第百四十二話 冬の定番、ほっこり焼きカレー
地下室の秘密を見つけてから数日。朔夜はいつも通りの穏やかな日常を大切にしながら、黒猫亭の厨房に立っていた。
外は冬の冷たい風が吹き荒れているが、店の中は薪ストーブの火と料理の熱気でぽかぽかと温かい。
「サクヤ、今日も外は底冷えするな。何か腹の底から温まるガッツリしたものはあるか?」
寒さで肩をすくめたガルドが、暖簾をくぐりながら入ってくる。続いてやってきたレインやセレスも、手先をさすりながら暖炉の近くの席についた。
「ええ、今日はこんな寒い日にぴったりのメニューを試作してみたんです」
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朔夜が厨房から運んできたのは、耐熱皿の中でグツグツと音を立てる『特製焼きカレー』だった。
じっくり煮込んだコク旨カレーの上に、たっぷりのチーズと卵を落とし、オーブンでこんがりと焼き上げている。香ばしい焦がしチーズの香りとスパイスの匂いが、一瞬で店内に広がった。
「うわあ……! チーズがトロトロで美味しそう!」
「スプーンを入れると……見て、卵の黄身がトロッと溢れてきたわ!」
ルカとセレスが歓声をあげる。
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「よし、冷めないうちにいただきます!」
ガルドが大きなスプーンで熱々の焼きカレーを掬い、豪快に口へと運んだ。
「――ッ! 熱い、だが美味い……! スパイシーなカレーに、濃厚なチーズとまろやかな卵が絡んで絶品だぞ!」
「ハハッ、火傷しないように気を配ってくださいね。熱々のカレーライスとはまた違った香ばしさが楽しめるでしょう?」
レインもフーフーと息を吹きかけながら一口食べ、満足そうに目を細めた。
「これは体が温まるねぇ……。スパイスの効果で、一口ごとに寒さが吹き飛んでいくよ」
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カウンターの端では、クロノが小さな鼻をピクピクさせながら、自分用の温かいカツオ出汁のスープを嬉しそうに舐めている。
首元の緑のマフラーが、すっかりお気に入りの様子だった。
(この店がどこから来て、これからどこへ行くとしても……今こうしてみんなと囲む食卓の温もりは、何物にも代えがたい)
美味しそうに焼きカレーを頬張る仲間たちの笑顔を見つめながら、朔夜は改めてこの愛おしい日々を大切に守っていこうと、静かに心に誓うのだった。




