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『潰れかけ喫茶店ごと異世界転移したので、黒猫と静かに営業していたら最強の休憩所になっていました』  作者: CASCADE


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第百三十九話 初雪の訪れと、根菜のポトフ




翌朝、朔夜がいつものように勝手口を開けると、ひんやりとした空気が肌を刺した。


空からは静かに、白い小さな粒がひらひらと舞い落ちてくる。


「……雪か」


この街にやってきて、初めて見る初雪だった。

ほんの少し前まで色づいていた街並みが、うっすらと白く装飾されていく。

お気に入りの緑のマフラーを巻いたクロノも勝手口からそっと顔を出し、不思議そうに空を見上げて「ふにゃー……」と短く鳴いた。



◆



本格的な冬の始まりを告げる雪に、街の人々もコートの襟を立てて足を早めている。

朔夜はこんな日にぴったりな料理を作ろうと、厨房で大きな鍋を火にかけた。


仕込むのは、大きな根菜と塩豚をじっくり煮込んだ『あったか根菜ポトフ』だ。


じっくり時間をかけてとった出汁に、ゴロリと大きく切ったカブやニンジン、柔らかく煮込んだ塩豚。

隠し味にほんの少しのハーブを加えれば、鍋からは素材の旨味が凝縮されたやさしい湯気が立ち上る。



◆



「サクヤさーん! うう、外はすっかり冬だよー!」


開店と同時に、赤く鼻をあたまらせたルカが駆け込んできた。

続いてレインやガルド、セレスも「初雪だなあ」と息を白くさせながら店内へと入ってくる。


「皆さん、お手をどうぞ。熱々のポトフができていますよ」


スープ皿に盛られたポトフは、澄んだスープの中に彩り豊かな野菜とゴロッとした肉がのぞき、見た目にもあたたかい。



◆



「ふー、ふー……モグッ。……んん〜っ! カブが口の中でとろける……!」

「スープに肉と野菜の旨味が溶け出してて、体に染み渡るなあ」


ルカが幸せそうに頬を緩め、ガルドもスープをごくぐりと飲み干して息を吐く。


ストーブの火とポトフの湯気に包まれた店内は、外の寒さをすっかり忘れさせるほどの温もりに満ちていた。

カウンターの上では、クロノがルカにマフラーを撫でられながら満足そうに目を細めている。


降り始めた初雪を窓越しに眺めながら、黒猫亭のあたたかな冬の一日が始まっていた。

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