第百二十五話 秋のティータイムセット始動
翌日。澄み渡る秋空のもと、黒猫亭の表には『秋のお茶会セット』と記された新しい看板が立てられた。
『紫雫葡萄の焼きタルト』または『琥珀芋のスイートポテト』に、芳醇な香りの『蜜香茶』を添えた贅沢なセットだ。
開店と同時に、甘く香ばしい香りが店内から通りへと漂い出していく。
看板猫のクロノも、入り口近くの陽だまりで毛並みを整えながら、お客を出迎える準備万端といった様子だ。
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午後になると、街の人々や顔なじみの常連たちが噂を聞きつけて次々とやってきた。
「サクヤさん、このスイートポテト、お芋の甘みがすごく濃くてほっとする味ね……!」
「葡萄のタルトとお茶の組み合わせが最高だぜ。疲れが一気に吹き飛ぶな」
店内は終始穏やかな笑顔と感嘆の声に包まれ、焼き上がったタルトもスイートポテトも飛ぶように売れていく。
朔夜は手際よくお茶を淹れ、温かな一皿を順番へと届けていった。
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夕暮れ時、ようやく客足が一段落した厨房で、朔夜は小さく息をついた。
「ふう……大盛況だったな、クロノ」
カウンターの上で満足そうにしっぽを揺らしていたクロノが、「にゃ〜ん」と誇らしげに鳴いて朔夜の手元へすり寄ってくる。
今日届いたたくさんの「美味しい」という言葉を振り返り、朔夜の唇にも自然と笑みがこぼれた。
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「秋の新作は大成功だな。次はレインが言っていたキノコや根菜を使って、温かいスープや食事メニューも考えてみるか」
「ふにゃ!」
クロノの力強い相槌を受け止めながら、朔夜は手帳を開き、新しい季節のアイデアを書き留めていく。
静かな秋の夜長。
黒猫亭の厨房には、明日へのワクワクとした予感と、温かな紅茶の香りがいつまでも優しく漂っていた。




