第百四十五話 冒険者ギルドと、森の事前調査
昼のピークが落ち着き、店内に静けさが戻った午後。朔夜は店をクロノに一瞬任せ――といっても留守番だが――街の冒険者ギルドへと足を運んでいた。
目的は、東の『迷いの森』に関する最新の情報を集めること。
地下室で見つけた羅針盤が指し示す場所へ向かう前に、現場の状況を正確に把握しておきたかったのだ。
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ギルドの掲示板の前には、寒さに首をすくめた冒険者たちが集まり、低く議論を交わしていた。
「迷いの森の異変、マジで危険らしいぞ。奥から溢れ出した冷気のせいで、街道近くまで凍りつき始めてる」
「討伐依頼のランクも上がったみたいだ。安易に近づかない方がいいな……」
聞き耳を立てていた朔夜の隣に、カツカツと足音を立ててセレスが歩み寄ってきた。
「サクヤさん? こんなところでどうしたの?」
「あ、セレスさん。……実は、警備隊の方が言っていた『迷いの森』の異変が少し気になっていて。様子を聞きに来たんです」
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セレスは少し驚いたように目を見張ったが、すぐに納得したように頷いた。
「なるほどね。黒猫亭は街の外縁に近いから、魔獣や冷気が降りてきたら一番影響を受けるかもしれないものね」
彼女はギルドの受付から一枚の資料を取り出し、朔夜に見せてくれた。
「森の浅い場所ならまだ通常の装備で入れそうだけど、奥に入るにつれて謎の氷結現象が起きているらしいわ。もし調査に行く人がいるなら、防寒と魔導灯の準備は必須ね」
「防寒と魔導灯……勉強になります」
(地下室の羅針盤が指しているのは、その『奥』のエリア……。生半可な準備じゃ引き返せなくなるな)
◆
ギルドを出ると、ひんやりとした冬の空気が頬を撫でた。
隣を歩くセレスが、どこか見透かすような優しい視線を朔夜に向ける。
「サクヤさん。もし森のことが気になって遠出するつもりなら、一人で行っちゃダメよ? 私やガルド、みんながついているんだから」
「……はい、ありがとうございます。心強いです」
朔夜は苦笑しながら答えた。
店に戻ると、カウンターの上でクロノが「遅かったにゃ!」と言わんばかりにふくれっ面で待っていた。
「悪かったよ、クロノ。ほら、お土産の干し肉だ」
「みぁ〜!」
一瞬で機嫌を直す相棒の姿に癒されながら、朔夜は調査決行に向けた装備と料理の試作を本格化させるのだった。




