第百十一話 秋のお茶会セットのお披露目
翌日の昼下がり。
外の空気には心地よい涼風が吹き抜け、散歩がてらに立ち寄るお客さんで
黒猫亭の店内はほどよい賑わいを見せていた。
店先の黒板には、朔夜が朝一番で書き足した新しい文字が並んでいる。
『新登場:秋のお茶会セット(蜜香ロイヤルミルクティー&特製焼き菓子)』
「サクヤさん、表の新しいセットを頼んでもいいかしら?」
窓際の席に座った常連の女性客が、楽しそうに注文の声をかけてくれた。
「ありがとうございます! すぐにお持ちしますね」
◆
木製のトレーに、湯気を立てるロイヤルミルクティーのカップと、
焼きたての蜜香茶スコーン、サクサクのクッキーを美しく並べる。
スコーンの横には、透き通る黄金色のハニードロップジャムを小さなガラスの小鉢で添えた。
「お待たせしました、『秋のお茶会セット』です」
「まあ……! すごく贅沢で可愛らしいわね」
運ばれてきたセットの華やかさと、ふわりと広がる甘いお茶の香りに、
女性客はぱっと表情を輝かせた。
◆
女性客がスコーンを半分に割り、ジャムをたっぷり乗せて口に運ぶ。
「……っ! 外側はサクッとしているのに、中はすごくしっとり。
お茶のいい香りと、このハチミツジャムのフルーティーな甘さがぴったりね!」
続けてミルクティーを一口含むと、うっとりとため息を漏らした。
「ミルクティーのまろやかさと合わさって、身体の奥まで満たされるよう……。
午後のティータイムにこんなに贅沢な時間を過ごせるなんて、本当に幸せだわ」
◆
満足そうに微笑むお客さんの様子を、
カウンターの上からクロノが静かに見守っていた。
「クロノ、大好評だな。頑張って試作した甲斐があったよ」
朔夜が小声で話しかけると、クロノは得意そうにしっぽをぴんと立て、
「にゃふん」と小さく誇らしげに喉を鳴らした。
晩夏から初秋へと移り変わる穏やかな午後。
黒猫亭には、甘く芳醇な香りと、訪れる人々のあたたかな笑顔が
優しく満ちあふれていた。




