第百三十八話 木枯らしの街と、手作りの防寒グッズ
一気に冷え込みが強まり、街の木々が葉を落とし始めた晩秋のある日。
黒猫亭の店内は、常連たちが持ち寄った冬支度の話で持ちきりだった。
「いやあ、今朝はガタガタ震えながら起きたぜ。そろそろ本格的に厚手の服を出さねえとな」
「レインがこの間見せてくれた冬物の毛布、すごく肌触りが良かったわ。私も一枚買おうかしら」
ガルドとセレスが温かいお茶を手に談笑している。
そんな賑やかな店内を、朔夜はカウンターの奥から微笑ましく眺めていた。
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「みぁ……」
ふいに足元から頼りない鳴き声が聞こえ、朔夜が視線を落とす。
そこには、床の冷たさに丸くなり、すっぽりと体に尾を巻きつけているクロノの姿があった。
「クロノ、やっぱり少し肌寒いか?」
モフモフの毛並みをしているとはいえ、急な冷え込みには勝てないらしい。
朔夜は奥の部屋から柔らかな羊毛の布地と針箱を取り出すと、手際よくハサミを入れて縫い合わせ始めた。
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カタカタと針を動かすこと小一時間。
「よし、できたぞ。クロノ、ちょっと試してみるか?」
朔夜が差し出したのは、クロノの小さな体にぴったり合わせた『特製ミニマフラー』だった。
落ち着いた深緑色の生地に、可愛らしい小さな魚の刺繍がワンポイントであしらわれている。
「ふにゃ?」
首元に巻いてやると、じんわりとした温もりにクロノの目が輝いた。
首をすりすりとマフラーに押し付け、嬉しそうに「ごろごろ……」と喉を鳴らし始める。
◆
「あら可愛い! サクヤさん、それ手作りなの!?」
「まあ、なんて似合ってるのクロノちゃん! モデルさんみたいよ!」
セレスとレインが目ざとく見つけ、黄色い声を上げる。
クロノは得意げに胸を張り、マフラーを見せつけるように店内をパトロールし始めた。
「ハハッ、これで寒さ対策もバッチリだな」
自慢気に歩く相棒の姿を見送りながら、朔夜もあたたかな心地になる。
これからやってくる寒く厳しい季節も、この店と大切な仲間たちがいれば、きっと温かく過ごせるはずだった。




