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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第百四十六話 防寒の準備と、ポータブルスープ



ギルドでの情報収集を終えた翌朝、朔夜は厨房で『持ち出し用の料理』の試作に励んでいた。


セレスのアドバイス通り、迷いの森の調査に向かうには寒さ対策が必須となる。

道中で体が冷え切ってしまわないよう、保温容器に入れて持ち運べる熱々のスープを用意しておきたかったのだ。


(寒冷地での移動なら、手軽に水分と塩分、それからエネルギーを補給できるものがいいな)


◆


朔夜が仕込んだのは、濃厚な『特製とろみ生姜コンソメスープ』だ。


じっくり煮込んだ鶏ガラと野菜のスープをベースに、たっぷりの生姜と粗挽き肉、小さく刻んだ根菜を加え、とろみをつけて冷めにくくしてある。

仕上げに魔法の保温筒(レインの店で購入した魔法道具)へ注ぎ込むと、閉じ込められた熱気と芳醇な香りがふわりと立ち上った。


「みぁ〜……」


匂いにつられたクロノが、足元で緑のマフラーを揺らしながら期待に満ちた目で朔夜を見上げている。


「クロノの分はこっちだぞ。冷ました鶏ささみのスープ煮だ」


「ふにゃっ!」


専用の小鉢に並べてやると、クロノは満足そうにペチャペチャと音を立てて美味しそうに舐め始めた。


◆


昼前になり、ガラガラと扉が開いてガルドとレインがやってきた。


「サクヤ、外は風が強くなってきやがったぜ。なんか温まるものはねえか?」


「それならちょうどいいものがありますよ。試作品のスープです、飲んでみてください」


ふたりにマグカップでスープを差し出す。

とろみのついたスープを口にしたガルドが、目を丸くして感嘆の声を漏らした。


「――おっ、これは腹の中に熱い塊が落ちていくような感覚だな! 生姜がしっかり効いてて、一口で全身の血が巡り出すようだぜ」


「うん、すごく美味しいよ! それにこのとろみのおかげで全然冷めないね。これなら魔法の保温筒に入れて遠出する時の供にぴったりじゃないか」


◆


レインの言葉に、朔夜は小さく頷いた。


(よし、これで道中の食事の準備はバッチリだ)


持ち出す食料、防寒着、そして地下室で見つけた羅針盤と地図。

万全の準備を整えながら、朔夜は『迷いの森』へ向かう決行の日を静かに見定めていた。


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