第百二十四話 夕暮れの報告と次なる秋
日が傾き、夕空が濃い橙色から紫グラデーションへと移り変わる頃。
ガラリと元気よく扉が開いて、大きな荷籠を背負ったレインが顔を出した。
「サクヤさん! 琥珀芋、どうだった? うまく仕込みに使えそうかい?」
「レインさん、ちょうどいいところに。ええ、おかげさまで大好評ですよ。昼過ぎに出したらあっという間に注文が入ってしまって」
朔夜がそう答えると、レインはぱっと顔を輝かせた。
「本当かい! いやぁ、やっぱりサクヤさんに買ってもらって正解だったな! あんなに旨い芋なら、街の連中も大喜びだろ」
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「これ、レインさんの分に取り置いておいたんです。食べてみてください」
朔夜が小皿に乗せたスイートポテトを差し出すと、レインは「いいのかい!?」と目を丸くしながら勢いよく口へ運んだ。
「……っうひょー! 何だこれ、めちゃくちゃ滑らかじゃないか!
あの芋がこんな上品でリッチな味わいになるなんて……サクヤさん、やっぱり魔法使いか何かか?」
「はは、ただ丁寧に裏ごししてバターと合わせただけですよ」
大大満足といった様子で頬を落としかけるレインを見て、カウンターのクロノも「ふふん」と誇らしげに鼻を鳴らした。
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「いやー、ごちそうさま! これで明日からの仕入れにも一段と気合が入るよ。
そうだサクヤさん、近いうちにまた南の農園から、今度は秋の根菜や珍しいキノコが入荷する予定なんだ。また声をかけるよ!」
「ええ、楽しみに待っています」
元気いっぱいに手を振って去っていくレインの後姿を見送り、朔夜は心地よい疲れとともに息を吐いた。
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静かになった店内で、朔夜は手帳を開き、明日からの「秋のティータイムセット」のメニューを書き書きと清書していく。
・紫雫葡萄の焼きタルト
・琥珀芋のスイートポテト
・蜜香茶(ストレート/ロイヤルミルクティー)
「いいラインナップになったな」
朔夜が呟くと、ひざの上に飛び乗ってきたクロノが、ぬくもりを分け与えるように丸くなった。
深まりゆく九月の夜風に包まれながら、黒猫亭の秋はますます豊かに、賑やかに彩られていくのだった。




