第百三十三話 祭りの宴と広がる輪
日が傾き始め、広場の提灯にポツポツとあかりが灯り始める頃になっても、黒猫亭の屋台の勢いは留まることを知らなかった。
「サクヤお兄ちゃん、はいこれ! 空いたお皿下げてきたよ!」
「ありがとう、ルカ。すごく助かるよ」
ルカはお手伝いのご褒美に小さなスイートポテトを貰い、「えへへ」と嬉しそうに頬張っている。
ガルドが呼び込みをし、セレスとルカがお皿を運び、レインが食材の補充を支える。
朔夜が作る一皿を中心に、自然と温かな連携が生まれていた。
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「やあ、サクヤ殿。相変わらず見事な賑わいだな」
ふいに声をかけてきたのは、街の自警団長だった。
普段は厳格な男が、シチューを一口啜ると、ふっと目元を緩ませる。
「……美味いな。厳しい見回り続きで冷え切っていた胃袋に、じんわりと沁みる。この街に君たちが来てくれて、本当によかった」
「そう言っていただけると、料理人冥利につきます」
朔夜が深々と頭を下げると、隣でクロノも「にゃーん」と誇らしげに胸を張った。
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用意していた寸胴鍋のシチューは、祭りが最高潮を迎える前に見事に完売した。
「みんな、今日は本当にありがとうございました。全員のおかげで無事にやり切れました」
「なーに言ってるんだ、サクヤさんの料理が旨いからだろ!」
「そうよ、私たちは美味しいおこぼれに預かりたかっただけなんだから」
ガルドとセレスが笑い合い、レインも満足そうに頷く。
広場の中央では大きな焚き火が焚かれ、人々が手を取り合って歌い踊り始めていた。
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片付けを終えた朔夜は、賑やかな喧騒から少し離れたベンチに腰を下ろした。
膝の上には、すっかり疲れ果てて丸くなったクロノ。
温かな体温を感じながら遠くの輪を眺めていると、胸の奥から静かな充足感が込み上げてくる。
(異世界に来て、店を持ち、こんなにも大切な仲間ができた……)
夜空に広がる秋の星々を見上げながら、朔夜はこの街で生きていくことの尊さを、噛み締めるように実感していた。




