第百八話 広がる香りとお菓子の構想
ガルドが満足そうに店を出ていった後も、
黒猫亭には次々とお客さんがやってきた。
「セレスさんから聞いて来ました! そのミルクティーを一杯ください」
「表の黒板のイラストが可愛くて……どんなお茶なんですか?」
セレスの口コミと店先の黒板効果で、
『蜜香ロイヤルミルクティー』は朝から大盛況だった。
◆
厨房では、朔夜が手鍋で次々とミルクティーを仕立てていく。
店内に漂う甘く香ばしい香りに包まれて、
席に着いたお客さんたちも自然と表情をほころばせていた。
クロノはカウンターの端から、
美味しそうにお茶をすするお客さんたちを満足そうに見守っている。
「クロノちゃん、今日も可愛いわねぇ」
通りがかりの常連客に頭を撫でられると、
クロノは嬉しそうに目を細め、しっぽをゆらりと揺らした。
◆
お昼のピークを過ぎ、注文が落ち着いたところで、
朔夜はカウンターの上のノートを広げた。
「ミルクティーは大好評だけど……やっぱり、
この香りを生かした焼き菓子も一緒に並べたいな」
朔夜が呟くと、クロノがトトッと寄ってきて
ノートの端にちょこんと前足を乗せた。
「茶葉を細かく砕いてクッキー生地に練り込むか、
それともスコーンにして、ハニードロップのジャムを添えるか……」
◆
「にゃ〜ん」
クロノが焼き菓子の欄を鼻先でつんと突く。
まるで「どっちも作ってみようよ」と後押ししてくれているようだ。
「ふふ、そうだな。まずは両方試作してみようか」
新しい素材がもたらしてくれたインスピレーションに、
朔夜の胸は再びワクワクとした創作意欲で満たされていくのだった。




