第百五十四話 安心の黒猫亭と、仲間たちへの報告
地下の資料庫で重要な日誌を手に入れた朔夜とクロノは、一度森を出て、住み慣れた街へと足早に戻った。
氷結の静寂が嘘のように、街には活気と穏やかな日差しが満ちている。黒猫亭の前に辿り着くと、店の前に張っていた「臨時休業」の札を見るなり、見回りに来ていたセレスとレイン、ガルドがワッと駆け寄ってきた。
「サクヤさん! クロノちゃん! 無事だったのね!」
「森の冷気が急にやわらいだから、もしかしてと思ったんだよ。怪我はないかい?」
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「ええ、ふたりとも無事です。心配をかけてすみません」
朔夜が微笑むと、クロノもリュックからひょっこり顔を出し、誇らしげに「ふにゃ〜ん!」と一声鳴いて見せた。
店内に全員で入り、あたたかいお茶を淹れて一息つく。
朔夜は、森の奥にあった遺跡のこと、結界の暴走を羅針盤で収めたこと、そして地下の資料庫で見つけた日誌の内容を包み隠さずみんなに話した。
「……なるほどな。あの店がただの喫茶店じゃなく、世界の境目を繋ぐ“錨”の役割を果たしていたとはな……」
ガルドが腕を組み、深く感心したように頷く。
「サクヤさんのご両親から受け継いだこのお店には、そんな深い歴史があったんだね。でも、冷気の原因が解明できて本当に良かったよ」
レインも安堵の表情を浮かべた。
◆
「でも、日誌によるとこれで終わりじゃないんでしょう?」
セレスが真剣な眼差しで朔夜を見つめる。
「はい。結界の核を完全に安定させるには、森のさらに奥にある『中央炉』という場所へ行く必要があるみたいです。……ただ、そこから先は未知の領域になります」
「だったら、次は俺たちも連れていけ!」
ガルドがドシッと自分の胸をたたいた。
「黒猫亭のうまい飯には世話になってるんだ。店とこの街の危機なら、俺たちだって黙っちゃいられねえぜ」
「そうだよ。僕たちも一緒に準備を手伝うよ!」
仲間たちの頼もしい言葉に、朔夜の胸がじんわりと熱くなる。
「……ありがとうございます、みんな。よし、まずは明日からの本格調査に向けて、がっつり英気を養える特製料理を仕込みますね!」
「みぁ〜っ!」
クロノの元気な掛け声とともに、黒猫亭の厨房には再び賑やかで温かな活気が戻ってくるのだった。




