第百五十六話 頼もしい背中と、絆の行軍
翌朝、朝靄が立ち込める街道を、四人と一匹のパーティーが進んでいた。
先頭を歩くガルドの大斧が朝日に照らされて鈍く光り、隣を行くセレスの杖からはほのかな魔力の光が漂っている。手際よく周囲を警戒するレインの姿も実に頼もしい。
リュックの横からひょっこりと顔を出しているクロノは、お気に入りの緑のマフラーを風になびかせながら、どこか誇らしげに周囲を見渡していた。
先日のひとりでの探索とは一変した賑やかな道中に、朔夜はふと歩みを緩め、前を行く仲間たちの背中に向けて問いかけた。
「……あの、本当に皆さん、一緒に来てもらって良かったんですか? 店の事情に巻き込んでしまって、申し訳ないというか……」
◆
朔夜の言葉に、ガルドが豪快に振り返って太い腕を組んだ。
「ハッ! 何を水くさいこと言ってやがるんだ、サクヤ! 俺たちはサクヤの作る美味い飯と、あの居心地のいい黒猫亭が大好きなんだぜ? その店が危機だってんなら、助けに行くのは当然だろ!」
「そうですよ、サクヤさん」
レインも優しい笑みを浮かべて頷く。
「それに、サクヤさんがひとりで行ったら、みんな心配で街でじっとしていられませんからね。僕たちにとっても黒猫亭は大切な居場所なんです」
「そういうこと」
セレスは口元を少し緩め、杖を肩に担ぎ直した。
「それに、未調査の深部となれば強い魔獣が出る可能性もあるわ。腕利きの冒険者がついていたほうが安全でしょ? お礼は帰ってからの美味しい特別メニューでいいわよ」
◆
「みなさん……」
仲間たちの温かい言葉と真剣な想いに触れ、朔夜の胸の奥がじんわりと熱くなる。
自分ひとりで背負い込もうとしていた秘密や危険を、こうして共に分かち合ってくれる存在がいることが、何よりも心強かった。
「みぁ〜ん!」
胸元でクロノも「その通りだ!」と言うように元気に一鳴きし、みんなに向かってしっぽを振ってみせた。
「ふふ、クロノも大賛成みたいね」
セレスが目を細めてクロノの頭を撫でる。
◆
「よし! 決まりだな。さあ、そうと決まればさっさと『中央炉』とやらを見つけて、サクヤの美味い飯で祝杯をあげようぜ!」
「はい! 行きましょう!」
ガルドの威勢の良い声を合図に、一行は再び歩みを進めた。
白銀の静寂に包まれた『迷いの森』の入口が、すぐ目の前まで迫っていた。




