第百二十八話 収穫祭の足音と夜の温もり
新しくメニューに加えた『琥珀芋のポタージュスープ』は、冷え込みが厳しくなってきた夕暮れ時に大好評となった。
「サクヤさん、スープおかわり! この甘みとコク、身体の芯まで温まるわ」
「ガルドさん、ありがとうございます。すぐにお持ちしますね」
湯気と香ばしい匂いに包まれた店内は、いつも以上の賑わいを見せていた。
セレスもゆっくりとスープを味わいながら、ふと窓の外の街並みに目をやる。
「ねえサクヤさん。もうすぐ王都やこの街でも、秋の大収穫祭が始まるでしょう?」
「収穫祭……ですか?」
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朔夜が尋ねると、ガルドがスープカップを置きながら嬉しそうに身を乗り出した。
「おうよ! 年に一度、実りに感謝して街中で大宴会をやるんだ。
各店が一番自信のある料理を持ち寄ってな、夜まで歌って踊っての大騒ぎさ」
「今年は黒猫亭も初参加でしょう? サクヤさんがどんな料理を出してくれるのか、街のみんなも今から楽しみにしているのよ」
セレスの言葉に、カウンターのクロノが「ふにゃん!」と得意気に胸を張った。
この世界に来てから、初めて迎える大掛かりな季節の祭り。
黒猫亭がこの街に根付き、人々にとってなくてはならない場所に育ちつつあることを、朔夜はあらためて実感していた。
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「大収穫祭、ですか。黒猫亭にふさわしい、最高の秋の味覚を用意しないといけませんね」
「へへ、期待してるぜ! レインの奴も、祭りに合わせて最高の食材を仕入れるって意気込んでたからな」
常連たちの温かな期待の眼差しを受け、朔夜の胸の中にじんわりと誇らしい気持ちが込み上げてくる。
◆
夜が更け、賑やかだったお客たちが笑顔で帰っていくのを見送ると、店には静寂が戻ってきた。
パチパチと薪ストーブが爆ぜる音だけが響く店内。
朔夜はカウンターで手帳を開き、「秋の大収穫祭」という新しいページを作った。
「クロノ、俺たちの店として、街のみんなに一番美味しいものを届けよう」
「みゃーお」
膝の上に飛び乗ってきたクロノを優しく撫でながら、朔夜の視線は遠くの夜空へと向けられる。
この街で紡いできた小さな繋がりが、大きな祭りの季節へ向けて、ゆっくりと、けれど確実に動き始めていた。




