第百四十四話 調査の準備と、特製ポーク生姜焼き
翌朝、昨夜の警備隊員の話が頭から離れない朔夜は、開店前の厨房で手際よく朝食の準備を進めていた。
迷いの森で起きている異変と、地下室で見つけた羅針盤が指し示す方角。
二つの出来事が重なっている以上、一度森の様子を見に行く必要がありそうだった。
(もし調査に向かうとしても、しっかりと準備を整えてからだな……)
朔夜が考えを巡らせていると、厨房の勝手口からクロノがひょっこりと顔を出した。緑のマフラーを誇らしげに巻き、元気に「みゃー!」と朝の挨拶をしてくる。
「おはよう、クロノ。今日も寒いな」
相棒の丸い頭を優しく撫でると、少し張り詰めていた心がすっと和らいでいくのが分かった。
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昼の営業が始まると、寒さを逃れるように常連たちが次々と来店してきた。
「サクヤさーん! 今日もすっごく寒いから、ガツンと力が出るものが食べたいな!」
ルカがコートの雪を払いながら元気に暖簾をくぐる。後ろからはセレスとガルド、レインも続いて入ってきた。
「ふふ、ルカの言う通りね。寒い日こそ、しっかり食べて体力をつけないと」
「よし、今日はとっておきのスタミナ料理を用意していますよ」
朔夜が用意したのは、特製のタレが香ばしく香る『ポーク生姜焼き定食』だ。
厚切りにした豚肉を、たっぷりのすりおろし生姜、醤油、みりん、そして隠し味にほんの少しの蜂蜜を加えた特製ダレでジューシーに焼き上げている。シャキシャキの千切りキャベツと、炊き立ての白いご飯が添えられた、ボリューム満点の一品だ。
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「うわあ……! 生姜のいい香りがして、すごく食欲がそそられるよ!」
ルカが待ちきれない様子で箸を伸ばし、肉をご飯の上にのせて一口で頬張る。
「んん〜〜っ! お肉がすっごくジューシー! 甘辛いタレと生姜のピリッとした辛さが最高で、ご飯が止まらないよ!」
「ガツンとくる旨味だな! この生姜の風味が腹の底から体を熱くしてくれるぜ!」
ガルドも豪快にご飯をかき込み、大満足で頷いている。
レインやセレスも美味しそうに頬張り、店内にはあっという間に賑やかな笑顔があふれ出した。
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カウンターの端では、クロノが自分用に用意された温かいポークボイル(味付けなし)を、満足そうに「もぐもぐ」と食べている。
みんなの幸せそうな顔を眺めながら、朔夜は密かに決意を固めていた。
(みんながこうして安心して美味しいご飯を食べられる場所を守る。そのためにも、しっかり準備をして森の調査へ向かおう)
暖かな店内と香ばしい生姜焼きの香りに包まれながら、朔夜は静かに次のステップへと意識を向け始めていた。




