第百二十話 市場の再会と商人のお勧め
翌朝。ひんやりとした秋晴れの空気の中、朔夜とクロノは再び市場へと足を運んでいた。
朝の活気に包まれた通りをのんびり歩いていると、威勢のいい声とともに大きな荷籠を抱えた青年が近づいてきた。
「やあ、サクヤさんにクロノちゃん! おはよう!」
「レインさん! おはようございます。朝早くから仕入れですか?」
声をかけてきたのは、黒猫亭にも珍しい食材や茶葉を届けてくれるお馴染みの商人、レインだった。
レインはクロノの頭を軽く撫でると、朔夜の持つ籠に目を留めてニカッと笑った。
◆
「サクヤさんも食材探し? 相変わらず熱心だねぇ。
……あ、そうだ! ちょうどいいところに会えたよ。実はまた新しい秋の食材を探してるなら、すごくお勧めのがあるんだけど、見てみない?」
「お勧めの食材、ですか?」
朔夜が興味深そうに尋ねると、レインは得意げに抱えていた荷籠の布を少しだけ捲ってみせた。
「へへっ、これだよ。西の森の奥で採れ始めたばかりの『琥珀芋』さ。
皮を剥くと綺麗な黄金色で、蒸かすだけで蜂蜜みたいに甘くてホクホクなんだ!」
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「琥珀芋……」
布の隙間からのぞく小ぶりな芋は、つややかな薄紫色の皮をしていて、甘く香ばしい香りがほのかに漂ってくる。
隣で籠を覗き込んだクロノも、鼻をヒクヒクさせて「ふにゃ〜」と興味津々の声を上げた。
「これは美味そうですね。焼き菓子や温かいスープにも使えそうだ」
「だろ? サクヤさんなら絶対に美味しく化けさせてくれると思ってさ!
よかったら少し持っていくかい?」
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「ぜひお願いします。これで秋の新しいメニューを試してみますよ」
「まいどあり! どんな料理になるか楽しみにしてるよ!」
ホクホク顔のレインから新鮮な琥珀芋を受け取り、朔夜はカゴに大切に収めた。
「よし、クロノ。店に戻ったらさっそくこの琥珀芋の下ごしらえをしてみよう」
「にゃん!」
新しい秋の味覚を手に入れた二人と一匹は、弾む足取りで黒猫亭への道を歩き出した。




