
朔夜が魔導灯を掲げると、闇の奥へと続く石段が橙色の柔らかな光に照らし出された。
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「よし、俺が先頭を行く。暗がりでの不意打ちには気をつけろよ」
ガルドが先陣を切り、慎重に階段を降り始める。それに続いてレイン、セレス、そしてクロノを連れた朔夜が地下へと足を進めた。
冷たく澄んだ石造りの階段を下りるにつれ、地上からは届かない独特の重厚な気が周囲を満たしていく。
「異世界の技術と、この世界の魔力が交ざり合ったような不思議な気配ね……」
セレスが壁面に刻まれた微小な魔導回路を観察しながら呟いた。
両親が護り、受け継がれてきた『黒猫亭』の核心――結界核を完全に安定させる『中央炉』へ向けて、パーティーは一致団結して暗がりの中を進んでいくのだった。




